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更新日:2022年6月1日

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登録有形文化財に指定された舞鶴市のレトロ銭湯「若の湯」へ

※この記事の内容は2018年11月1日時点のものです。

友達や家族と行った夏の夕暮れ、寒い冬の日にマフラーをぐるぐる巻きにして下宿から洗面器をかかえて行った思い出など、銭湯の思い出って通った当時の思い出とどこかリンクするものではないでしょうか。西舞鶴の商店街の中に立つ、まるでお城のようなレトロ銭湯の「若の湯」が、2018年3月、国の登録有形文化財に指定されました。懐かしいペンキ絵に名水をくみ上げたお風呂、女将さんの真心が詰まった銭湯に入れば身も心もポカポカになりますよ。

 

明治36年創業。100年を数える老舗銭湯

西舞鶴は、かつて田邊城があったことから城下町として栄え、その後は商業都市として栄えた町。「若の湯」はその商店街の一番良い所に立っています。


名前が金字書かれています
創業は明治36(1903)年。このモダンな建物ができたのが大正12(1923)年。大正時代といえばジャズが日本に伝わり、モガやモボが流行し、モダニズムが花開いたそんな時代。そんなモダンな時代に建てられた「若の湯」は、砂状洗い出しと白いタイルの壁に水色を効かせ、名前は屋根の妻入りの部分に金字で書いてあります。配色だけみたらまるでヨーロッパ!今見てもモダンで素敵なのだから、当時はものすごくハイカラだったでしょうね。

しかも細かい部分まで手が込んでいて、大正という時代の職人の心意気を感じさせられます。

この写真は大正12年、建物が完成した記念に撮影されたもの。よく見ると真ん中に煙突のようなものが2本付いていて今と屋根の形が違います。こちらは大正15年に火事になり、その後、現在のような瓦ぶきになりました。

「若の湯」が素晴らしいのは、こういった細かい資料が多く残っていること(この写真はご近所からいただいたものですが)。設計者の名前も分かっていて大月喜太郎氏。写真の上右の方です。しかもマメに記録をしていて、その資料をかいつまむと大正15年が5銭、終戦の翌年昭和21年1月が50銭、昭和50年が100円、平成10年が300円。「私が通っていた時は〇〇円だったな…」なんて淡い思い出が金額と共によみがえってきます。

さて、中に入ってみましょう。男湯と女湯の間にはマジョリカタイル!レトロ銭湯にんはマジョリカタイルが多いですよね。

わたくし女性なので、まずは女湯から失礼いたします。

 

女湯へ入ってみた

入るとすぐ飴色に光ったケヤキの番台。代々、手入れをしながら使ってきたことが伺えます。

うわ~、あのボディタオルのパッケージも色使いもいいなあ。

木製ロッカー。こちらもピカピカです。

その隣には、これまたレトロなマッサージ機。もちろん現役。

その隣にあったのは木製のベビーベット。上は畳が敷かれ横には広告が。赤ちゃん用用品の広告が筆文字で書かれています。そういえば銭湯って鏡や洗面器などあらゆるところに広告が入っていますもんね。

レトロな体重計の後ろのタイル、よく見ると職人さんが一つ一つカットしてデザインを組んでいるんです。恐らく創業時のものではないかといわれています(アップは次の写真でどうぞ)。

こちらが浴室・脱衣場のタイルたち。右上は浴室のタイルで舞鶴柄。右下はシャワーの下、蛇口付近のタイル。真ん中は湯船へお湯を注ぐ蛇口周りのタイル。丸柄が水を思わせます。真ん中下は脱衣場と浴室の間のタイル。こちらも随分古いので竣工時のものかと思われます。左上は洗面所。左下が体重計の後ろのタイル。よく見ると、パーツをカットして貼り合わせてあるのが分かります。

 

あの銭湯絵師が描いた赤富士が!!

さて、「若の湯」の新しい名物が2016年に完成した、こちらのペンキ絵。関西ではタイル画が多い(と思う)のでペンキ絵は珍しい!!しかも描いたのは銭湯絵師の中島盛男さん。聞くところによると今や日本における銭湯絵師は3人しかいらっしゃらないそうで、中島さんの絵を見に遠くから訪れる人もいらっしゃるそうです。ちなみに女湯と男湯は絵が違い、女湯は中島さんが得意とする赤富士。真っ赤な赤富士が青空に映えて見事の一言!!

