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トップページ府民だよりトップ2026年5月号特集1 ZET-summit2026 特別対談 「面白さ」から始まるイノベーション

特集1ZET-summit2026 特別対談
「面白さ」から始まるイノベーション

国内外の脱炭素テクノロジー関係者が一堂に会し、新たな交流と共創を生む国際カンファレンス「ZET-summit 2026」にて、昨年12月にノーベル化学賞を受賞された北川進氏と西脇知事の特別対談を行いました。

京都府知事
西脇 隆俊

京都市出身。東京大学法学部を卒業し、建設省(現・国土交通省)に入省。2016年より復興庁事務次官。18年、第51代京都府知事に就任し、現在3期目。「子育て環境日本一」の実現を掲げ、全ての人が暮らしやすい京都の実現を目指す。座右の銘は「雲外蒼天」。

京都初の発想が地球の危機を救うかもしれない

京都大学理事・副学長、高等研究院特別教授
北川 進

京都市出身。京都大学工学部卒。1979年京都大学大学院博士課程修了、工学博士。近畿大学助教授、東京都立大学教授を経て、98年京都大学教授、2013年京都大学アイセムス拠点長、17年京都大学特別教授、24年より現職。25年、多孔性金属錯体(MOF)の開発でノーベル化学賞を受賞。座右の銘は「無用の用」。

「無用の用」に挑んでいくことでブレイクスルーが起こる

天気をコントロールしたい!
そんな少年時代の夢が科学者への第一歩に

西脇このたびはノーベル化学賞の受賞、誠におめでとうございます。北川先生は、私と同じく下京区のご出身と伺っております。ご幼少の頃は時計やラジオを分解するのがお好きだったそうですが、化学者の道へ進むきっかけは何だったのでしょうか。

北川小学生の頃、遠足や運動会が雨で中止になるのが本当に嫌だったんです。それで「将来は天気をコントロールする機械を開発したい」と思ったのが、化学者への憧れの第一歩でした。今も、大気に興味を持って研究を進めているので、もしかしたら子どもの頃の興味がずっと私の中に生き続けているのかもしれません。

西脇今おっしゃったご研究が、まさにノーベル賞受賞につながった「MOF(多孔性金属錯体)」なんですね。改めて、MOFがどういうものなのか教えていただけますか?

北川簡単にいうとナノ(10億分の1)メートルサイズの極小の穴が規則正しく並んだ構造体で、穴の形を変えることでさまざまな気体を選択的に分離・吸着・貯蔵したり、必要な時に取り出したりすることができます。例えば空気中から窒素や二酸化炭素などを取り出して有用な資源に変換することも可能です。他にも、触媒やセンシングなど多様な機能を秘めていて、現在、世界各国で多数のスタートアップがMOFを活用したイノベーションに挑んでいます。

西脇なるほど。温室効果ガス削減をはじめ、あらゆる社会課題を解決しうるディープテックの最たるものですね。府では、今後の京都産業を支える柱がまさにディープテックだと考えていて、その一つがゼロカーボンのものづくりによるまちづくりを目指した「ZET-valley(ゼットバレー)構想」です。MOFのような最先端の知見を社会実装していくためには、アカデミアとスタートアップの連携が不可欠です。

北川おっしゃる通り。アカデミアが開発した技術に対し、企業が量産化とコストダウンを担い、そこで出た諸課題を我々が解決する。この連携で、研究と実用化を加速度的に進めることができます。ただ、イノベーションのコアとなるような学術が育つには少なくとも10年は必要です。行政や企業の皆さんには成果を急がず、どうか長い時間軸で見てサポートいただきたい。我々のアイデアを、できれば日本で実現したいですから。

2025年12月10日、ノーベル化学賞の授賞式でスウェーデン国王(右)と握手を交わす北川氏
((Copyright) Nobel Prize Outreach. Photo:Nanaka Adachi)

新たな発想を生む「場」のチカラ

西脇昨年、京都では3回目となる国際スタートアップ・カンファレンス「IVS」を開催し、若手起業家や研究者、投資家など1万人以上にご参加いただきました。大会場でのメインイベント以外に、街中の飲食店などを会場に500以上のサイドイベントが行われて大盛況だったのですが、こんなふうに集まれる「場」が街中に多くあるのも京都のイノベーションに一役買っているように思っています。

北川いいですね。それも京都の強みの一つですよ。新しい発想を得るには、やはり面と向かって相手が何を考えているか肌感覚で分かるような議論ができる「場」が必要です。私も企業の若手の方とあれこれ話すのが大好きでしてね。彼らの素朴な疑問が新たな発見につながることも意外と多いんです。

西脇まさに場の力といいますか、そこでのコミュニケーションとネットワークが新しい知を生むのですね。

北川日本がここまで伸びてこられた理由の一つは、1億2千万人もの人がいたからです。我々の学術分野は化学と一口に言っても、無機や有機などいろんな分野があり、そのいずれにも日本には大家というべき人物がいます。これがもし半分の人口だったら、日本の学術も、それを背景にした科学技術もここまで伸びていなかった。だから学術においても人口は非常に重要なんです。若い人を伸ばしていく。これを行政と協力してやっていく必要があります。若者、ベテラン、外国人、いろんな人が集まって町が活気づくことで、新しいアイデアが生まれ、世界に通用する学術が出るんです。

西脇研究開発においても、人口が一つの底力なんですね。そのお考えに改めてハッとさせられました。

オープンマインドで「面白い」を追求しよう

西脇若い世代の力を育てる重要性は常々感じていて、特に京都は大学生や研究機関が集まる「大学のまち」として人材育成に取り組んでいます。ぜひ、未来を担う世代に向けて、先生のご発想の源泉を教えてください。

北川私は若い頃、湯川秀樹先生の著書『天才の世界』に引用されていた荘子の「無用之(の)用」という言葉に大きな示唆を受けました。有用なものとは、すでに役に立つと分かっているもの。つまりフォロワーの発想です。ところが無用の方は誰もその重要性を知りません。そこに挑んでいくことで、ブレイクスルーが起こると。

西脇予測不能で不安定な時代だからこそ、発想の転換が必要。そのための示唆を与えてくれる言葉ですね。

北川MOFも最初に発表した時、「何の役に立つのか」と言われました。若い皆さんには自分が「面白い」と感じたことを、オープンマインドで追求していただきたいですね。徹底的に!

西脇地球の危機を救うかもしれない、そんな人材や技術を京都から育てていけるよう、私たちも柔軟な発想で取り組んでまいります。本日は誠にありがとうございました。

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