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京都府農林水産技術センター海洋センター 所長 中津川俊雄
新年明けましておめでとうございます。
平成24年を振り返りますと、全国各地での大水害、特に府内では8月14日に発生した宇治市、城陽市、木津川市等、南部地域での集中豪雨による大きな被害が記憶に残ります。平成23年3月11日の東日本大震災以来、大規模な自然災害が立て続けに発生して、尊い人命、財産が失われ、地域の道路網、インフラ、産業が大きな影響を受けるという事態に直面する機会があまりに多いように感じます。
また、日本を取り巻く情勢では、尖閣諸島、竹島、北方4島といった領土問題が大きな問題となり、日中関係、日韓関係に大きな摩擦が生じてしまい、経済活動にも多大な影響が及びました。世界的な情勢では、欧州の債権問題、雇用情勢の悪化等による世界経済の不安定さ、歴史的な円高、ドル安、ユーロ安で、日本経済は一層厳しさが増してしまいました。
一方、ロンドンオリンピック大会では、日本選手団の活躍に勇気と感動をいただき、夜遅くまでテレビの前で心躍る日々を過ごしたことが思い起こされます。昨年の心踊る出来事といえば、京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の開発により、12月11日にノーベル医学生理学賞を受賞されたことでしょう。10月8日の受賞決定の報以降の報道では、失敗の連続という研究開発の難しさと得られた研究成果、臨床応用への道程について、ユーモアを交えて話をされる映像をみて、感動を受けたものです。
海洋センターは、府の水産分野の研究開発を担っており、少しでも漁業の現場で活用いただける成果を挙げていけるよう努めたいと思います。以下に、その一端をご紹介いたします。
府における2大基幹漁業は定置網漁業と底曳網漁業ですが、いずれも経営の改善・安定、コスト削減、漁獲物の高付加価値化が求められています。これらのテーマは、海洋センターの継続的で重要な対象課題だと考えております。
定置網漁業の経営にとって大きな脅威の1つが急潮です。昨年も4月の急発達した温帯低気圧、そして9月の台風16号により一部海域で被害が発生しました。こうした急潮に関して、平成24年度から国の実用化技術開発事業の研究費を得て、急潮予報の高精度化の研究を進めております。より精度の高い、迅速な情報提供に努めて、被害軽減、減災に貢献し、定置網漁業の経営の改善に繋がるようにしていきます。
底曳網漁業の漁具改良として、上下2段方式の改良網を開発し、下網でカレイ類を、上網でハタハタ、ニギス等を漁獲できるようにしました。改良網の導入で、選別作業の効率化を図り、髙鮮度の魚介類を市場に提供していただき、魚価の向上に寄与できればと期待をしています。併せて、底曳資源の持続的な管理にも貢献できるものと思います。
平成23年度にトリガイ種苗の中間育成施設が増強され、昨年56.5万個の種苗を供給できました。漁業者の方々の要望に十分に応えられるよう、今年も目標である54万個の種苗を生産して、ブランド水産物である「丹後とり貝」の安定生産に貢献していきます。トリガイ種苗の生残率向上が大きな課題となっており、25年度から新しい研究テーマとして、育成トリガイの健康度を把握できる指標づくりに努めていきたいと考えております。その成果として、生残率の向上を図りたいと思います。
また、育成イワガキの生産拡大に伴う種苗の要望数を確保するため、平成23年度に天然採苗技術を開発しましたが、水産事務所と連携したタスクチーム活動を通じて、24年度からは漁業者の方々自身で採苗していただけるようになりました。
今後も「丹後の海の恵みを生かすアクションプラン」に掲げられた水産施策実現のため、必要な調査研究を進めて新しい技術の開発に邁進して参ります。
最後になりましたが、平成25年の幕開けに当たり、今年一年災害の発生が無く、そして皆様方のご多幸と豊漁を心より祈念いたしまして、新年のご挨拶といたします。
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