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鴨川真発見記 平成27年11月

 第212号 秋深まる鴨川で御薗橋拡幅工事はじまる

ケヤキの大木伐採に寄せられた想いも様々

 市街地を流れる鴨川の中でも上流域、上賀茂神社への参道の一部ともなっている「御薗橋」の拡幅工事が管理者である京都市により始まりました。

<現在の御薗橋 上流から>

<同左 上空から> ※京都市HPより

 現在架かっている御薗橋の南側に拡幅する工事です。拡幅する部分に当たる下流側の左右岸に生えている樹木が支障となるため、これら樹木の伐採及び移植が11月4日~6日にかけて実施されました。

<御薗橋拡幅計画図> ※京都市HPより

<現在の御薗橋> ※京都市HPより

<拡幅後のイメージ> ※京都市HPより

 ※拡幅工事の詳細は京都市道路建設課のHPを御覧ください。

  京都市建設局道路建設部道路建設課 御薗橋へリンク(外部リンク)

 大きく成長しすぎたなど移植が不可能と判断された樹木は伐採となります。その中でも右岸側の大きなケヤキの伐採に地元住民の皆さんの注目が集まりました。

 地元新聞でも報道されましたが、ケヤキの伐採に寄せられた住民の惜別の声も短冊という形で伐採される樹木につるされました。

 交通渋滞の解消や、歩行者、自転車の安全確保や川の水を流れやすくするなど災害に強いまちづくりが目的で拡幅する工事です。

 人間の生活の利便性を確保する為の拡幅工事ですが、慣れ親しんだ大木を伐採するという行為に対しては複雑な想いが交錯しているようです。

<伐採されたケヤキ>

<御薗橋右岸下流1本目が対象>

 公共工事、特に樹木伐採などの自然環境に手を加える場合には、様々なご意見を頂くことになります。そのご意見を最大限尊重しながら工事は進められている事もご理解いただきたいと思います。

 工事を担当されている京都市さんも、伐採は出来る限り最小限に留めるように計画されて、自然保護に対する配慮も充分にされていますが、いざ目の前で大きな木が伐採されるとなるとまた別の感情が沸いてくるのでしょう。

 ケヤキに吊された文章を拝見してみると

「四季折をりの眺めで私たちを慰めて頂きありがとうございました 残念ですが許してください」、「四季折々いろんな思い出がありました 夏の暑い日などには木陰で一休み 雨風が多い日にはしっかり体をはって守っていただきました 本当にありがとうございました」、「ここに大きな木があった事を忘れません」 などなど、ケヤキへのメッセージが綴られていました。

<短冊や団扇などに綴られたメッセージ>

 ここで、御薗橋の歴史を紐解いてみますと、御薗橋は昭和10年の大水害時に流失しています。当時の資料 

昭和10年上賀茂小学校記念誌 あおい特別号「水禍」 平成25年3月1日上賀茂社会福祉協議会複刻

によりますと、

「橋梁の流失」

 怒濤狂瀾、二十九日の賀茂川は、あたかも然水地獄の如く、渦巻く濁流逆巻く怒濤、大木をさげて奔り、岩石を砕いて馳せる。何物か、よく魔力に抗し得べき。

 午前六時頃まで、頑強に奔流と闘こうていた上賀茂橋も、既にさらわれた数脚が致命傷となり、一大音響と共に破壊し、激流に飲まれてしまった。

 御薗橋は、工費十数万円の予算で改築工事はほとんど成り、竣工を目前に控えながら惜しくも午前七時、礎石を破壊され原形は全く失われた。

 これと相前後して中賀茂橋も墜ち、植物園以北においては、独り北大路橋を残すのみ、東西の交通に大きな支障をきたすことなった。

 ~略~

 現在の御薗橋は、昭和10年に竣工目前で流失した先代に変わって架橋された橋です。

 昭和10年の大水害時には、御薗橋も流失しましたが、その周辺の堤防も崩壊していますので、このケヤキもそれ以後にここに根付いた事がうかがえます。

<上賀茂橋上流約2百m右岸堤防の決壊>

<破壊せる御薗橋(下流より)>

<御薗橋下流右岸堤防の決壊>

 地元住民の皆さんの癒しの木であると同時に、野鳥の命を育む場も提供していたようです。1年を通して鴨川・高野川の生き物を観察して記録している小学生、西山和治郎君もこのケヤキに注目していました。

 その目は、まだ新緑の葉のないケヤキの上部に“アオサギ”が営巣している様子を捉えていました。そして、新緑に包まれる巣に佇むアオサギも確認されています。地元の方からも、帰宅途中の車中から、まだ羽の生え揃わない裸同然の背の高いヒナが、自分の方を見つめる様子を目撃したとの情報がありました。

