ここから本文です。
潜水調査をしていると、遠くから、四角い物体がゆっくり近づいてきます。よく見ると、小さな鰭を小刻みに動かして泳いでいるハコフグでした。その名の通り箱のような体型に、前に突き出たおちょぼ口。とても愛嬌のある容姿です。
身を守るために、鱗が変形した固い甲羅のような皮で体全体が覆われています。その代わり、体を曲げたり、くねらせたりすることができないため、速く泳いだり、急に方向を変えることができません。 体内に毒はないものの、皮膚に粘液性の毒を持ち、刺激を受けると体外に分泌します。最近は、観賞魚としても人気がありますが、他の魚と一緒に飼育していると、ハコフグの毒で全滅することもあるそうです。
他のフグと同様に、調理には免許が必要なため、食べる機会は少ないですが、その味は絶品だとか。お腹を割って、そこから味噌、ネギ、取り出した肝を混ぜたものを詰めて、そのまま直火であぶります。自身を守るための硬い体が、皮肉にもちょうど良い器になります。ちょっと可哀想な気もしますが、一度食べてみたいものです。
京都府立海洋センター技師 白藤徳夫
(平成20年3月26日、京都新聞掲載)
お問い合わせ