「京都府文化力による京都活性化推進条例」の骨子案に対する府民の皆さんからの意見の要旨と、これに対する府の考え方
全体について
意見の要旨
- 文化力によって産業活性、地域活性を図ろうとするものとして歓迎する。
- 前文から推進体制まで、文化との対峙のしかたや達成しようとする志が明確で、素晴らしい。
- この条例は、文化を大切にする気持ちを大切にすることや、いろんな活動を活発に行うことなど、おもしろい。
- 文化力条例は全国初とのことで、意義がある。
- 京都の多様な文化は貴重であり、日本全体を活性化する力に満ちあふれている。
- 府・市民の地域エゴとして文化力を高めるのか、日本の文化として遺産的に残すのか、どちらに重点を置いているのか。
- 文化力を残せといっても予算的裏付けもなしに、「やれ。やれ。」と言っている感じがする。
- 文化力でメシが食えるのか。昔、文学部や芸術学部、理学部などではノーベル賞クラスの頭脳がないとメシは喰えないと言われたことを思い出す。
- 文化芸術振興基本法を踏まえた規定が見あたらない。
- 京都は文化芸術の都であり、その京都の条例で文化芸術ではなく「文化」としている理由はなぜか。
- 思い切り音を出して演奏の練習をする場所がなくて困っている。完成されたものだけでなく、育成過程を見守ってくれるような雰囲気の実現を望む。
府の考え方
京都においては、伝統文化や優れた文学などの多様な文化芸術を生み出してきました。こうした京都の文化形成の原動力となってきたものは、「進取の気風」、「多様性への寛容」、「創造力」であると考えています。また、これらを背景として、豊かな学問、技術、多彩な意匠などの知的資産を生み出し、育んできましたが、その根底には、異なる価値観を理解し、尊重し、共に生きる豊かな精神があるものと考えます。
条例案では、こうした京都の文化の特性にかんがみ、文化芸術の振興にとどまらず、様々な文化活動や文化を介した交流を促進することにより、人や地域の絆を深めるとともに、多様な文化を新たな価値創造のために活用できる環境の整備等を通じて、文化力のさらなる向上を図り、これらを生かして京都を活性化し、心豊かで創造性あふれる社会を築き上げることを目的としています。
文化、文化力について
意見の要旨
- 文化力という言葉は、文化行政の新たな視点となる。
- 京都の文化とは、文化力とは何か。
- 条例名の「文化力」は造語か?文化力を認識できるような表現上の工夫が必要。中学生でも理解できるような文言が必要。
- 「文化力」等といった独自の用語については、いわゆる定義規定等の最低限の説明が必要。
- それぞれの分野で発揮する「文化力」 を具体的に提示することが必要ではないか。
- 新たな文化は、意図的に形成(創造)することは困難。文化活動という言葉は、違和感がある。また、一般の文化的な活動を示す場合と文化的な創造物の創造活動を示すと思われる場合とが混在し、意味がぶれている印象。
府の考え方
文化は、人々に元気を与え地域社会全体を活性化させて、魅力ある社会づくりを推進する力を有しており、こうした力を「文化力」という言葉として条例案において記述しました。
また、この文化力という言葉をデザインしたロゴマークが、文化庁が提唱する関西元気文化圏の文化庁主催事業や参加事業に使われていることなどから、認知度がしだいに高まってきています。
なお、文化活動という言葉の使い方については、「文化芸術振興基本法」においても、文化芸術活動の中には文化芸術を創造する活動という意味も含む形で用いられており、条例案でも同様の使い方をしています。
前文について
意見の要旨
- 前文に重きを置きすぎている。
- 読んで理解することが難しい。
- 「未来の京都を紡ぎ出す深い知恵を見いだす」の表現は、条例になじまない。
- 人それぞれ文化を念頭において振る舞え、というのは、結局、人それぞれ好き勝手にしなさいと言っているのと同じ。
- 未来の京都を紡ぎだす深い智恵は作法から生まれてくるものなのか?この一文は削除する方がよい。
- 「作法」を広辞苑で引くと、「きまり」、「しきたり」という意味がある。本来自由であるはずの文化の条例にはなじまない。
- 「京都ならではの作法」の作法は、「しきたり」をイメージさせる。前近代的なにおいがする。削除すべき。
- 説教臭くて好きになれない。
府の考え方
