京都府児童虐待防止強化対策検討会(第5回)
「京都府子どもを虐待から守る条例(仮称)」骨子案のパブリックコメント結果を報告し、条例案及び新たな施策案について検討しました。
開催日時
令和4年1月31日(月曜日)午後1時30分から3時15分
場所
オンライン
出席者
【委員】
- 津崎 哲郎 NPO法人児童虐待防止協会 理事長
- 三林 真弓 京都文教大学臨床心理学部 教授
- 上野 昌江 関西医科大学看護学部 教授
- 安保 千秋 京都弁護士会
- 松田 義和 京都府医師会 理事
- 小島 みどり 舞鶴市立三笠小学校 校長
- 奥村 久夫 向日市立勝山中学校 校長
- 小林 新一 京都府警察本部生活安全部少年課 児童虐待対策官兼少年サポートセンター所長
- 桝田 悟司 京田辺市健康福祉部 子育て支援課長
- 和田 敬司 久御山町民生部 子育て支援課長
【専門委員】
- 河野 亘 京都府歯科医師会 理事(学校歯科担当)
- 櫛田 恵里子 峰山乳児院 施設長
- 浦田 雅夫 大阪成蹊大学教育学部 教授、アフターケアの会メヌエット
- 周藤 由美子 ウィメンス゛カウンセリンク゛京都 フェミニストカウンセラー
【京都府】
健康福祉部副部長、家庭支援課長、各児童相談所長ほか
開催結果の概要
議事
条例案、新たな施策案及びパブリックコメント結果の報告
主な意見
虐待の未然防止
- コロナ禍で保護者の育児環境が悪化しており、育児環境の改善など虐待の未然防止のために何らかの手立てが必要。
- 親になる手前の若い人たちに対し、親になることはどういうことか、また、親になって次世代を育てていく喜びが伝わる条例になればよい。
- 親になるためには、技術が必要であり、その技術を修得できるような場があればよい。
- 妊娠中は、母子手帳の活用が大事。母子手帳の内容を工夫し、親としての責務や虐待に繋がらない子育てに関する記載があれば、理解を深めることができるのではないか。
- 身体が大切だということをきちんと教わらないままに思春期を迎える子どもが多い。単なる避妊教育だけではなく、性教育を包括的に捉え、幼少期から、身体は大切だという教育を様々なところで取り組んでいくことが大事。
虐待の早期発見・早期対応
- 性暴力被害者ワンストップ相談支援センターの設置には根拠法がなく、現状では情報共有や連携は手探り状態であることから、京都府の条例に関係機関として盛り込まれることは心強い。
- 警察では、被害者への対応が18歳を境に変わるということは特にない。18歳未満の少年であれば児童相談所等と連携し、成人であれば家庭支援総合センターと連携する。
- コロナ禍で、長期にわたり学校を休む児童や生徒がおり、保護者も苛立っている場合がある。学校はタブレットで担任が児童等とつながることにより、異変がないか気をつけて確認しており、場合によっては保護者の精神的サポートも行っている。しかし、各学校がそれぞれ苦慮しながら手探りで行っている状況であり、共通のサポートシステムがあるとよい。
- 多くの人は「虐待をしてはならない」というと、「手をあげてはならない」「暴言を吐いてはならない」ということは分かるが、「無関心」であることが虐待となることには気づかない。この「無関心」をどのように変えていくのかが重要である。
- 今後、コロナ禍において新たな虐待事例が出てくる可能性があり、そういった事例にも対応できるような条例としていただきたい。
虐待を受けた子どもに対する支援
- 虐待を受けた子どもは、自分が悪いと思い自己肯定感が低くなっている場合がある。学校では、現在、それに対する教育プログラムがなく、各学校が独自に実施している状況。そのような教育プログラムがあれば、自分がされたことがおかしいと子ども自身が気づき、学校に相談することができるようになる。
- 虐待はトラウマを引き起こす可能性があり、支援者はトラウマがどういうものかを理解した上で支援する必要があることから、トラウマインフォームドケアを取り入れていただきたい。
- 市町村は施設入所や里親委託に至るまでの日常の支援や見守りを中心に行っているが、例えば病院に受診させない親や、自分が悪いとは思っていない親への教育等、理解を促す施策があればよい。
- 子どもの権利擁護として、子どもの意見を聞くことは、技術が必要であることから、子どもの意見を聞くアドボケイターの養成が不可欠。
虐待の再発防止
- コロナ禍で生まれた子どもは、子育てサロンに行く等の外部との交流が制限され、発達面への影響が気がかりである。保護者の育児不安も高まっているのではないかと思われ、保護者に対して育児不安を軽減するような支援や、子どもの発育発達をしっかり保障できるような支援が必要。
- 再発防止について、北欧では、いじめやDV加害者側を再教育する方向に進んでいる。保護者が変わらなければ、また虐待が繰り返される。保護者を再教育するプログラムに力を入れることが必要。
- 加害者へのカウンセリングを行うと、加害者にも被虐待歴がある場合があり、世代間で連鎖している。世代間での連鎖を断ち切るためにも、社会全体を見渡した未然防止の取組がさらに必要。
- 親へのカウンセリング等、支援が必要なケースに対して強制力をもって支援していくことは難しい。どうやったら支援を受けてもらえるのかを考えていくことが課題となっている。
社会的養護による子どもの自立支援
- ネグレクト等で施設に入所してきた子どもは、全国を転々としている場合が多く、また、一時保護された場合は学校に通えず、学習の遅れが顕著である。学習保障のための人員配置をしっかりするべき。
- 「自立に向けた継続的支援」は、施設を退所する子どもを対象としているが、相談現場では18歳を超えてやっと相談ができたという方がいる。また、性的虐待は長い期間にわたっての支援が必要であり、成人後も継続的な支援に繋げる等のネットワークづくりなどが必要。
- 児童福祉法の改正に伴って18歳での原則措置解除がなくなっていくと考えられる中、社会的養護自立支援事業の活用がこれまで以上に重要となってくる。社会的養護自立支援事業は、国庫補助事業であり、京都府においても国が提示する全メニューを実施すべき。特に退所してからの様々なトラブルに対して、弁護士への相談やサポートを受けられる施策が必要。
- 自立支援担当職員については、専従の自立支援担当職員を各施設へも配置すべき。
- 自立支援については広域となるため、各地に児童家庭支援センターを増設し、地域の方々とともに退所後のサポートを行う体制が望ましい。
- 里親委託解除後の支援については、里親支援専門相談員を各施設へ配置するほか、フォスタリング機関の設置や自立をサポートする総合的な取組が必要。
支援体制の機能強化
- 「児童相談所の運営体制の強化」について、必要な一時保護を積極的に行っていくには一時保護所の充実が不可欠。
- 予算案では、児童福祉司の増員とあるが、やはり人員的には不足していると思うので、さらに拡充されるべき。
- 条例制定を契機とした施策の展開について、スムーズに進められていくことを期待している。