「京都府文化力による地域活性化推進条例(仮称)」第3回検討委員会 開催結果
日時
平成17年3月2日(水曜) 午後4時から6時まで
場所
京都府庁職員福利厚生センター3階 第4会議室
出席者
池坊由紀委員、坂上英彦委員、西口光博座長代理、山本壯太副座長、加柴和成専門委員、福永寛専門委員、山下淳専門委員(五十音順、敬称略)
議題
- 委員による意見発表
- 意見交換
- その他
委員意見の要旨
委員による意見発表
地域文化の現状と課題等について
京都府北部の全般的な問題
- 舞台芸術等、生の文化活動に参加する人が減少。特に40代半ば以下が著しく、文化芸術の「根っこ」がぐらついている。
- 地域の文化リーダーが世代交代を迎える時期だが、後継者が育っていない。
- 文化団体は高齢化が進み、会員数、団体数とも減少。
- 地域の鑑賞団体の数がほとんど皆無となっており、民間や市民が独自に開催する鑑賞機会の提供もほとんど皆無。
- 地域の伝統芸能は、高齢化に伴う保存会の弱体化の影響を受けて衰退。
- 生の文化芸術に関心がある人と全くない人に二極分化。
事業別現状
[鑑賞型事業]
- 地方公共団体の文化予算の減少に伴う公立文化施設の事業減により、地域住民の鑑賞機会が減少。
- 事業で赤字が出せないことから、オーケストラ、オペラ、バレエ、歌舞伎などの大型事業の実施が困難な状況。
- 伝統芸能に対する20代~40代の若い世代の関心が低く、能、狂言、歌舞伎等の実施が困難な状況。
- 子供・青少年世代は、CD・テレビなど受動的な文化が中心。生の文化活動に対する関心が低い。
[参加型事業]
- 市町村の行政エリアから広域的エリアへの展開の欲求が高まっている。
- 参加型事業は入場料収入を期待するのが非常に難しい事業であるが、今年度から府の制度が変わり(未来づくり交付金)、中丹文化芸術祭も財政面から危機に直面している。
全般的提案
- 広域振興局のエリアごとに柱となる文化ジャンルを想定し、府内3文化会館等を拠点にしながら、地域の特徴のある文化活動を促進。
- 文化団体が元気が出るような助成制度を創設する。頑張って活動した結果黒字が出れば、他の事業に充当していけるような制度で、一つでも事業数の増加につながるような助成制度にしてほしい。
- メディアを駆使するなど、京都市内から地方に足を伸ばさせるような文化芸術情報の発信。
- 老朽化している広域的な3つの文化会館の設備の一新と拠点化、さらなる活用。
- 地域の文化リーダーの認定制度と地域文化賞の創設。(地域活動の中心となる「人」に対する地域の認知を向上し、その人がより活動しやすい環境づくり)
事業別提案
[鑑賞型事業]
- 京都市内からの鑑賞ツアーに助成を行い、地方参加者の負担を減らすとともに、一流の公演を実現する。
- 若い世代に生の文化の感動を伝える。本物の舞台、会場で鑑賞の機会を提供する。
- 空洞化する20~40代の対策として、文化活動を体験する場面を作っていく。
[住民参加型事業]
- 広域的な参加型事業の継続と充実、併せて京都府全体での文化芸術祭の開催。また、プロを交えて刺激を持つ。
- 地域のアーティストを活用して、生活圏で生の文化に触れる機会を提供する。市町村単位ではなく広域エリアで取り組むことが重要。
最後に
文化芸術とは、生の文化芸術が原点である。様々な地域の様々な文化が発展することが重要。聴く観るにとどまらず、文化芸術を実践できる人が増えることが、地域を明るく豊かなものにする。民間活力に加えて、官の支援、マネージメントが重要になってきている。広域的な文化活動の重要性の高まりを感じているが、生の文化を絶やすことなく地方の文化活動に光を当て、一層発展させていきたい。
文化を活かした産業活性化について
京都のあるべき姿
- 京都は世界に冠たる文化とベンチャーの都でなくてはならない。
- これまで戦争や経済などハードな力が世の中の基準だったが、これからはソフトパワー、いわゆる文化力みたいなものが世の中の基準になっていく。
- 「おもろい」ことをなんでも発信していくことが大事。
- ハイテクだけじゃない文化系の「おもろい」ベンチャー企業が出ることが大事。
- 観光だけではなく仕事で日本及び世界中から人が来ることが大事。
現状
- いわゆる京都ブームは順調に続いているが、あまり外国から人が来ていない。特にアジアからの人が少ない。
- 伝統産業において、堀木エリ子さんやジャパンスタイルシステムなど新しい動きはあるが潮流となっていない。
- ベンチャー企業において、全体に数が少なく、おもろいことをやっている会社が京都で生まれても、東京などに流出してしまう。
提案
- 大型、箱もの型施策よりも、おもろいなということをちょっとずつやって、だめだったらすぐやめて次のことをやったらいいぐらいの助成スタンスが大事ではないか。
