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第2回遺伝子組換え作物交雑防止検討会の議事概要

開催月日:平成18年4月25日(火曜日)
開催時間:午後2時~4時
会場:京都府公館 第5会議室

1 協議事項

遺伝子組換え作物の交雑混入防止措置に関する指針について

2 出席者

【委員】

佐藤 文彦委員(京都大学大学院生命科学研究科教授)
椎名 隆委員(京都府立大学人間環境学部教授)
高原 光委員(京都府立大学大学院農学研究科教授)
谷坂 隆俊委員(京都大学大学院農学研究科教授)
並木 隆和座長(京都府農業資源研究センター所長)
山口 裕文委員(大阪府立大学生命環境科学研究科教授)

(敬称略、五十音順)

【事務局】

太田農林水産部理事
食の安心・安全プロジェクト・農林水産部農産流通課 各担当者

3 概要

以下の議事録要旨のとおり

議事録要旨

検討事項

(座長)

 本日、議論いただきたい点は次の3点。
 1点目は、指針の対象とすべき作物をイネ、ダイズ、トウモロコシ、西洋ナタネに絞ることの確認。
 2点目は、交雑防止措置の具体的な検討。
 特に、隔離距離に安全率を掛けることと、隔離距離と併せて交雑防止のための代替措置を加えること。
 3点目は、混入防止措置・モニタリング措置についてである。


 事務局に検討資料の説明を求める。

(事務局)

 資料1を説明。基本的な事項の検討

指針対象作物の検討

(座長)

 前回の議論では、トマト、アルファルファも加えるべきとの意見もあったが、対象作物を当面、府として重要な作物であるイネ、ダイズ、トウモロコシ、西洋ナタネに絞ることで良いか。

(委員)

 先ずは何を守るべきかという議論が重要。
 食品としての基準では混入が5パーセントまでは表示しなくても良いと認められている。
 栽培作物の種子、原々種をどのように管理するかは非常に重要であり、府として重要なイネ、ダイズ、京野菜等は十分な対策が必要であり、遺伝子として守るべきものは厳しい基準が必要であるが、そうでない場合は必ずしも厳しい基準は要らないのではないか。
 トウモロコシはほとんどがF1で、府では商品栽培がされていないことから、対象に含めなくても良いのではないか。

(事務局)

 国の調査によると、7~8割の人が遺伝子組換え作物に不安感を持っている現状がある。このような状況下では、可能な限りの交雑防止対策を講じることが重要である。
 国の実験指針、北海道、新潟県の指針でも可能な限りの交雑防止対策を講じることとしており、この考え方は十分に踏まえていく必要がある。
 原々種を守ることは勿論であるが、栽培現場ではイネやダイズの種子は、種子更新が毎年100パーセントなされていないので、一般栽培においても十分な配慮が必要である。

(委員)

 トウモロコシはほとんどがF1であり、採種もなされていない。トウモロコシは区別して、やはり対象から除いても良いのではないか。

(事務局)

 遺伝子組換えのトウモロコシはデントコーンで、家畜飼料用として栽培されている。
 人が口にするスイートコーンとは開花期が異なるので、一般的には交雑しない。しかし、両種の開花期が重なるような栽培型もないとは言い切れず、交雑の可能性も捨て切れない。このため、トウモロコシも指針の対象に入れてはと考えている。

(委員)

 一般市民の感覚では、原々種を守ることは重要であるが、トウモロコシにおいても何らかの不安要素が残るのなら、不安を取り除いて欲しいと考えるのではないか。
 万一交雑の恐れがあるのなら、府はそのような不安を取り除く必要があるのではないか。

(事務局)

 遺伝子組換え作物については、国において安全性の評価が行われており、その上で使用規程の承認という形で一般栽培等が認められている。
 遺伝子組換え作物の議論は、食の安全性の観点からではなく、遺伝子組換え作物との交雑や混入により周辺で生産された農産物への風評被害が懸念されることから、この風評被害を防ぐ必要があるとの観点に立っている。

(委員)

 交雑による風評被害は府単位で拡大するので、これを防止するためには、一定の指針の策定等、対策は必要である。
 F1だからといって、採種しないとは限らず、分離世代を栽培する事例がある。

(委員)

 現実的には非組換えのF1のトウモロコシ種子でも、わずかには組換え体種子の1~0.1パーセント程度の混入はあるだろう。これが実際に栽培された場合、風評被害や遺伝子拡散のリスクは大きな問題にならないということはないか。一方、組換え体を栽培して、もし、交雑したとして、F1の場合には、形質がはっきりしており、次世代の種子への遺伝は問題とならないのではないか。なぜなら、農家は優良形質を残すため、他の遺伝子が入ってきたら排除するだろうから。