京都の文化の特徴は、「進取の気風」、「多様性への寛容」、「創造力」であり、また、その根底には、異なる価値観を理解し、尊重し、共に生きる「豊かな精神性」があり、これらを現代にふさわしく作り上げていくことの必要性を強調しておりましたが、これらの趣旨がわかりやすい記述に修正しました。
意見の要旨
- 「我が国を代表する文化を育んできた」 とあるが、京都府は丹波、丹後等を含めた広域文化圏であるため、既にその内側に多様性を内包しているので、府の中にも地域の独自性があるという良い表現があれば改めるべき。
- 日本海側の文化もイメージできるように盛り込んでほしい。
府の考え方
条例案の前文において、「丹後から山城までの各地域において」と記述しました。
基本理念について
意見の要旨
京都府が主語/主体なのか、京都府民なのか、他のものが主語/主体となるのか、判然としないように感じる。
府の考え方
基本理念の主体は、府を指しています。府民の皆様には、自主的・主体的に基本理念に掲げる事項を踏まえ、施策の実施に積極的に関わっていただきたいと考えています。
意見の要旨
留意事項と、基本理念と区別した理由は何か。
府の考え方
基本理念と留意事項については、一つの条文にまとめたほうが、より理解しやすくなるため、統合することにしました。
意見の要旨
「我が国及び京都の文化に対する理解を深めること」が「世界平和に資する」ことにつながるというのは、無理がある。
府の考え方
条例案の構成上、削除しましたが、グローバル化が急速に進む現在、世界の多様な文化を理解し、尊重しあい、文化交流を通じて、人々の心を結びつけ、世界平和の礎を築いていくことが 重要であり、世界の多様な文化を理解するためには、自らの文化を知らなければならないという趣旨です。
府の責務について
意見の要旨
平安京に始まる歴史都市の特徴を最大限に活かして都道府県との交流を分野別に検討すべき。
府の考え方
関西元気文化圏などの取組を通じて、都道府県や経済団体との交流に努めているところです。
大学等の教育研究機関の役割について
意見の要旨
大学はもっと地域に関わってほしい。(例)大学生と小学生が一体となってなにかに取り組む。子供会の行事に参加。 老人会の集まりで人形劇を上演。
府の考え方
大学等の教育研究機関と連携の上、地域における文化の振興に取り組んでいきたいと考えています。
事業者の役割について
意見の要旨
- 京都府には様々な伝統工芸等ものづくりを担う中小企業が多く存在しており、企業自体が知的資産の創造の現場とも言えるため、企業自体も文化の担い手であるという表現を加えて頂きたい。
- 京都ならもっと生活文化関連への価値観の見直し、多様化等を推進する必要がある。
府の考え方
9月議会に、本条例案とは別に、「伝統と文化のものづくり産業振興条例」を提案し、伝統と文化のものづくり産業が、伝統的な技法等を保存、継承しながら、伝統を生かした生活文化を創造する産業として発展するよう、必要な措置を講じることとしています。
二つの条例の制定により、心豊かで、より質の高い府民生活を実現していきたいと考えています。
財政上の措置について
意見の要旨
基金設置に関する記述を条例に入れている先行事例があり、これら条例以上のものが要求されるのではないか。
府の考え方
文化芸術の振興にとどまらず、文化的創作物に係る起業等の支援などについても規定しました。今後、有効かつ効率的な支援を検討していきたいと考えています。
施策の進め方等について
意見の要旨
- 条例ができた後の具体的施策の展開を期待する。
- どのように推進展開していくかが重要。
- 芸術の振興を図ることを目的とする条例よりは、数段よい。あとは、この条例が制定されたあと、どのような施策が展開されるのかが問題。
- 府民参画に関する具体的規定を設けるべき。具体的には、意見公募手続に類似した規定を設けることを提案する。
- 市民参画は文化振興条例の屋台骨とも言えるものであり、努めますという表現だけでは弱い。市民参画の場を義務付けるという表現に改めるべき。
- 単に「施策・支援に取り組む」とするだけではなく、その取組みを評価する体制作りや、規定を設けることも必要。
- 条例の施策と事業は、毎年見直し、変更・追加して欲しい。
- 全体的に、内容が漠然としており、条例制定の必然性が不明。
- 単に施策実施の根拠を定めることだけが目的であれば、条例の必要性に乏しい。
- 京都に蓄積された文化的、歴史的資料を活用し、それを京都の活性化にどのように運用するか具体的に提示すべき。
府の考え方
