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茶の霜害対策技術について企業と意見交換を実施
近年の気候変動の影響で発生リスクの高まりが懸念される茶の霜害対策技術について12月5日に企業3社と意見交換を行いました。本件はフードテック研究連絡会議※での交流がきっかけとなり、京都産業21並びに京都府中小企業センターの協力を得て開催しました。
参加企業からの斬新な発想に示唆を得る場面が多くあり、意見交換で議論したアイデアのいくつかは今後、当所茶園内において検証を行う予定です。
当所では今後も異分野との連携を強化し現場の課題解決に繋がる研究を進めていきます。
※フードテック研究連絡会議:京都の食文化や高い栽培技術と最先端技術を融合し、農林水産業を含む食関連産業の課題解決を目指す「京都フードテック基本構想」に基づき設立された異分野連携プラットフォームのこと。
意見交換 |
茶園で既存の防霜対策の説明など |
令和6年度JA共販茶求評会の開催を支援
京都府産茶の生産技術と品質の向上を目指して、JA共販茶求評会が12月2日にJA全農京都宇治茶流通センターにて開催され、当所職員が審査員を務めました。求評会では、煎茶、かぶせ茶、玉露、てん茶の部に分かれ、それぞれ外観、内質(香気、水色、滋味など)の審査が行われました。
当所は審査を通じて、京都府産茶の品質がさらに向上するよう、順位付けをするだけではなく、荒茶審査を通じて得られる栽培・製造上の注意点等の指摘を行いました。
今回協議された今年の製造上の課題、改善点等については、関係JA等を通じてより多くの生産者に伝え、今後も京都府産茶のさらなる生産技術・品質の向上に向けて取り組んでいきます。
改善点等を協議しながら審査を行う審査員 |
きょうとまるごとお茶の博覧会プレイベントを実施
来年関西万博が開催されるのを契機に京都府内に観光客を呼び込むための施策が展開されており、茶関係では「きょうとまるごとお茶の博覧会」として開催されます。11月10日に北野天満宮で開催されたプレイベントにおいて、当所は、「あなたの好みと出会える宇治茶試飲会」を実施し、約220名の来場者がありました。
試飲会では来場者に産地や品種など異なる特徴を持つ6種類の煎茶から3種を試飲してもらい、自分の好みのお茶とその理由などについてアンケートを実施しました。
来場者からは、「お茶の味がそれぞれ全然違う!」、「お茶が美味しかった」、「もっといろんなお茶を飲んでみたくなった」等の声が聞こえました。
試飲会会場 |
煎茶3種を試飲 |
抽選会を実施 |
京都市茶業組合の販売ブース |
当所施設公開を実施
当所では、一般の方々に宇治茶の魅力を体感していただくために、毎年、施設公開を実施しています。
今年度は10月10日に実施したtころ、約40名が来所されました。茶園や茶工場の見学、研究員による研究成果の紹介のほか、今年は新たな企画として、プレミアム宇治茶※(玉露)の試飲会を実施し、これらの体験を通じて宇治茶に対する理解を深めてもらいました。
来場者からは、「説明がわかりやすく大変勉強強になった」、「もっとお茶を飲みたくなった」、「玉露を飲むのは初めてだったので、おいしさを知った」等の声が聞こえました。
当所では、研究所の特徴を生かした宇治茶の情報発信を続け、宇治茶ファンの裾野を広げることで、茶業振興に貢献していきます。
※プレミアム宇治茶:一番茶のみを使用し、一定水準以上の品質を備えている高品質な宇治茶(玉露・煎茶)を、品質審査会、認証委員会を経て、プレミアム宇治茶として(公社)京都府茶業会議所が認証しています。
茶園見学 |
茶工場見学 |
最近の研究成果の紹介 |
プレミアム宇治茶(玉露)試飲会 |
茶園品評会審査のために審査研修会を開催
