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日本の茶産地には古くから種子で繁殖してきた在来種が栽培されており、その地方の気象条件や栽培様式によって独特の形質を示すことが多いといわれています。
宇治地方の在来種は宇治在来種と呼ばれ、丸葉で葉肉が厚いのが特徴といわれています。これまでに宇治在来種から選抜された優良品種は数多く、極めて重要な育種素材です。
2000年までに育成された66の緑茶用品種の来歴をたどると、宇治在来種と静岡在来種に由来するものがそれぞれ約3割となっています。
‘やぶきた’を交配親として育成された品種の多い静岡在来種に比べ、宇治在来種は直接選抜された品種が多く、豊富な遺伝子給源となっているのが特徴です。
宇治在来種は、わが国の茶の育種に大きな影響を与えてきましたが、近年、宇治在来種の分布地域では、農地の宅地化や優良品種化によって、在来種の数が急速に減少しています。
特に、歴史的に古い在来種茶園が集中している宇治市では、1960年当時150ヘクタール近くあった面積が2000年には約20ヘクタールにまで漸減してきており、その消失が危惧されています。
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