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開催月日:平成18年5月25日(木曜日)
開催時間:午前10時~12時
会場:京都府福利厚生センター
遺伝子組換え作物の混入防止措置及びモニタリング措置について
佐藤 文彦委員(京都大学大学院生命科学研究科教授)
椎名 隆委員(京都府立大学人間環境学部教授)
高原 光委員(京都府立大学大学院農学研究科教授)
谷坂 隆俊委員(京都大学大学院農学研究科教授)
並木 隆和座長(京都府農業資源研究センター所長)
山口 裕文委員(大阪府立大学生命環境科学研究科教授)
(敬称略、五十音順)
太田農林水産部理事、山下農産流通課参事
食の安心・安全プロジェクト・農林水産部農産流通課 各担当者
以下の議事録要旨のとおり
(座長)
前回は、交雑防止措置について、(1)隔離距離は、農林水産省の実験指針に安全率として2倍をかけること、(2)必要な隔離距離を取れない場合は、交雑防止の代替措置も加えること、(3)西洋ナタネについては、上乗せとして訪花昆虫の侵入防止措置を講じることを検討した。
今回は、前回の積み残しである、混入防止措置、モニタリング措置の検討を行う。
これについては、事前に○○委員と○○委員に御指導をいただき、事務局で取りまとめている。
(事務局)
「遺伝子組換え作物の交雑混入防止措置等に関する指針(案)」に基づき混入防止措置について説明。
資料1から資料4までに基づき交雑確認方法(モニタリング)について説明。
(座長)
委員に意見を求める。
(委員)
資料の案で、イネのモニタリングでキセニアを利用するのは、ウルチ品種の栽培に対してモチ品種を指標作物に用いる場合である。
逆にモチ品種を栽培する場合は、ウルチ品種を指標作物にしてキセニアを確認することは難しい。
その場合は、PCR法によるのか。
(事務局)
そのとおりである。
(委員)
モニタリングの検出基準は、キセニアの利用ができるものが0.006パーセントであるが、もう片方が0.010パーセントとなっており、ダブルスタンダードになってしまう。
キセニアを利用する根拠は、大規模にモニタリングしやすいからということであるが、検出基準を揃える必要はないのか。
イネの場合には、農林水産省の基準が使えるため、その数字をあげているということか。
(事務局)
揃える方がよいとの思いもあるが、揃えようとすれば、サンプリングに必要な種子数が非常に多くなり、モニタリング実施上の問題があるため、今回は農林水産省の基準を用いて、個別に設定した。
(委員)
同じほ場で連続して栽培する場合でも、毎年、モニタリングを必要とするのか。
1年目のモニタリングで検出されなければ、同じ条件であれば、次年度以降のモニタリングは免除してもよいという考え方もある。
一方、同じ場所であっても、栽培条件等が毎年変わるとして、数年は必要という考え方もある。
この点を議論することが必要である。
データが出てきて、こういう環境では大丈夫ということが分かれば、モニタリングを毎回するのかどうかは、積極的に見直してもよいのではないか。
そうしないと、栽培したい者は、初期投資をいつまでも維持していく必要があり、費用的にできないことにもなる。
不安があることは理解できるが、将来、技術の有効利用を図るためにも、今後の見直しのプロセスを考えておく必要がある。
(委員)
連作するのはイネである。
畑作の場合は連作しないので、この場所で一回安全だったからといって、翌年は条件が違うので安全とはいえない。
(委員)
ダイズは連作されていないのか。
(委員)
丹波黒には特別な作り方はあるが、普通それ以外の品種は連作するとよくないので、場所を変えるのが基本的な作り方である。
1年目は良くても連作すると2、3年後には収量が低下する。
(委員)
畑作物の場合は、連作障害が出やすい傾向にあるが、逆に、遺伝子組換えで連作障害が出ないように改良された作物を作ることはあり得る。
遺伝子組換えは、そういう課題に対しての解決手法でもある。
(委員)
そういう遺伝子組換え体が出来れば話は分かるが、府民の方への安心を確保してもらうためにどの程度の継続性が要るかは、別の視点で考えなければいけない。
これは、反復した調査でどの程度の精度で混入を検出できるかにかかっている。
1回安全だったからといって、ずっと安全というのは成り立たない。
ある程度モニタリングを繰り返して、調査数や事例が増えていくと分かることである。
(委員)
実際に実施可能な仕組みにせずに、将来もずっとモニタリングしなさい、例えば10年間モニタリングしなさいということであれば、実際には栽培できないことになる。
遺伝子組換え作物が海外でどんどん栽培されるのに、日本において遺伝子組換え作物の栽培が実際にできない状況になると、日本だけが遅れてしまう可能性がある。
