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7 海洋センターのズワイガニ調査(応用編)

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 ズワイガニは底曳網の重要な漁業資源であることは言うまでもありませんが、京都府北部の丹後では観光資源としてもたいへん重要な存在となっています。
 海洋センターでは、漁業・観光資源として重要なズワイガニの資源生態調査を行っています。ここでは、当センターのズワイガニに関する種々の調査の内容を紹介します。

1 ズワイガニ調査で活躍する海洋調査船「平安丸」

 海洋センターのズワイガニ調査の中で最も重要な役割を担っているのが、海洋調査船「平安丸」です。現在、活躍する平安丸は4代目として2023年1月に竣工しました。全長43.1 m、総トン数191トン、航海速力13.8ノット(時速約25 km)で、海底の詳細な地形を調べる海底地形探査装置や自船の周りを広範囲に魚群探索できる全周スキャニングソナーなど最新鋭の調査観測機器を搭載しています。

 また、遠隔操作で水深500 mの海底まで潜航することができる自走式水中ビデオシステム(ROV)は、ズワイガニをはじめ、深海に生息する様々な生物の生態をリアルタイムで観察することができます。

 平安丸によるズワイガニの資源生態調査としては、「カニ篭調査」と「桁曳網調査」が主体となっており、毎年定期的に行っています。

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海洋調査船「平安丸」(191トン)

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水深500mまで潜航できる「自走式水中ビデオシステム(ROV)」

2 エサを使ってズワイガニを捕獲する「カニ篭調査」

 プリン型をした「カニ篭」の中にエサとなる冷凍サバ5~6尾を吊り下げ、海底に沈めます。1回の調査で使う篭の数は50個で、長さ約5,000 mのロープに100 m間隔で取付けます。「カニ篭」の浸漬時間は約8時間で、多くの場合は篭を回収するのは夜間の作業となります。採捕したズワイガニは篭ごとに、オスでは甲羅とハサミの大きさを測定します。最終脱皮に至っていないオスは、第2小顎という器官を採取、実験室に持ち帰り、顕微鏡で脱皮ステージを調べます。メスは甲羅の測定と腹部の卵の有無、卵の発生状況(色)などを調べます。最後に標識票を取付け、その場で速やかに放流します。

 毎年、8月下旬から10月上旬にかけては、京都府沖合の水深約230~300 mの広い範囲で、延約300個の篭を使ってズワイガニの分布や資源状況を調べています。この調査結果は、ズワイガニの解禁日までに底曳網漁業者の皆さんに報告するとともに、得られたデータは日本海西部のズワイガニの現存量推定を行う水産研究所(国立研究開発法人 水産研究・教育機構)にも提供しています。

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カニ篭(底面の直径130cm、高さ43cm)。カニは上面の赤い口から入る。

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カニ篭の引揚げ作業(夜間)

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ズワイガニの測定

網を曳いてズワイガニを採捕する「桁曳網調査」

 平安丸が使う桁曳網は、幅約8.5 mの桁枠(鉄製)に、網口の幅が約8.5 m、高さ1.7 m、長さ約30 mの網を取付けたものになります。桁枠の両端にの下部には、漁具が滑らかに海底を移動するように、「ソリ」が付いています。

 この桁曳網を左右2本のワイヤーで海底まで降ろし、約2ノット(時速約4 km)のゆっくりとした速さで30分間曳きます。

 桁曳網には、ズワイガニをはじめ、カレイ類、ハタハタ、エビ類やヒトデ類など様々な生物が入ってきます。このことから、桁曳網はズワイガニの調査だけではなく、アカガレイ、ヤナギムシガレイ(ササガレイ)、アカムツ(ノドグロ)などの資源生態調査にも活用します。

 また、桁曳網ではカニ篭で採捕できない甲幅1 cmに満たない稚ガニを獲ることが可能なため、ズワイガニの長期的な資源量の変動などの予測ができます。

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桁曳網の投入作業

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桁曳網の揚網作業

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採集物の選別

4 水槽飼育による生態調査

 ズワイガニの脱皮や交尾、産卵などの生態を調べる有力な方法として、水槽での飼育実験があります。1ズワイガニってどんなカニ? Q10で述べましたが、深い海の底に生息するズワイガニですが、水圧差は全く心配する必要はありません。水温を0~3℃程度に設定できれば、水槽で飼育することがでます。海洋センターでは隣接の国立研究開発法人 水産研究・教育機構 宮津庁舎と共同で、ズワイガニの飼育実験を行っています。

 最終脱皮前のオスやメスを長期間飼育し、脱皮が近づくと甲羅や脚などの体色の変化がみられるなど、新しい知見を得ています。

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脱皮が始まったオス

 

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脱皮直後のオス(右)と脱皮殻(左)

5 水揚市場でオスの甲羅の大きさを測定

 調査船によるカニ篭や桁曳網調査などに加えて、カニ漁期中に底曳網で獲られるズワイガニの大きさなどを調べることもたいへん重要です。

 海洋センターでは、毎年、水揚市場に出向きタテガニやモモガニの甲羅の測定を行っています。併せて、現在は自主規制により漁獲が禁止されている水ガニについては、最終脱皮率などを推定する際に重要なデータとなることから、漁業者の方から入網した水ガニの一部を入手し、甲羅やハサミの測定を行っています。

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水揚げ市場での「オス」の甲幅測定

6 その他の調査

 海洋センターでは、その他にも底曳網漁業者の皆さんに「操業日誌」を記帳してもらい、それを整理、解析しています。「操業日誌」には、網を曳いた場所(緯度経度と水深で表示)やその網で獲れたズワイガニの数などが、操業ごとに書けるようになっています。また、併せて市場ごとの日別の水揚げ量などを調べています。
 これらにより、京都府沖合での底曳網の漁業実態を把握することができますし、ズワイガニの資源状況などを調べる材料となります。
 また、ズワイガニの漁期中には、底曳網漁業者の皆さんから標識を付けたカニの再捕報告が、海洋センターにたくさん届きます。これらもズワイガニの移動や生残り率などを推定する際には、たいへん貴重な資料となります。


 海洋センターでは、以上述べたような種々の調査を行い、京都のズワイガニについての試験研究を続けています。この「ズワイガニの生態と漁業―冬の日本海の味覚「ズワイガニ」」で紹介した内容も、これらの調査で分かったことを中心に編集しました。
 ズワイガニの資源生態については、これまでの調査でかなりのことが分かってきましたが、深い海の底に暮らす生き物だけに、まだ十分には分かっていないことも少なくありません。海洋センターでは、今後も丹後のズワイガニと種々の調査をとおして付き合っていきたいと思います。

 

お問い合わせ

農林水産部海洋センター

宮津市字小田宿野1029ー3

ファックス:0772-25-1532

ngc-kaiyo@pref.kyoto.lg.jp