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いよいよ訓練も大詰めです。
模擬家屋の上棟が無事に完了しました。
土台敷きの急所としては、水平(高さが揃っているか)、矩手・大矩(かねて・おおがね:直角の意)が出ているか、通り(通り芯が曲がりなく通直か)の確認が挙げられます。
土台が敷ければ、柱と胴差を組んでクレーンで吊って起こします。
柱と胴差が組み終われば、仮筋交いを入れて、立ち(垂直の意)を確認します。
二階床梁や管柱、火打ち梁などを組んでいきます。
足場も自分たちで組み立てます。
丸太梁や桁も組んで、無事上棟できました。
上棟が済めば、垂木、野地板、鼻隠しや広小舞を取り付けます。
上から次々に取り付け施工を終わらせていきます。
大引き、根太、床捨て貼り、仕上げ、どんどん進んでいきます。
どうにか成果発表会までには、階段がかかりそうです。
自分たちが刻んできたものが、大きな模擬家屋として組みあがっていきます。
普段はあまり自発的ではない訓練生も、成果物を目の当たりにすると、いつもより楽しげです。
「ものづくり」の効果を改めて実感いたしました。
修了式まで残りわずかです。怪我、事故に気を付けて、最後まで頑張りましょう。
新年あけましておめでとうございます。
本年も建築科をよろしくお願いいたします。
今月は、去年から特訓を続けてきた二級技能検定を受験します。
今年度は5名の訓練生が挑戦します。
大工作業の二級技能検定は、過去数年間の全国平均合格率が他の業種に比べても低く25%程度です。さらに大工経験のない訓練生からすると超難関とも言えます。
そして、上手くいかないのには、理屈の不理解と身体的な原因があります。ただ繰り返すのではなく、原因をひとつひとつ解消することが上達につながります。
課題作製の制限時間は5時間半です。一回通して練習するだけでも、丸一日かかり、はじめのうちは三日以上かかる方もいます。それに、刃物を研ぐ時間や練習材料をつくる時間を加えると、気が遠くなるような特訓の日々です。途中であきらめる方もいるほどです。
練習に使った材料は、ほぞ穴やほぞを切るための材料として再利用します。最後には穴だらけになります。
こうして一回一回の積み重ねで、だんだんと制限時間内に完成させられるようになってきます。
指導員は取得済みの資格で、毎年指導しており特訓も効率化されていますが、甘やかすことはありません。
大工はできてナンボ、資格試験は受かってこそ真の価値があるものです。
アルバイトしながら、家庭を持ちながら、遊ぶのも我慢して頑張る姿を見ていると、衝動的に応援したくなるものです。どうにか全員合格できるよう指導してまいります。
京都府立大学の環境デザイン学科と森林科学科との連携事業の一環として、府立大大野演習林で校外訓練を実施しました。
本年度は伐採の見学に加えて、学生や院生、訓練生らが主体となって、お互いの専門分野を活かした講座を開くことになりました。
府立大側からは、樹木の生育や特性についての講座をいただき、専門校建築科からは、鉋削り体験を提供いたしました。
今回、建築科の講座は「五感」というテーマを持って計画しました。
伐採を実演してくださった技官さんや、院生や先生方からもタイミングよく「五感」という言葉が聞かれました。
伐採したばかりの樹木には、水分がたっぷりと含まれて、香りも立ち、生々しさを感じることができました。
普段は製品化された材料を扱う訓練生は、木が生物であることをより強く意識することができたと思います。
鉋削り体験では、大工の身体性を感じていただけたと思います。森林の心地よい湿度が鉋台に影響し、歪んで上手く削れないというトラブルからスタートし、大学生からコツについて聞かれると「なんて言ったらいいのかな」と説明に困るという貴重なエラーを体験できました。
言語化が及ばない技能は、定量評価しにくく、さらに能率・合理化によって必要性が薄れてしまうことがあります。
しかし、目的とする美しさは立場も学歴も問わず感情的に共有できるものです。目的達成やエラーや感情の共有を、言葉ではなく個人の身体的経験によって可能にした実体験は、この社会の激動期に就職をする訓練生にはとても実効的な手段となると思います。
施設内での模擬家屋建築専攻訓練では、材料が納入されました。
材料を搬入する際には、保管場所、作業スペースの確保、使用順序や向きなどを考慮する必要があります。
木の曲を見極めて、曲を相殺するように配置することを木配りといいます。自然素材である木には天然の曲がりがあります。その特性を活かしあう配置にすることも大工技能の一つといえます。
スケールやさしがねを使って、数値をみて寸法をとるのではなく、尺杖や矩計杖とよばれる専用の物差しをつくることで、墨付けの間違いを少なくしています。
大工仕事は「要領と応用」と仰られる大工さんもおられます。基本的には内容が全く同じ現場はありません。現場は毎度応用です。各現場に共通する基礎が要領です。先んじて基礎や要領を掴んでおくことができるのが訓練です。たくさん失敗をして、業務の成功につなげられるよう指導してまいります。
社寺建築専攻訓練では、各種垂木、破風、化粧裏板、軒付け、長押などの施工が進んでいます。
模擬家屋と社寺建築専攻との内容の違いは、屋根の形や化粧材の量が挙げられると思われます。
それに伴って、「反り」や化粧部材の加工が発生します。
反りを加工する道具として、反り台鉋を使用します。また、住宅であれば壁や屋根裏に隠れてしまうような部材も、化粧部材として魅せる加工を施す必要があります。
