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ロウバイが終わりかけて、桃の節句が近づいてくると、春の花がどんどん咲き始めて、散歩していても植物の変化が楽しいこの頃です。
若い頃は何と言っても春といえば桜でしたが、歳を重ねるにつれ、梅になんともいえない美しさを感じるようになりました。
ちょうど先日、奈良の大和文華館へ行ってきたのですが、ここの梅苑が見事なのです。
その、一本一本の幹、枝ぶり、花の色や形、香りも実に個性豊かでびっくりします。
様々な名所も歩きましたが、個人的にはこちらでのんびり見る梅が最高です。
特に枝垂れ梅には惚れ惚れしてしまいます。
また、四季折々を楽しめる大きな庭もあり、美術館入口には枝垂れ桜の巨木が迎えてくれます。
混雑も殆どなくゆっくりと散策を楽しめるお勧めの場所ですので、機会があれば是非足を運んでみて頂けたらと思います。
梅は見れば見るほど味わい深く、幹の肌合い、枝の勢い、蕾のぷっくりした膨らみ、可愛らしい花弁に飽きることがありません。
古の絵師たちが描いてきた梅が瞼の裏に浮かんできます。
宗達や光琳、雪舟はどんな風に梅を見て筆を走らせたのだろうかと、思わず妄想が駆け巡ったり。
昔習った四君子は、よくよく考えると特徴をしっかり捉えていたのだなと、今更ながら感心してしまいました。
御手本を紙の上だけで捉えるのでなく、いつか自分が目で見て感じたままの梅の木を気持ちよく描いてみたいものです。
そういえば、陶校の中庭にハナミズキの木がありますよね。卒業してから街頭でハナミズキの花を見つけると学生の頃を思い出しますし、桜を見るたび鴨川で同期のみんなと花見した事が思い起こされます。花と記憶がしっかり結びついてるんですよね。
最後に梅の句を紹介したいと思います。
この句のように、花が一輪、また一輪と咲く様子にホッとするような心のゆとりを持って、穏やかに過ごしていけたらいいなと思います。
「梅一輪 一輪ほどの温かさ」(服部嵐雪)
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