- 例えば、博物館のレイアウトやプロモーションを考えたりすることは、芸術系の大学生でやりたいという人がたくさんいる。おもろいアイデアを募集するようなコンペをすれば面白い。
- 府庁からテレビ会議システムを使って海外の人と自由に話し合ったりイベントをやれば文化は比較的簡単に発信できる。
- 大学が京都市内から流出して、町中が寂れていく現状があるので、町家を活用してキャンパスを作ればいいと思う。
- 文化を考えるときにハイテクにも目を向けるべき。
- 京都議定書のように「キョウト」という言葉が後々まで使われるような国際会議をどんどん開催すればいいと思う。
- 女の子向けのフィギュアを制作して年商4億円以上上げているような企業も動きやすくするような仕組みづくりが大事。
最後に
- 京都は特殊な町であるというプライドを捨てても京都の特殊性というのはおのずと残る。そうして残った特殊性であらためて世の中に通じるマーケットを作るというのがよい。
- 行政が施策を考える上で、小さいけれどおもしろくて大切な市井の声といったものを汲み上げて、それを手助けして、実現できるように支援するということだけでも世の中は大きく変わると思う。
委員の発表を受けて
- 町家を活用したレストランなどのように、京都には価値観の転換や工夫次第で活用できるものがまだまだたくさんあると思う。
- いわゆる「京都らしさ」の周辺にありそうでないものに実はポテンシャルがあるといったことをどのように言葉にしていくかが今後の議論で大事かなと思った。
- たまたま今、丹後地域で町並みの整備をしており、1億円以上かけて昔のすごい家を改装して博物館にしているが、そのまわりの町並みの人達はあまり人がきてもらっても困ると言う。こういう地方での生活の豊かさとか誇りをどのように継続的に地域が担保していくのかというのが大きな瀬戸際になってきている。そういう時に地域の文化芸術祭などを通して地域の文化に誇りを持ち、必ずしも就業機会があって給料が高いことだけがいいのではないという考え方や価値観を認め合わないと地域は活性化しない。
- 京都はやはりモノづくりだと思う。サービス系、システム系の企業は出てきてもやがて東京に行ってしまうことが多い。京都に残っているのは、日本ではなく世界をターゲットとしているモノづくりの企業ではないかと思う。
条例のイメージについて
- 解決していく課題を郡部の文化の振興に力を置くのか、グローバルな展開を目指すのかによっても条例の位置付けは大きく変わるので、視点の切り口をどこに持っていくのか腰を据えて検討しなければならない。
- 地域文化に関する意見発表の最後のところで触れられた「地域芸術祭」をどのように地域が受け止めていくのか、あるいは文化力を高めていくのに積極的に活用していくのかという点について行動計画的なものをしっかり位置付けていこうという考え方が一つの条例第1号のイメージとして捉えられるかもしれない。
- むつかしいのは、条例の目的を特化する際の選択方法である。一つの価値基準を作って進んでいく必要があるが、二者択一で絞り込むと反作用が出てくる心配もある。あるいは、仕組みをつくってテーマは自由というような選択をしないといけないかもしれない。仕組みが第1号であれば応用が利く。
- 「委員意見発表」の意見はそれぞれベクトルは違うものの、いずれも従来型の行政の支援や役割と違うところが必要との指摘であった。これをどのように条例の推進力メニューに組み込んでいけばよいのか考えたほうがよいと思う。また、委員から「仕組み」でいけばどうかと提案があったが、「基本理念」のもう一つ下あたりで意見を受け止められないかという気がしている。これまでの施策で抜け落ちていた部分と考えられるため、それをはめ込むことによって次のステップが出てくるような条例になるのではないか。どのような支援スタイルが適当かということについて今後さらに検討する必要がある。
- 産業面だけで京都ブランドを作るのではなく、伝統的な文化の部分をミックスすることにより効果がさらに上がる。
- 理念こそが一番大事で、「思い」や「こころ」が伝わるようなものであれば、全員が動き出すというのは無理かもしれないが、何かがあれば動き出すという人の心にきゅっと刺さるのではないか。
- 網野町のレスリングが強いからもっと伸ばそうとか、合唱の上手い中学生はみんな加悦谷高校に行きなさいよというようなやりかたもあるかもしれない。哲学も重要だが、施策の中で特徴付け、仕掛けを作っていく必要があるのではないか。
- 来年度の予算にも計上されているコンペと関連づけても面白いかもしれない。例えば「文化スター誕生条例」みたいなものを作り、コンペによって一本釣りで積極的な支援や世界に向けての発信を行うなどが考えられる。
- 個々の部分で府民のポテンシャル、地域のポテンシャルを活かすという方向については本日同意が得られた。