むしろ、ある程度の栽培を積極的に支援するような方策をとっておくほうがよい。
(委員)
データをたくさんとれば、信頼性が上がり施策に反映できる。
京都府としてモニタリング自体を行い、スタンダードなデータをとる予定はないのか。
(事務局)
行政がどこまで行うかは別途議論が必要であるが、まず、事業者である栽培者が自ら責任を持ってきっちりモニタリングすることが必要である。
(委員)
現在のモニタリングの方法は現在の遺伝子組換え品種のレベルで議論されていることである。相同組換え技術を使ってできた組換え品種では、モニタリングの内容も変わり、単純にPCR法ではモニタリングできない。
遺伝子組換え体に対する反対が多いのは、現在の組換え技術があらいためであり、ゲノム全体にやさしい組換え技術に進化すれば、モニタリングもいらなくなる可能性がある。
遺伝的に組成の全く違うゲノムのコピーを組換え体に入れることについても、進化生物学関係の学者は反対している。
(委員)
植物のゲノム組成は、遺伝子組換え技術によらなくとも、組織培養するだけで相当変わる。
モニタリングする期間にある程度目安を付けないと、いつまでも証明にコストがかかり、エンドユーザーである消費者にも無駄なコストを強いることになり、結局トータルのコストを増やすことになる。
もちろん、流通過程では、遺伝子組換え体とそれ以外を分ける仕組みが必要であるが、モニタリングはその結果を一つの資料として方法を見直すべきである。
モニタリングは1年ではよいと思わないが、2、3年続ければ見直ししてもよいのではないか。
指針案にはそういう基本的なことが書かれてない。
指針に盛り込まないにしても、イネは連作するので、どういう方向でいくのか議論する必要がある。
(委員)
イネを連作する場合、雑草イネ(赤イネ)の問題が出てくる。
赤イネの場合、栽培ほ場が変われば大きな問題にはならない。
イネの生育しやすい環境が持続されると、そこに雑草タイプのものが出現して影響してくる。
どのような栽培方法をとっても、新たな問題が生じるので、遺伝子組換えイネを連作する場合、雑草イネの出現を厳しくチェックすることが必要となる。
イネは突然変異により脱粒性がある確率で出現する。出現した個体が1回目の栽培ではある確率以下であっても、10年間栽培すれば定着する可能性がある。
現実には除草剤を散布するような環境では、除草剤に適応性が高いものが出現する。
(事務局)
北海道や新潟では毎年モニタリングすることになっている。
周辺の農作物に対しての交雑が防止されているという点について安心感を与えないと、周辺の農作物は価格面で不利益を被る可能性がある。
(委員)
モニタリングを何年か行い、飛散しないことが確認できれば、それ以上継続して行わなくともよいのではないのか。
(委員)
連作している所だから、何年かモニタリングをやっておけば大丈夫だと思っていると、 ほかのところで別の問題が出る。
そして、その別の問題のモニタリングに経費がかかる。
(委員)
それは、隔離ほ場の中で交雑し、新しい雑草が出てくる現象であり、交雑してほ場の外に出るものではない。別の議論になる。
(委員)
モニタリングは、花粉の飛散だけのことか。
色々なケースに対応できるようモニタリングをトータルで考えた場合は別の設定、考え方も必要になる。
何か新しいことを始めるとそれに伴う問題が出てくる。それをどうするか。
(委員)
その問題は、除草剤耐性の作物を作ったために、除草剤耐性の雑草が増えることだと思う。
それは、別の課題であり、栽培体系をどう組み立てるかということではないか。
(座長)
これまでの議論を整理すると、遺伝子組換え作物を同じ場所で連作する場合、自然条件や実験手法が毎回同じなので、モニタリングを無限に繰り返す必要はなく、ある程度のところで打ち切っても、そのデータが使えるという意見があった。
これに対して、連作においても、毎回自然条件、栽培条件は毎回変わるので、周辺に対して安心感を与えるため、毎回のモニタリングが必要であるとの意見があった。
(委員)
研究者としては、面倒なことはやめてほしいと思うが、周囲で作物を栽培している方の安心を考える必要がある。
農家の人に対して「花粉が飛んでいないから安心ですよ」と言うことがモニタリングをする意味である。
(事務局)
同じ考えである。
指針案で、モニタリングにかかる分析日数を2週間以内としたのは、2週間で確認できれば、確認ができた後に、周辺農家が安心して出荷できるとの考えからである。
結果の確認に1~2か月かかるというのではなく、2週間程度で確認できるのであれば、周辺の農家は我慢してくれるのではないかと考えている。
(委員)