(委員)

 そうとは言い切れない。古い系統は、実は遺伝的特徴が流動化しながら維持されている。
 作物も進化する。遺伝子組換え作物の遺伝子混入の危険性もあり得るので、規制は設けるべき。
 安心感を得るための基準を策定しておき、(形質の変化等)何か問題が起これば、その時に考える。そういった指針で良いのでは。

(事務局)

 前回はトマト、アルファルファ、テンサイについても議論されたが、テンサイは現在、府内で栽培されておらず、トマトは安全性の評価が行われたものはない。
 また、アルファルファは交雑防止措置を議論するための十分な知見が得られていない。以上のことから、この3作物の議論は今後の検討課題とし、当面、イネ、ダイズ、西洋ナタネにトウモロコシも加えて、具体的な議論をしていただくということでどうか。

(座長)

 当面、イネ、ダイズ、西洋ナタネ、トウモロコシの4品目に絞ることとし、了解いただくということでよろしいでしょうか。

交雑防止措置の検討

(座長)

 続いて、交雑防止措置について議論していきたい。
 事務局に資料の説明を求める。

(事務局)

 資料2説明。

(座長)

 イネに関して議論をお願いする。

(事務局)

 データは東北農研センターの議事録から抜き出したもので、花粉源の幅が5メートルと小さな規模であり、実際の栽培はもっと規模が大きく、花粉源が大きくなる一般栽培では十分ではない。小規模のデータであり、大規模な栽培に当てはめた場合、信頼できるデータではないため、安全率をかける必要がある。

(委員)

 風評被害を考慮する必要がある。安全率の根拠となる科学的な根拠はなかなか出てこないかも知れないが、農林水産省の実験指針に何らかの安全率をかけるべき。

(委員)

 実験では、植物群落のどの部位をとるかで、得られるデータは大きく異なる。このように低い頻度で現れる形質を調べると、低い方向にデータが偏って現れやすい。交雑率が高くなるような実験方法で調査すれば、データは高くなる。生態学的に物事を考えるか、そうでないかで、得られるデータは異なる。
 データの再現性は検証されていないので、数値を鵜呑みにして信用するのは問題。
 また、マーカーが一つなのが問題。複数のマーカーを使うと違う交雑率が出てくる。
 現実の交雑の起こり方は数値とは違うので、倍率をかけることなどが必要。

(事務局)

 新たな知見が出てから距離を縮めるのは良いが、新たな知見により逆に距離を広げるようでは、指針に対する信頼を損ねることになる。
 安全率を考慮して隔離距離を設けておいて、データの蓄積、あるいは遺伝子組換え作物に対する理解の進展等によって距離を見直すべきと考えている。

(委員)

 交雑率を可能な限りゼロにすることを目標にしながら、確実なデータを基に距離を設定することは難しく、安心率として議論するということか。

(事務局)

 花粉なので、想定外のことは十分起こり得る。想定外のことを考慮すると、膨大な距離を設定することになる。このため一般的な状況の下で交雑率を可能な限りゼロにすることを目標にし、このためには安心率が適当なのか安全率と言った方が適当なのか、言い方は別にして、そうしたことも考えに入れて隔離距離がどの程度必要なのかを議論されることを期待している。

(委員)

 世界的な人口増などに対応するためには、遺伝子組換え作物の重要性は今後、大きくなっていくであろう。イネ、麦の収量増には、遺伝子組換え技術がもっとも有効であると思われる。
 風評被害を考慮して一旦余りにも厳し過ぎる規制をすると、後々、距離を狭めるためには大きな努力を要することになる。研究者としては、安全率は現実から余りにもかけ離れたものにならないことを望みたい。

(事務局)

 作物の違いによって安全率をどうするかという検討が必要である。作物によって安全率を変えることについて、裏付けデータにより科学的に整理ができるか。
 整理ができないのであれば、ナタネ、ダイズも含めて各作物全て同じ率にせざるを得ないと考えるがどうか。

(委員)

 農林水産省の基準は、国の試験場でしっかり研究された数字であると思われるが、専門の学者や論文としての投稿などは、どの程度検討されているものなのか。
 外国のデータもそれ程多くない。
 自然の中では平均的に飛散するものではない。異常気象などにより、花粉は予期し難い距離を飛散する。

(委員)