 

男湯のペンキ絵は女将さんリクエスト。丹後を代表するデザイン

さて続きまして、わたくしにとっては禁断の男湯へ足を踏み入れてみます。男湯と女湯の仕切りはこのケヤキ造りの立派な鏡台。透かし彫りや大理石風(?の石が入っています。

その鏡台の上には木箱のコンセント使用BOXが。この木箱からコンセントが伸びていて、ドライヤーをつないで木箱に10円を入れると電気が使えるという仕組み。


男湯の脱衣場

ところで、この辺りでお気づきになった方がいらっしゃるかもしれませんが、多くの銭湯は広い浴室の中央に塀を作り、女湯と男湯に分けているところが多いですよね。そして塀の上が開いているので家族や恋人なんかであれば壁越しに石鹸やタオルをポーン投げて貸し借りなんかできちゃうのですが(古い)、こちら男湯と女湯はつながっていないんです。

というのも多くの銭湯は奥に長く、土間→脱衣所→浴室と続くのに対し、こちらは土間→脱衣所そして女湯なら右手、男湯なら左手が浴室になっているんです。だから「若の湯」の男湯と女湯の仕切りはこのケヤキの鏡台というわけです。

さて、男湯のペンキ絵。こちらは女将さんのリクエストで富士と天橋立。ブルーと青が清々しい一枚。

中島さんのサインも入っています。

 

銭湯で一日の疲れを落とし、癒されてほしい

ところで、2018年3月に登録有形文化財に指定された「若の湯」。営業中の銭湯が登録有形文化財になるのは全国で6例目なのだそうです。文化財になったことで何か変化はあったのでしょうか。女将さんに伺ってみました。

「そうですね。かつてお休みの日に先代がタイルの目地を自分で直したり、こまごまと修理をしているのをずっと見てきて、建物が古いと手がかかるし負担だなあと思っていたんです。でも今回、良い建物だからと調べていただいたことで、建物に対する見方が変わりました。


こんなさりげない心遣いが嬉しい

私には日常の見慣れた風景でしたが、他の方にはこんな風に映っているんだなあって、それがとても新鮮でした。それに竣工当時は洋館という新しさが目を引いたと思うのですが、今は一回りして古さで人の目を引く。でも、どちらも驚きをもって見てもらえるし、建物が人の気持ちを和ませることには変わらないのが面白いなあと。それがたまたま私が預かっている時だったというのが面白い巡り合わせだなあと思うんです」。

「それに今はどこの家にも大体、お風呂はありますよね。それなのにわざわざ外を歩いて来てくださる。今、入浴料は430円ですが、それに+αがないと可愛がっていただけないと思って。だからうちに来ることで癒されたり元気になっていただけたらと思うんです」。
なるほど、さりげなく貼られた手書きのポスターやお風呂に浮かべる木簡は、そんな女将さんの優しい気持ちだったんですね。

「それに、お一人で来るかたもいらっしゃるでしょ。お風呂に入っている間、手持ちぶさたかなあって思って」。この木簡を読んで一日を振り返ったり、そうかあ…なんて思ったりするわけですね。なんという心遣い。しかも押しつけがましくなく、さりげない。女将さんと話しているだけで、なんだか元気になってきました。

 

肌に柔らかい最高の水を薪で沸かす


平成の名水百選にも選定。商店街の中に「眞名井」の水を汲めるところがあります。

ところで「若の湯」のあるこの辺りは昔から眞名井という名水が湧き出る地。もちろん「若の湯」の水も地下からこの水を汲み上げ、薪でお湯を沸かしています。だから肌への当たりが柔らか。富士山をみながら、ゆっくりお湯につかれば夢見心地。気分はもう温泉です。

そして、表には「焼きいもあります」の看板。ということは、もしや。「そうです。お風呂を沸かす薪で焼いているんですよ」。お風呂に入って温まって、帰りに熱々の焼きいも…想像しただけでウットリしてきます。

これから舞鶴はカニシーズンでもあります!美味しいカニを食べて、建物探訪と銭湯と楽しみにでかけてみてはいかがですか?

 

若の湯

京都府舞鶴市本58
TEL 0773-75-2541
営 16:00~21:30
休 日・水曜日 
入浴料 大人430円 小学生150円 幼児60円
手ぶらセット 480円 入浴料+タオル2枚+シャンプー+石鹸

 

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