ふるさとトピックス!福知山、舞鶴、綾部
更新日:2024年2月7日
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※この記事は海の京都Timesからの転載記事であり、内容は2023年12月15日時点のものです。
京都府北部の「海の京都」には、33もの漁港がある。中でも大きな存在感を放つのが、舞鶴市の舞鶴漁港。水揚げ量は府内で最も多く、府内産水産物の流通拠点となっている。季節ごとにさまざまな海の幸が集まる舞鶴は「さかなの街」。地元の魚のおいしさを全国や海外に届けようと、市内の「食」の事業者が奮闘している。
加工食品は一つひとつを手作りする
舞鶴市北田辺の(株)凡愚(ぼんぐ、水谷幸夫社長)は、飲食店と仕出しの事業で培ってきた「食」の技術を生かし、加工食品を展開する。カニやブリ、マグロ、サザエなどを使った商品を開発しており、いずれも手間を掛けずに食べられるのが特長だ。特殊な冷凍技術により、本来のおいしさを保った状態で消費者に届ける。
飲食店「凡愚」
同社の創業は2004年。飲食店「凡愚」として始まった。当初はうどんとそばを中心にしていたが、舞鶴らしさのあるものを提供しようと、徐々に海鮮を中心に地元食材を用いたメニューを増やしていった。また、より多くの人に自社の料理を味わってもらえるように、仕出しにも注力。店舗を増やすとともに配達エリアを広げながら、和食を中心にした「食」の事業を拡大してきた。
ただし、店舗は来てもらわないと料理を提供できない。仕出しは配達できるエリアに限度がある。
加工食品の事業拠点となるセントラルキッチン
こうした壁を乗り越えようと着目したのが加工食品。21年秋、事業拠点であり、食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」に対応したセントラルキッチンが完成した。
「プロトン凍結」ができる急速凍結機
強みとなるのが、「プロトン凍結」ができる急速凍結機。電磁波と冷風を組み合わせて食品を凍結させるもので、凍結時に細胞が壊れるのを防ぐため、鮮度やおいしさを維持できるという。冷凍であれば遠方でも商品が届けられる。全国へ向けて販売できる態勢が整った。
加工食品は、プロトン凍結と食材の相性を考慮して開発する。野菜などの中には使いづらいものがあるものの、海産物は問題なく使えるケースが多く、プロトン凍結との親和性は高いという。必然的に「さかなの街」らしさのある海鮮商品が中心となり、ふるさと納税の返礼品を中心に商品を生み出している。
ズワイガニの雄と雌を丸ごと使った「夫婦甲羅盛り」
特に人気が高い商品が、ズワイガニを丸ごと使って身やみそを甲羅に盛り付けた「甲羅盛り」。「海の京都」の代表的な味覚として知られる松葉ガニ(雄のズワイガニ)と、プチプチとした食感の外子(卵)や濃厚な内子(卵巣)を持つコッペガニ(雌のズワイガニ)をセットした「夫婦甲羅盛り」などのバリエーションがあり、解凍すればそのまま食べることができる。
ブリしゃぶ
カニとともに寒い時季に旬を迎えるブリも好評だ。脂ののったブリを熱いだしにさっとくぐらせ、おいしさを引き出す「ブリしゃぶ」を商品化しており、プロトン凍結により家庭でも簡単に店の味を再現できる。「海の京都」の名物料理が、全国に届けられるようになった。
「海の宝石ちりめん海鮮丼」
「食べれば、確実に『おいしい』と言ってもらえるのでは」。店舗運営や仕出し、商品開発などを統括する凡愚部長の小林裕樹さんが自信を持つ商品がある。「海の宝石ちりめん海鮮丼」シリーズだ。一般的にイメージされる海鮮丼とは違って独自性があるもので、「海の京都」の事業者が編み出した特殊な製法を用いて商品化した。
商品は海鮮丼の具材。凡愚の他の加工食品と同様に冷凍での販売だが、大きく異なるのが解凍は不要であることだ。具材はフレーク状になっていて、凍ったまま熱いご飯にかけて食べれば、トロっと口の中でとろけるように海鮮のうまみが広がる。プロトン凍結の特長を生かした商品シリーズであり、マグロやアオリイカなどのバリエーションがある。
ただ、特殊な商品ならではの課題がある。「普通の海鮮丼とは違うのに、それが伝わっていない。もっと多くの人に知ってもらう必要がある」と小林さん。現状では知名度が低いものの、これまでにない手軽さと味わいがあるだけに、「海の京都」の新たな名産品になり得るポテンシャルを秘めている。
サザエのつぼ焼き
このほかの商品も、売りは「手軽」であること。例えば、サザエのつぼ焼きは自家製つゆで加熱調理してあり、冷凍のまま電子レンジで温めるだけで食べることができる。
今後もこうした商品を拡充していく方針で、小林さんは「季節を問わず、通年で食べてもらえるようなものも商品化したい」と意欲を見せている。
ソフト干物を持つ松田さん
舞鶴市長浜のENDEAVORは、干物に特化した水産加工業者だ。代表の松田慎平さんが「多くの人に魚をおいしく食べてもらいたい」という思いを込めて作るのが、「ソフト干物」。血抜きや熟成を経て、特殊な乾燥機でふっくらとジューシーに仕上げる。魚特有の臭みを抑える一方、うまみは凝縮。魚が苦手な人でも食べやすいという。
松田さんは大阪出身。舞鶴での干物作りの事業にたどり着いたのは、釣りがきっかけだった。
子どもの頃から釣りが好きだったこともあり、大学卒業後は釣具店に就職。入社して数カ月後、舞鶴の店に転勤となった。ここで来店客に喜んでもらおうと始めたのが、魚を使った料理レシピの紹介。ネットなどで調べ、おいしく魚が食べられる方法を探り、好評を得た。
本来の仕事である釣具の販売とは違った、「食」の分野でやりがいを感じるようになった。「おいしいものをもっと発信したい」と考え、独立開業を決意。8年間勤めた釣具店を退職し、20年にENDEAVORを立ち上げた。29歳の時だった。
ENDEAVORの「ソフト干物」
起業に当たり、進化の余地がある加工品として着目したのが干物。昔から保存食として作られてきたが、冷蔵・冷凍技術が発達した現代では「保存期間」よりも「味」を追求することで、よりおいしいものを商品化できると考えた。
「ソフト干物」は、現代の技術を用いて作る。専用の乾燥機は20度ほどに保った庫内で魚を低温で乾燥させるとともに、乾燥中にオゾン光を照射することにより殺菌や消臭も行う。水分を飛ばしすぎないので、凝縮されたうまみがありながらも、食感は「ソフト」に仕上がる。
下処理をする松田さん
また、乾燥前の工程でも差別化を図る。血抜きと洗浄をしっかりとすることで臭みを抑制。そして、おいしさの決め手になるのが熟成だ。魚の大きさや種類によって異なるものの、3~5日程度の熟成期間を持たせることでうまみを引き出す。ただし、「タイミングを誤れば腐ってしまう」と松田さん。適切な期間を見極める技術があるからこそ、できることだ。
tangobarと共同開発した干物の缶詰
「海の京都」の事業者との連携により、一風変わった干物商品も誕生した。京丹後市の合同会社tangobar(タンゴバル)と共同開発した缶詰だ。「ソフト干物」をオリーブオイルや赤ワインなどで漬け込んだもので、缶詰なので常温で長期間保存できる。
「海外にも売っていきたい」。松田さんは力を込める。
凡愚とENDEAVORの商品は、ECサイト「海の京都市場」や舞鶴市ふるさと納税の返礼品で扱われている。
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