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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成29年1月31日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社アンデ(京都市伏見区)の有賀代表取締役様と商品企画担当の石川様にお話をおうかがいしました。
―まず、事業の概要から教えてください。
有賀) 従業員45名で「デニッシュ食パン」にほぼ特化して製造を行っています。一般の小麦粉とは異なる上質の小麦粉を使い、保存料も使用していません。卸販売とネット販売がメインで、工場併設の直売所でも販売しています。おかげさまで多くのお客様にリピートしていただくなどご好評をいただいております。
―デニッシュ食パンに特化ですか。
有賀) はい。その中で様々なラインナップがありますが、生地は1日1種類ずつしか作りません。1種類の生地づくりに6時間かけて生地を捏ねてのばして、寝かせて、マーガリンを折り込んで、5℃まで冷やして寝かせて、また生地を捏ねてのばして・・・、というように、じっくりと丁寧に、繰り返して「64層」を形づくります。この層の重なりが、デニッシュの食感の命であり、当社が辿り着いた「答」です。
―どうしてそこまで丁寧に作られるのですか?
有賀) パンづくりは、生地をこね、こねた生地を発酵させ、発酵により生まれた炭酸ガスや有機酸等で、生地をふくらませ、風味を生み出したりしますから、発酵は大変重要な工程です。そして、発酵にはパン酵母が欠かせません。酵母は生きていますから、気持ちを集中させ、丁寧に酵母と向き合ってパンづくりをしようということです。
―なるほど。酵母と言えば、今回、「京都大文字山酵母」を使用したソフト食パンを開発されましたね。
有賀) はい。一般に使われているパン酵母であるイースト菌ではなく、「京都大文字山酵母」を使っています。これは、大文字山に自生しているクヌギの木の樹液から採取し、龍谷大学農学部研究室で何億何兆の菌株の中からパンを作るのに適した酵母として単体分離したものです。当社の研究室でパンの試作を繰り返し、優れた発酵力を持ち、酸味や雑味がなくスッキリとした味わいで、いつまで経っても柔らかく美味しい食パンができる酵母を選びました。
―しかし、「天然酵母」というのは他でも聞きますよね。
有賀) 100%天然酵母だけというのは、当社が初めてです。他の天然酵母では、何か補うものが必要であったり、オーバーナイトの発酵時間を要するので工場で大量生産するのに向いていなかったりします。
―なるほど。イースト菌を使ったパンとの比較で言えば、どういった点が強みでしょうか?
有賀) まず1つは、イースト菌の雑味がなく、風味が良くて、しっとりもっちり、おいしいのです。そして2つ目に、これまでにはない様々な味や風味、機能を持たせたパンを作ることができます。
―どういうことですか?
有賀) 例えば、以前、出汁入り、抹茶入りのパンを作ろうとしましたが、これまでの酵母ですと、出汁、抹茶のようにパン本来の材料以外のものが混ざるとうまく発酵しないことが多かったのです。糖分も浸透圧が高まって発酵力が落ちたりします。しかし、「京都大文字山酵母」は、自然界の夏の灼熱の暑さ、冬の極寒の中を生き抜いてきた「野生」の酵母であるが故の秘めたる潜在能力を持ち合わせており、ストレスに強いのです。これまででは混ぜたらパンが膨らまなかったようなものでも、この酵母であれば膨らむことが可能になったりするわけです。
―なるほど。
有賀) そこで、例えば、京都らしい素材を使って京都の名産品やお土産となるようなパンですとか、整腸作用、血糖値抑制作用、中性脂肪抑制作用などがあると言われている難消化性食物繊維、デキストリンを使ったパンですとか、工業的に遺伝子を組み換えたイースト菌ではなく野生のものである点を活かして、ハラール認証食品を目指すなど、これまでにない新しいパンを作っていくことができるのです。
―素晴らしい。そして、強みの3つ目は?
石川) 長期保存が利くということですね。賞味期限は30日です。
―それはとてもありがたいですね!普通、パンの賞味期限は短いですからね。しかし、保存料を使用していないのに、どうして賞味期限が長いのですか?
石川) まず、当社のデニッシュパンを包装しているフィルムを非常に丈夫なものとしています。
―あっ、たしかに。頑丈ですね。
石川) 一緒に鮮度保持剤を入れ、袋の中の酸素濃度を非常に薄い状態にして、カビの発生を抑えています。
―なるほど。
石川) 加えて、「京都大文字山酵母」ソフト食パンの場合は、野生酵母のたくましさで、生地の柔らかさが長く持続するためです。
―さて、そもそも御社はどうしてデニッシュパン限定だったのですか?
有賀) 飲み屋街のお土産用のパンとして創業したのです。祇園の花見小路、大阪の北新地、名古屋の栄町等に複数お店を出していました。
―「アンデ」という社名の由来は?
有賀) デニッシュパンを64層の折り込み、編み込みを作っていくイメージです。パンも人生も編み込んでいきたいですね。私は料理を作るのが好き、新商品を開発するのも好き、ものを作るのも好き、お店を出すのも好き、パッケージを考えるのも好きです。しかし、それらにどうしても欠かせないのはスタッフです。「人」が大事です。スタッフにも「家族第一」でいてもらいたいと思っています。ですので、活力ある人づくりをいつも意識しています。
―今後の展望はいかがでしょうか?
有賀) 1つは、国内のドライイーストの95%以上が海外製ですが、「京都大文字山酵母」はたくましく、乾燥にも強いので、ドライイーストができればと素晴らしいと思っています。
―いいですね!
有賀) そして「京都」に恩返ししたいですね。「京都」は難しいですよねとおっしゃる方もいらっしゃいますけれど、そんなことはありませんし、地方に営業に行くと「京都」と言うだけで、話を聞いてもらいやすいですし、「京都」に助けられているところがたくさんありますから。
新しい事業展開の数々、大変楽しみです。
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