宇治茶の生産性と品質の向上をも茎に、毎年10月中旬頃に府内各地で茶園品評会が開催されます。これに先立ち、当所では、京都府茶生産協議会と共催で、茶園品評会の審査員となる、JA、市町村、普及センター等の職員を対象に研修会を当所茶園で開催しました。研修会では、当所研究院が審査のポイントなどの説明を行った後、受研者は実際の品評会を想定して「葉層が確保されているか」「樹高や株張が適正であるか」等の審査項目について採点を行いました。受研者からは「減点になったポイントはどこか」、「審査園が再萌芽※している場合どうしたらよいのか」など多くの質問が出されました。
当所は今後も茶業関係者の技術力向上に寄与することで宇治茶ブランドを振興・発展のための取組を支援します。
※再萌芽:秋冬の気温が高いために春にでる芽が秋に出てしまうこと。
審査方法を説明する研究員 |
茶の高温障害の実態解明試験の実施
近年はこれまでに例がないほど多くの異常気象が発生しており、今後、異常気象によって、茶においても高温障害が起き、品質や生育に悪影響を及ぼすことが懸念されます。しかし、茶の高温障害を評価する手法は確立されていません。そのため、当所では高温や乾燥が及ぼす影響を様々な指標で調査しています。
高温障害が発生しやすいように、内部気温が高くなるガラス室や簡易ビニールハウス内で茶を育てたところ、葉にしおれや褐変が生じるだけではなく、光合成活性が低下するなどの変化が見られたことから、これらが障害評価の指標となる可能性があることが分かりました。
今後も、簡易ビニールハウスでの試験を続行し、高温障害の客観的な評価法の確立を目指すとともに、対策技術としての農業資材利用の効果を調べることにしています。
茶を育てる簡易ビニールハウスの様子 |
光合成活性測定の様子 |
茶の株内雑草の省力除草試験の実施
茶は地表面近くまで枝が込み合っており、茶の樹の下の雑草は草刈機が入らないため屈んで手で取る重労働となっています。このため、茶の樹の下に市販の中耕除草機※が使用できるように地面から高さ25CMほど枝を切除し、定期的に耕うん除草し、その効果を確認しています。枝を切除したため株の中に光が入りやすくなり、また、耕うんで土壌中の雑草種子を掘り起すなど雑草が生えやすくなることを懸念していますが、少雨・高温の8月現在、雑草の発生は少ない状況です。
引き続き、夏以降の雑草の発生状況を調査するとともに、来年の一番茶の収量や品質への影響の確認を行います。
※中耕除草機:土を混ぜて耕すことで除草する器械
耕うん除草処理直後の樹冠下の様子(5月30日撮影) |
7月3日に2回目の耕うん除草処理した樹冠下の様子(8月15日撮影) |
茶園管理方法と土壌硬度の関係を調査~研修生プロジェクト~
当所では4月に入所した2名の茶業技術研修生が年間を通じて1人1課題のプロジェクト研究に取り組んでいます。うち1名は茶園管理方法とうね間土壌硬度との関係を調査しています。乗用型摘採機による管理は、うね間土壌の踏圧により、土壌物理性や施肥効率に影響を及ぼすことが懸念されています。そのため、従来の可搬型摘採機による管理園との土壌硬度の違いを調査し、物理性の改善方法を検討することとしています。
今回は土壌の硬さの違いを貫入式土壌硬度計を使って調査しました。今後は物理性の改善方法を検討するなどプロジェクトのとりまとめに向けて研究員が指導を続けます。
自園を貫入式土壌硬度計で調査 |
調査データの例 (縦軸:深さ、横軸:土壌貫入抵抗値)
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第42回京都府京都府茶品評会の運営を支援
茶の栽培・製造技術の改善による府内産茶の品質向上を目指して、京都府茶品評会審査会が7月9日及び10日に宇治茶会館で開催されました。審査会は煎茶、かぶせ茶、玉露、てん茶の4部門で行われ、外観(見た目の評価)と内質(香り、味などの評価)について審査が行われました。
