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人権口コミ講座 153

水平社宣言から100年
水平社が求めた社会はどこまで実現したか

(公益財団法人)世界人権問題研究センター 研究員

手島 一雄

水平社宣言が出される前提

部落差別からの解放を掲げ、全国水平社が結成(1922年3月)されて、昨年は100周年でした。創立大会で決議された「宣言」は、今読んでなお私たちの心に響きます。それは宣言が、人間の尊厳ということに深く切り込んでいるからでしょう。

1871(明治4)年の解放令によって、身分・職業が「平民同様」とされましたが、同時に死牛馬(しぎゅうば)の無償取得権や下級警察役を失ったことで被差別部落の貧困化が進みます。世間はそれを血筋が劣っているからだと捉えました。そうした中、一般社会に追いつこうとする部落改善運動や、社会の側からは「同情してやろう」とする同情融和運動が展開します。

「人間を尊敬すること」

水平社宣言は、それらの運動は人を価値序列的に見るものだと批判し、我らは「人間を尊敬する事」による運動を起こすと唱えました。人として尊重し合う、そういう精神が今の日本社会にどれだけ根付いているでしょうか。「役に立たない人は要らない」「子どもを産まない者は生産性がない」など、人を序列的に裁断する風潮が強まっています。また宣言は、「吾々(われわれ)の祖先は自由、平等の渇仰者(かつごうしゃ)であり、実行者であった」と述べ、生まれを卑下(ひげ)する姿勢を戒めました。自己肯定感の大切さ。今日、「いじめ」やSNS上での誹謗(ひぼう)中傷の背景には、自己肯定感の喪失による鬱憤(うっぷん)晴らしがあると言われています。

宣言は、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結びました。100年前というより、今の私たちに問いかけるような文章だと感じています。

◎令和5年1月発行の「人権口コミ講座24」の内容を加筆・修正し、再掲載しています

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