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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。
(掲載日:令和元年7月30日、ものづくり振興課 足利)
大京食品株式会社(外部リンク)(京都市南区)による「ふしみ美人(外部リンク)」ブランドの新商品「京の味つけ 絹いなり(外部リンク)」
(掲載日:令和元年5月7日、聞き手・文:ものづくり振興課 丸山、足利)
大京食品株式会社(外部リンク)(京都市南区)の大澤幹也代表取締役様にお話をおうかがいしました。
-事業の概要を教えてください。
大澤) 1988年創業、現在パートを含め約70人規模で、業務用、すなわち、食品メーカー様や外食産業向けに、いなり寿司やうどん等に用いられる「味つけ油揚げ」、巻きずし等に用いられる「味つけかんぴょう」などの製造・販売を行っています。元々は染屋だったのですがが、産業の衰退の影響を受け、食品業界へ参入しました。染屋は工場もボイラーもあるため、食品製造へ転換するには好都合だったんです。たまたま、手を組んだのが、おあげの業界でした。
-しかし、今、国内の人口は減少していますね。
大澤)たしかに、国内向けだけで言えば、売上はどうしても下がってしまいますが、当社は輸出もしていますので、おかげさまで全体として売上は伸びています。輸出が売上割合の4割ほどを占めていますね。
-おあげなどを輸出されてらっしゃるのですか?!どういった国ですか?
大澤)東南アジアから、オセアニア、欧州、アメリカなど、かなり広範にわたりますよ。特にアジアはすごいですね。台湾では200店舗以上ある回転寿司チェーンで採用されていますし、韓国でも有名な大手小売チェーンで取り扱っていただいていたり、取扱規模も大きいですね。
-そうなんですね。輸出はいつからですか?日本食ブームから?
大澤)いや、もっと前ですね。今から23年前です。知り合いの異商材を扱う企業さんと意気投合し、輸出コンテナの余白に商品を入れてもらうようになったのがきっかけでして、この業界で最初に輸出した企業だと思います。日本では「いなり」と言えば寿司屋のサブメニューあるいは惣菜というイメージですが、海外では「INARI」として寿司ネタの一つとなっています。海外でウケる理由は、まず1つは、豆腐であること。「豆腐」という原材料はヘルシーなイメージが定着しています。海外では健康志向が強まり、ヘルシー食材である豆腐の注目度は高いです。
-豆腐は、ヒラリー・クリントンさんがきっかけで、健康によいものだということで、アメリカで一気に広がったと言いますものね。
大澤)はい。そして、加熱商品であること。魚の生食文化がなかった外国圏には、生の刺身を乗せた寿司以上に加熱済みのメニューは親しみやすいということがあります。3つ目として、動物性食品でないこと。世界人口の一定割合を占めるベジタリアンにとって、100%植物性のたんぱく源として、大豆は肉と同様の存在です。
-なるほど。
大澤)そして、甘辛い味付け。日本食でもすき焼きが外国人に人気であることからもわかるように、「砂糖と醤油」という甘辛さを演出する味付けは好まれます。
-じゃあ、TPPは?
大澤)大歓迎ですね。仕入れにかかる大豆はアメリカ産等ですし、販売の一部もTPP圏内ですからね。FCL(Full Container Load)によって40フィート×2回/月の頻度でコンテナを出しています。
-このFSSC22000の認定書は珍しいですね。HACCP、ISO22000を包含し、より細かな取組が必要だと聞きます。
大澤)そうですね。Food Safety System Certificationの略ですね。ISO 22000をベースにより確実な食品安全管理を実践するための国際マネジメントシステム規格で、国内で取得しているところは多くありません。アメリカの食品医療局(FDA)の直接査察にも対応可能です。
-そうなんですね!
大澤)輸出を手がけていますから、国際競争力、安全衛生の観点からも、積極的に取り組んでいます。
-販路、安全衛生についてはよくわかりました。では、商品そのものの特徴はどうでしょうか?
大澤)「シンプル&ナチュラル」にこだわっていまして、まず1つ目は、保存料や調味添加物を一切使用していないこと。2つ目に、真昆布、鰹節から煮出した本物の出汁を使っていること。
-本物の出汁ですか。国内販売では分かるのですが、海外の方には、それは伝わるのですか?
大澤)はい、わかっていただいていますし、最近では海外輸出業者にもこうした「こだわり」を伝えるようにしています。実際、価格の面で大きな取引先が他社に乗り換えたこともありましたが、消費者は、やっぱり味の違いが分かるんですよね。結局売り上げが下がったとのことで当社に戻ってこられました。「取引先がお客様ではなく、召し上がってくださる相手がお客様」だと捉えています。
-素晴らしいですね!同業他社はどれくらいいらっしゃるのですか?
大澤)お豆腐屋さんでおあげも作ってらっしゃるところが多いですが、専業で味つけ油揚げを作っているところとなると、大手が数社、あとは当社のような規模のところで、国内でも数十社です。
-生産工程を教えてください。
大澤)まず、大豆浸漬・摩砕・煮沸です。乾燥した大豆を一晩真水に浸漬した後、石臼にて摩砕しペースト状にして、丸型圧力煮釜により炊き込みます。次に、分離・豆乳凝固・成型です。炊き込まれたペースト状の大豆摩砕物をオカラと豆乳に分離し、豆乳に「にがり」を加えて凝固させ一枚の大きな平板状の豆腐に成型し、一定のサイズに裁断して油揚げ生地を作ります。
-そうなんですね。
大澤) 続いて油揚げ生地をフライヤーにて揚げます。低温、中温、高温と、ゆっくり約20分かけてふっくらと柔らかくフライします。そして、袋詰めした後、調味液を充填し真空調理します。レトルト殺菌機を用いて加熱調理と殺菌を同時に行います。
-こうした一貫生産を、みなさんなさっているものなんですか?
大澤)いえ、この規模で一貫生産は珍しいです。数年前、仕入先の廃業に伴い、大豆ペーストを作るところから全て行うようになりました。内製化により価格を抑えることができますね。
-素晴らしいですね。最後に今後の展望についてはいかがでしょう。
大澤)国内マーケットが縮小しているという前提で考えますと、今まで設備投資をかなりしてきましたので、規模拡大よりはむしろM&Aや輸出拡大などを図っていきたいです。
-なるほど。
大澤)もう1つは、価格を抑える努力をしてきましたけれども、付加価値を上げるということも重要だと考えていまして、今、伏見近辺の企業さんらで進めている「ふしみ美人(外部リンク)」プロジェクトを、ぜひ頑張って取り組んでいきたいと思っています。
今後の展開に目が離せません!
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