 別の問題もある。ナタネの一般作物においては採種ほ場では交雑しないよう隔離距離をとる。遺伝子組換え作物でも交雑を防止するという点では同じはずであるが、採種の場合と遺伝子組換え作物の場合とが同じ観点で議論されていない。

(委員)

 それは、当たり前のことではないのか。

(委員)

 当たり前のことではある。しかし、採種におけるマニュアルでは、隔離する距離はナタネが1,000メートル、2,000メートルであり、イネの場合も隔離距離は長くとっている。
 遺伝子組換え作物になると、一つの事例に基づき距離が設定されており、大きな疑問を感じる。原種で採種する場合と同じ観点で、遺伝子組換え作物も管理すべき。

(委員)

 1粒でも混入は駄目ということか。原種では実現不可能で、これでは困るのではないか。

(委員)

 そうではない。現在の品種の採種でも実際に数パーセントの混入はある。十分な距離を離す措置を講じ、購入農家の信頼の上に、種子を販売している。

(委員)

 専門家の先生方が種々議論されているが、どの程度の距離を設ければよいのか、結論めいたものはない。論文になりにくいテーマであるため、文献が少ない。

(委員)

 条件が悪くなれば作物は花粉を多く作り、その結果、遠くまで飛散する。
 大規模に栽培してデータをとるのが理想であるが、このようなことは、現場ではなされていない。

(委員)

 試験研究に関しては、将来的に、一般の栽培条件での安全性評価ができるよう、基準を設定しておく必要があるのでは。

(委員)

 厳しい指針を作ると、農業技術がそれほど進んでいない国々にも、将来、負けることになり日本の農業が衰退する恐れがある。
 したがって、遺伝子組換えをやみくもに規制するのは考えものである。しっかりとした基準を作る必要がある。

(委員)

 試験研究に関しては、一般栽培との区別が必要でないか。

(事務局)

 現場でトラブルが生じているのは試験研究機関での栽培についてであり、こうした中で試験研究と一般栽培とを区別することは、社会の理解が得られない。
 厳しくするのか、緩くするのかについては、社会的な状況の下での遺伝子組換え作物に対する理解や認識に立って考える必要がある。

(委員)

 基準づくりのためにも、規模の大きな試験研究ができる余地を残しておく必要があるのでは。

(事務局)

 交雑防止措置の考え方では、(1)隔離距離を設定する場合、(2)距離が取れない場合には代替措置を講じること、(3)ナタネでは距離による隔離に上乗せして訪花昆虫の侵入防止措置を実施するとしている。
 一般栽培にあっても試験研究栽培にあっても、このことによる防止措置を考えているがいかがなものか。

(委員)

 実際には、距離を確保することによる交雑防止を検証するシステムができていない。
 だから、安全率を乗じるという話になる。実際に事故が起こったときに検証するシステム、安全性をチェックするシステムがないというのは、根本的な問題である。
 距離の基準の研究をもっと進めてほしいが、農林水産省の研究はうまく進んでいない。検証するシステムや距離の基準が明確であれば、モニタリング措置のあり方はもっと緩くなってもよい。

(委員)

 安全率、安心率といったときに、交雑率はゼロを基準にして考えるのか。
 府として交雑防止に係る「閾値」を示して、0.01パーセント、1万分の1の確率での交雑を前提として安全率を乗じるべきではないか。

(事務局)

 国はゼロを目指すということで交雑防止を検討している。もし基準値を設定するとする場合、その基準値に対して具体的な交雑防止のシュミレーションが描けるのか。また検証ができるのか。自然条件下で栽培されることであり、また知見の蓄積状況を考えると交雑率の基準を具体的な数字で示すことは困難で、ゼロを目指すとしか言えないと思っている。

(委員)

 花粉の飛散距離についていえば、交雑はなかなかゼロにはならない。
 交雑率が0.01パーセント、1万分の1の確率での交雑を前提としたとしても、花粉の量が倍になれば交雑率は倍になる。逆に花粉の量が少なくなれば、交雑率は小さくなる。

(事務局)

 信頼できるデータがない限りは、国のデータを基準にした上で、安全率か安心率を乗じるべきではないかと考えている。
 北海道と新潟県では、安全率を議論した上で2倍にしている。
 隔離距離以外での措置について、隔離距離の確保と同等またはそれ以上の交雑の防止を確保できるのかについても議論してもらいたい。

(委員)

 国のデータにあるように交雑率0.01パーセントを基準にした上で、安全率を2倍にしておいたほうがよいのでは。
 交雑率ゼロを基準にするというのは難しいのか。

(事務局)