当所職員は審査員として審査を担当するとともに、審査補助員として円滑な審査運営に努めました。また、昨年から当所が構築した茶品評会記録集計システムを活用して審査番号をバーコード管理し、集計をIT化することに取り組んでいます。
審査会で確認された栽培や製造における改善点は、関係機関を通じて出品者にお伝えするとともに、地域で開催される求評会などの場において品質向上の支援に活用されます。
外観審査を行う職員 |
関係機関とともに審査補助を行う職員 |
茶業技術研修生の挿し木実習を実施
新しく茶園を開いたり古い茶園を植え替えたりするときには、遺伝的に均一な苗木がたくさん必要です。チャの種子は雑種であるため、種子から苗木を育てるのではなく若い枝を切り取って育てる挿し木育苗法が確立されています。
当所では茶業技術研修生にこの育苗法を習得してもらうため毎年この時期に挿し木の実習を行っています。事前に研究員が研修生に対し挿し木育苗に関する講義を行った後、ほ場実習を行い挿し木床の準備を整えました。さらに、挿し木当日は職員の指導を受けながら剪定ばさみを用いて穂木から挿し穂を調製しました。今年は新品種候補を挿し木したため、品種が混ざらないように丁寧に作業を行いました。
今後もかん水やビニール被覆作業を行う中で挿し木育苗法が習得できるよう指導を続けます。
挿し穂を調製し |
丁寧に挿し木を行う研修生 |
当所では、茶生産農家と茶流通業者の後継者を対象に、宇治茶業界を担う人材を育成するため、大正14年から茶業技術研修を実施しています。現在までに203名の修了生を現場に送り出しており、令和6年度には2名が入所しました。
4月30日~5月22日に当所の一番茶期の摘採・製造実習を実施しました。研修生にとって、研修期間中に一度の貴重な一番茶期の作業経験であり、摘採機の取扱いや揉み茶・てん茶製造方法を研究員から学びました。また、5月27日には全農京都茶市場での流通状況を見学しました。
6月以降は、就農、就業後に直面する課題を想定し、1人1課題のプロジェクト研究に取り組みます。
揉み茶の製造実習(当所) |
茶の摘採実習(当所) |
てん茶の製造実習(当所) |
茶市場の見学(JA全農京都茶市場) |
当所では、茶生産農家と茶流通業者の後継者を対象に、宇治茶業界を担う人材を育成するため、大正14年から本研修を実施しており、現在までに203名の研修生を現場に送り出しています。
令和6年度は、入所式が4月11日に開催され、京都市、南山城村から各1名の計2名が入所しました。1名は生産農家、1名は流通業者の後継者です。研修生は、当所職員の指導を受けながら、1年間のほ場実習、製茶実習、講義カリキュラムを通じて、茶業経営の技能の習得に努めるとともに、就農、就業後に直面する課題を想定し、1人1課題のプロジェクト研究に取り組みます。
入所にあたり宣誓する研修生 |
所長の式辞を聞く研修生 |
当所では、所内の定点茶園において、一番茶新芽の萌芽※・生育状況について調査を行い、府内生産者や茶業団体等に情報提供を行っています。
令和6年は1~2月の平均気温は平年よりやや高く推移しました。3月は第5半旬まで平年より低く推移しましたが、第6半旬から平年より高く推移したことで、本年の一番茶萌芽宣言は、平年より2日早い4月2日となりました。
今後は萌芽後5日毎に、新芽の生育状況を調査し、一番茶生産に役立つ情報としてホームページ等で発表します。また、気象予報と合わせて葉期予測情報も掲載し適期作業を促しています。
萌芽:新芽の長さが包葉(芽を包んでいた葉)の約2倍になった状態のこと
報道機関の取材を受ける研究員 |
萌芽した茶の新芽 |
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