例えば、本柱(丸柱)と長押の取り合い部分は、光付けといって、柱の形状を写し取って加工する必要があります。その際も、基準になるのは芯墨です。芯墨を基準に仕事をするのは、基本中の基本です。どれだけ道具が上手に使えても、基礎技能をなくして建物を建てることはできません。
入校を希望される方に、「座学は苦手だが体を動かすのは得意」という方がおられます。建築の業務は、身体や腕が資本と言われてきた大工職においても、基礎学力が必要なだけでなく教養も必要になります。得意なことだけができるように整えられた業界でもありません。
訓練では、個人と対話し一緒に特性や適性について考える時間を設けています。また、仕事観は訓練では養えないため、企業見学やインターンシップなどで補っています。
これからも、質の良い訓練生活や就活ができるようサポートしたいと思います。
模擬家屋建築専攻の訓練では、前年度の模擬家屋が解体されました。
ただ壊すのではなく、前年度の訓練生たちがどのように設計して、どのように組み立てたのかを「解く」という訓練です。
設計や小さな模型をつくることが得意、空間認識や数学、高所作業が苦手、リーダーシップが発揮できるなど、訓練生それぞれの特性が見えてくる時期でもあります。
中には大工を志したものの、適性が合わないと判断した場合は、進路変更をする訓練生もいます。そのような訓練生が次なる目標を設定し、特性を活かして仕事に就けるように一緒に考えています。
次年度にリニューアルされる「住建築・リフォーム科」では、就職先の幅が広くなるように再編されております。ご参考にどうぞ→(http://www.pref.kyoto.jp/kyokgs/jukentiku.html)
模擬家屋建築専攻では、丸太梁の「兜蟻掛け」(かぶとありかけ)という大型仕口の加工を訓練しているところです。前年度の1月トピックにも内容を掲載しておりますので、どうぞご覧ください。
平成31年度トピック→(https://www.pref.kyoto.jp/kyokgs/01kenchikutopic.html)
社寺建築専攻訓練では、部材の加工が進み、一部組立が始まりました。
屋根の反りがつけられていても、模擬家屋の訓練でも扱う丸太梁同様に、水平と垂直が重要になります。
建築科の訓練の良いところは、技能を磨けるというところです。
仮想空間や理屈だけではなく、実際に手を動かして五感を存分に使って経験することも建築職人にとって重要な要素です。自然素材を扱っていることを忘れてしまうと、訓練も仕事も無機的になってしまいます。
私たち指導員も、自然素材のひとつである「人」と対峙していることを忘れないように、個人や業界の幸せのためになれるように努めてまいります。
建築科では社寺建築専攻の訓練が開始されました。
社寺建築専攻の課題は一間社流造のお社の製作です。
一間社とは、お社の正面に配される柱と柱の間がひとつ(つまり柱は2本)である様式を意味しており、柱が4本であれば三間社となります。流造(ながれづくり)切妻造の反り屋根で、正面に向かって長く伸びた様式を意味します。
まずは「原寸図」の作製から始まります。原寸図を描くことで、反りに応じた部材の加工をするための「型板」をとることができます。原寸図は設計者によって準備されるものではなく、施工する大工によって作製されることが多いようです。また、神社や寺院を専門に建てる大工のことを一般的に「宮大工」や「堂宮大工」と称します。
原寸図が描ければ、次は材料の「拾い出し」です。拾い出しは、必要な部材を効率的に発注できるように、数量を表にまとめることを言います。
墨付けは複雑な箇所が多いため講師が行います。他の加工や組み立てはすべて訓練生によって行われます。とくに「魅せる」という要素の強い建築物であるため、加工や仕上げには繊細な技術が求められます。まずは、ノコギリの加工精度を上げるために特訓をしています。
今年度で社寺建築専攻訓練は一旦終了しますが、当科から宮大工を目指せなくなるわけではありません。興味のある方のお問い合わせやご見学も随時受け付けておりますのでお気軽にどうぞご連絡ください。
一方、模擬家屋建築専攻では建築計画が終わり、間取りや屋根の形も決まり、Jw-cadを使用しての製図が始まりました。計画、設計、施工ほぼすべて訓練生自らが行います。
前期で学んだ様式や接手や仕口などを盛り込めるように、設計が進んでいるところです。
また、選考に関わらず共通の課題として、「回り階段」の模型作製も進んでいます。回り階段においても、原寸の展開図を描いて、それに合わせて墨付けをし、加工し、組み立てます。
今は難解に思える課題かもしれませんが、在学中に理解できれば、実務もやりがいをもって楽しく進めることができるでしょう。すこしでも正確にたくさんのことを学んで修了できるように、指導員も精一杯尽くしてまいりたいと思います。
今年度は新型コロナウィルス感染防止対策のため、訓練の開始が遅れましたが、どうにか訓練時間を確保して実施しております。
さて、夏休みも明け2学期が開始され、建築科では隅木や四方転びの課題作製が始まりました。
隅木とは、入母屋屋根や寄棟屋根などに用いられる部材です。また、四方転びとは、鐘楼堂や手水舎の柱に用いられる構法の一つです。
隅木や四方転びの課題では、二次元的な展開図の作成から、墨付け、加工、組み立てを通して、さしがねの使い方や構造体の成り立ちを学ぶことができます。
はじめは難解に感じるかもしれませんが、課題を完成させることで、立体構造の理解が深まります。
ひとつひとつ丁寧に取り組めるように、訓練生の特性に合わせた指導も心掛けています。
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