 ゼロを目標にしたいと考えているが、交雑率ゼロをというのは難しいのではないか。

(委員)

 そのところは、モニタリング措置にかかわってくる。
 基準値として何か数値が必要で、そのほうが後で検証できるのではないか。基準値については、現実的に考えていかないといけない。交雑率0.01パーセントを前提として、安全率を2倍にするという形にしておかないと、交雑率ゼロという数字では後で検証できない。

(委員)

 0.01パーセントの交雑率ということは、1万粒のデータをとって確認していかなければいけない。

(委員)

 統計的には50万粒ぐらいのデータが必要である。

(委員)

 それぐらいやって信頼度は高くなる。

(委員)

 統計的に50万粒のデータをとろうとすると、コストがかかる。モニタリングをやらなくなる心配がある。

(事務局)

 モニタリングの評価の時に、その評価基準として0.01パーセントが適当かどうかは別にして一定の基準が必要。

(委員)

 農林水産省の基準に安全率をかけるべきである。

(委員)

 交雑の重要なファクターは、花粉の落下速度である。
 生態学の中で、森林の樹木の花粉の落下速度を地域の平均的な風速、風向などを考慮した上で、樹木の殖性に応じて、飛んでくる花粉の飛散を比較検討する研究が行われている。
 花粉の落下速度が変わってくれば、飛散距離も変わってくる。
 花粉の落下速度を考慮した飛散距離の設定ということも考えられるのではないか。

(委員)

 そのような理論的な研究はホワイトヘッドがやっているが、花粉の飛散は一筋縄ではいかないところがあり、現実にここまで飛んだというデータが分かりやすい。

(事務局)

 新しいデータがでれば、それに基づき変更していくという考え方でどうか。

(座長)

 これまでのことをまとめると、花粉の飛散・交雑については、実験の方法も含め、分かっていないことが多いので、安心感を与えるため、国の基準に安心率を掛けるという考え方で、府として対応していかなければならないということ。

(事務局)

 安心率について決めていただきたい。消費者に説明しやすいものにしてほしい。

(委員)

 新潟県並で最大2倍でよい。

(事務局)

 イネをはじめ各作物の安心率について、新潟県並の2倍とのご意見をいただいたが、よろしいか。
 ナタネについては、隔離距離に上乗せし訪花昆虫の防止措置を設けているので、資料を説明する。

(資料を説明)

(事務局)

 防虫網をするかどうかは別にして、隔離距離だけでも1,200メートルであり、野生種の関係で、府内で栽培することは、現実的には厳しいこととなる。
 試験研究の場合については、開花前の摘花など距離以外の方法による交雑防止措置での対応となる。

(委員)

 距離以外の方法による交雑防止措置の中に、食品衛生法及び飼料安全法承認作物に限るとあるが、研究対象の作物にはそれ以外のものもあるがどうか。

(事務局)

 条例の対象は、交雑の可能性がある開放系での栽培、カルタヘナ法の第一種が対象としており、研究室など閉鎖系での第二種は対象としていない。

(委員)

 家庭菜園でキャノーラなどの栽培があるが、仮に、遺伝子組換え作物を栽培する場合は対象になるのか。

(事務局)

 遺伝子組換え作物は、カルタヘナ法に基づき審査し、承認されたものだけが栽培されるが、地元への情報提供、交雑防止が法律に明記されていないことから、条例に規定したもの。仮に家庭菜園でそのようなことがあれば対象となるが、その捕捉をどうするのかの課題がある。捕捉について努力する必要があるが、条例で念頭においているのは商業用である。

(座長)

 ナタネについては、昆虫による交雑の可能性を考えなければならないので、隔離距離に上乗せして、被覆・防虫をうたわざるを得ないということでよろしいか。

(事務局)

 試験研究については、距離だけではなく、同等の交雑防止措置で智恵を出していただきたい。
 基本的な考え方はこれでよろしいか。表現等について、もしお気づきの点があれば、持ち帰られた後でも結構なので、事務局に言っていただきたい。
 予定していた時間がきているので、残っている検討事項であるモニタリングの方法等については、予め○○委員、○○委員に意見を頂いて、事務局で整理したい。
 そして、本日御検討いただいた交雑防止措置にモニタリング等を加え、指針の形にまとめて、委員の皆様に事前にお送りし、次回の検討会で御検討いただきたい。

(事務局)

 日程調整の結果、次回検討会を5月25日午前に開催することとした。

以上

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