文化活動の主体は府民であり、文化力による活性化の推進に当たっては、府民の意見を反映しながら、府民と協働して、施策を策定・実施していくことができる仕組みづくりが重要であることから、条例案の第2条においてその旨を記述しています。
また、個別具体的な施策については、条例の体系に沿って、府民の皆様の御意見を伺いながら、基本指針で定めることとしています。
なお、基本指針で定めた施策についても、社会情勢の変化に応じ、また、府民の皆様の施策に対する御意見を伺いながら、柔軟かつ機動的に見直し、より効果的な施策の策定・実施を図りたいと考えています。
文化的創作物を創造する者への支援について
意見の要旨
- 「文化的な創作物」の例示に特定の分野を用いると、細かく例示し続ける事態に陥る恐れがある。
- 「文化的な創作物」の定義に、複合の舞台芸術などすべてを網羅していることを明記して欲しい。
- 京野菜を使った京料理、精進料理も「文化的な創造物」である。
- 工業生産物に限らず、菓子・漬物など 土産品、建築、庭園、景観等も入れてほしい。北山杉、宇治茶なども昔から京都の産業である。
府の考え方
文化的創作物は、文化活動により生み出される多様な創作物であることから、個別の例示は削除しました。
人材の育成について
意見の要旨
- 文化においてもきっかけは大事であり、見る人と体験する人、また演じる人、それぞれの接点を作るマネジメントが欠かせない。
- 文化を広げていくには人材育成が欠かせない。
府の考え方
マネジメントの役割を果たす人材については、条例案第13条第2項において、文化活動を支援する者に含める形で記述しました。文化を生かした様々な活動が促進されるよう、人材育成や交流の促進に積極的に取り組みたいと考えています。
次世代の育成について
意見の要旨
- これからの人に地域の伝統的な文化行事への参加を勧めていくことが大切。
- 地域の華道の先生が、舞鶴の小中高のクラブ活動又は体験学習にボランティアで取り組んでいるが、費用面で苦労している。活動を充実し継続していくためには行政の支援がほしい。
- 自分自身が色々な行事に参加し、自分の目で見ることによって次の世代に伝えていくことができるようになる。
府の考え方
文化は、創造力を育み、また、他者に共感する心を通じて、他人を尊重し、考えを異にする人々とも共に生きる資質を育むものです。このため、学校教育における文化活動の充実や、次世代の文化活動の充実について、規定しています。また、こうした活動に対する協力への支援にも努めることとしています。
意見の要旨
中高年でも文化活動を始める人は少なくない。次世代だけでは支援が若い人々に限定されてしまうように受け取れる。
府の考え方
条例案第1条第1項の基本理念で、「府民が、等しく、多様な文化に親しみ・・・」と記述しました。府民の文化活動が活発に行われるよう、的確に施策を実施していきます。
文化的創作物の創造による活性化について
意見の要旨
文化的創作物の起業支援とは、どのようなものか。
府の考え方
商工施策の既存支援制度の活用に加え、基本指針等の策定において、さらに効果的な支援のあり方について検討を深めることとしています。
その他
意見の要旨
京都のたくさんの文化の中で特に西陣織は京都独特の文化なのでこれを外国に広め、外国の人と交流を深めることが大切だと思う。
府の考え方
京都文化博物館などにおいて、京都の文化を内外に発信していくこととしています。
意見の要旨
祇園祭などは京都府や市から何も予算的な支援を受けていないと聞いたがこれは本当か。
府の考え方
伝統的な行催事の保存・継承については商工行政、国の重要無形民俗文化財である祇園祭の山鉾を飾る懸装品等の保存・継承については文教行政、というように、それぞれの担当部局において助成制度を設け支援しています。
その他のご意見
要旨
- 舞鶴は戦後、日本人が一番先に日本の土を踏んだ港。記念館があるが、戦争の歴史の一断面を知らせ続けるとともに、平和についての教育に取り入れられるよう、条例で強調してほしい。
- ロシア東部は地理的に近いのに文化的に遠いため、府にそれを補ってほしい。
- 町家・町並み保存地区の耐震度をあげるべき。
- 映画産業の伝統の地京都で新人監督に1本1億円の資金を提供し、世界で賞を取れる映画製作を目指す事業を提案する。
- 井戸の保存にも役立ててほしい。家庭用の井戸は家の建替えの際に潰されているが、一度潰すと再び掘るのは困難である。