指針がないと、遺伝子組換え作物を栽培する側も結果的に困ることになる。
また、遺伝子組換え作物をつくって、花粉が混入しないのかどうかわからないのでは、周辺の農家は納得しない。
納得させるためにも、モニタリング措置を行う必要がある。
農家の立場を考えると、指針案の内容で仕方がないのではないか。
資料案の形でいいのではないかと思う。
(委員)
学問的なバックグラウンドがはっきりしていない中で、資料案の形で調整しておいてもらった方がよい。
(委員)
1年では無理であったとしても、3年たてば生産者や消費者にも周知されてくると思う。
将来、指針の見直しも必要になってくるのではないか。
(事務局)
社会的な認識が変われば、そのときは見直したい。
また、指針を機能させていくためには、必要に応じて見直しをしていかなければならないと考えている。
そのため、この検討会は存続させ、必要に応じて集まり、議論願いたい。
(座長)
その他、全体的なことで何かございませんか。
(委員)
例えば市街地で周りに田んぼがないところで栽培する場合に、どこまでモニタリング措置をしなければならないのか。
(事務局)
モニタリング措置の目的は、周辺農家の不安を取り除くということに焦点を置いて考えていきたい。
周囲に作物も何もないところで、交雑が懸念されなければ、モニタリング措置の対象から除外してもよいと考えている。
(委員)
本日の議論により、研究者として、どうすれば農家に迷惑をかけないか見通しが立ったように思う。
(委員)
モニタリングに関して、指標作物によって交雑率を0.006パーセントと0.010パーセントとに分けているが、花粉の散布源からどれだけ離れているか、花粉源の数量はどれぐらいかに関係しているのではないか。
(事務局)
そのようなことも考慮して、安全率を2倍としている。
(委員)
作付面積が大きければ、花粉の量も多くなり、それだけ交雑しやすくなるのではないか。
(委員)
距離依存なので、花粉の量が多いからどうということはない。
ただ品種が異なれば交雑の割合に違いがでてくるかもしれないが、そこまで考えなくてもよいのではないか。
(委員)
交雑にはいろいろな要因がある。
散布源での生産量が多いものは、花粉が多くなる。
また、イネの花粉は大きいので飛びにくいが、野生のものはよく飛ぶ。
花粉が小さくなれば、飛ぶ距離も長くなり、指針も見直していかなければならないのではないか。
(委員)
交雑率を低くする方法はいくつもある。
こういう作り方をすることにより、花粉は飛ばない、交雑率は低くなるという例を示せればよい。
アメリカでは、近縁野生種のある作物については厳しい傾向のガイドラインをつくっている。
データを示した上で、交雑率が低くなる方法を考えていくのがよい。
(委員)
資料4に記載のPCR法による分析費用は、種子を分析する場合か。
(事務局)
そのとおりであり、種子の粉砕費用も入っている。
(委員)
この費用を出して検査することができるような農家の収入レベルはどの程度か。
(委員)
現在の米価からすれば、費用を出してペイできるのは相当規模の大きい栽培者である。
実験的に栽培するのであれば、当初は損得抜きとも考えられるが、モニタリングにおける分析費用としては、やはり10万円でできることが一つの限度かなと思っている。100万円かかるとなると最初から障壁となってしまう。
(座長)
イネなどで連作する場合に、モニタリングを毎回行う必要があるかについて議論頂いたが、周辺の農家の安心感を得るためには、毎回行う必要があるとの結論である。
また、市街地などつまり周りに交雑する可能性がある作物がなく、しかも小規模に栽培する場合についての議論があったが、交雑防止が目的であることから、周囲に作物も何もないところで、交雑が懸念されなければ、モニタリング措置の対象から除外していいのではないかとの整理である。
なお、技術の進歩に応じて指針は見直さなければならないとの整理である。
その他何か御意見がありますか。
(委員)
指針(案)2の(1)の表で、西洋ナタネの交雑可能性のある野生植物に、ダイコン属も入れる必要がある。
(座長)
いままでの御意見を踏まえ、混入防止措置・モニタリング措置について、このような形で取りまとめるこことしてよろしいか。
(座長)
ご了承いただき、有り難うございます。
頂いた御意見をもとに、最終の案は、私と事務局で詰めることとしてよろしいでしょうか。
その上で、最終の指針案を皆様に、メールになるかと思いますが御報告させて頂きます。
その他に、何か事務局から報告等あればお願いします。
(事務局)
指針案を取りまとめた後に、府民の意見を募集し、指針を策定する旨説明。
以上
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