<写真中央上部にアオサギの巣>

<アオサギの姿が見えます>

<新緑に包まれる巣 アオサギもケヤキに感謝している事でしょう>

(アオサギの写真提供:西山ファミリー)

 そして、伐採の当日11月4日となりました。そこには慣れ親しんだケヤキの大木の最後の姿を映像や画像に残す住民の皆さんの姿も見受けられます。

<クレーンと高所作業車で伐採作業は進みます>

 その中に、このケヤキを学術的に見つめる方の姿もありました。京都府立植物園の名誉園長で、京都府立大学客員教授の松谷茂氏です。松谷氏は、鴨川の植生についても研究対象としておられます。

 鴨川の賀茂大橋以北の植生が、人の手によって植樹されたものなのか?自然に種が飛んできて生えたものなのか?という点についても関心をお持ちです。

<ケヤキの根元のサイズを測る松谷氏>

 御薗橋から北大路橋のあたりのケヤキについては、昭和35年頃に京都鴨川ライオンズクラブの手によって植樹されたとの記録も残っているものの、植樹された一本一本がどの個体かの特定までは出来ていません。

 そこで、伐採されるケヤキの年輪により樹齢を調べる試みが提案されました。施工業者さん、京都市さんとの調整を経て、根本部分の幹を輪切りにして提供頂く事になりました。

<輪切りにされた根元の幹>

<京都府立大学へ搬送>

 直径1mを超える大木の幹が、切り取られ、京都府立大学の研究室へと運びこまれた後に年輪を丁寧に数えられます。

 正確に年輪を数えるのには時間がかかるそうですので、判明しましたら後日皆様にお知らせしたいと思います。

 様々な場所で、公共工事や民間工事で街の様子が変化していきます。そして10年くらいの年月が経過すると、元あった風景は忘れさられて、今目の前にある風景があたりまえとなっていく事と思います。

 この事は、鴨川真発見記第131号[「10年一昔、その変化は」でご紹介させて頂いた通りです。ケヤキ伐採への惜別の思いが、後世の地元住民の皆さんに語り次がれて行く事を願って今回の記事を終えます。

<大木を支え続けた大きな切り株>

追伸 暴風で幹が折れた樹木の伐採

 今回は、大きく育った大木を工事の支障となるため伐採しましたが、暴風により大木がなぎ倒されて、やむなく伐採する例もあります。

平成24年10月には、北大路橋下流右岸の大木がその被害がありました。

<暴風に耐えられず>

<幹が割れた大木>

 根がしっかりと張っていても、枝や幹の老朽化が進み暴風に耐える事が出来なくなっていました。やむなく全てを伐採しました。この際にも知り合いの方から連絡を頂くことになりました。「木陰をつくってくれる親しみ深い大木を何故伐採するのですか?」との連絡でした。

<青空の下伐採作業>

<何故伐採の声も>

<大きな幹が搬出されました> 

 事情を説明して御納得いただきました。松谷氏も今回お話しさせて頂く中でで、この伐採が倒木によるものとは思っておられなかった事がわかりました。

 事情を知らずに「何故伐採?」と思っておられる方も多い様ですので、併せてこの事もご報告させて頂きます。

 

平成27年11月9日(京都土木事務所Y)

 

 第213号 鴨川晩秋の早朝散歩

清々しい空気の中で見た光景

 とある出版社から、京都観光案内誌に「冬の京都早朝散歩」の記事を掲載したいので、冬の鴨川早朝の写真データの提供依頼がありました。候補写真を提供し、1月末には発行されるそうです。

<提供写真 朝焼け映る鴨川>

<うっすら雪化粧 鴨川・高野川合流点>

 鴨川真発見記でもこれまでに幾度か鴨川の早朝散歩で出会った様子をご紹介してきました。最近あまり早朝バージョンは少しご無沙汰しているなと思い、今回は、秋の早朝散歩で出会った光景をお届けしたいと思います。

 朝日が昇る前に御池大橋まで足を運び、ここから上流へ向かいます。

 御池大橋の右岸、橋の下には今月1日「鴨川ギャラリー」がお披露目されました。

<御池大橋右岸 鴨川ギャラリー>

 鴨川ギャラリーは、ここ御池大橋右岸が5箇所目で、他にも4箇所に設置されています。

 ※その他の設置箇所:四条大橋右岸、二条大橋右岸、丸太町橋左岸、出町橋右岸

 こちらの内容は、「河原での遊楽」と題して、江戸時代初期の三条から四条にかけての納涼を楽しむ人々の様子を描いた絵図が設置されています。

 3枚の絵図は、いずれも美術館所蔵の有名なものです。川の中の大きな中州や寄州で納涼する人々の賑わいの様子を御覧ください。

<鴨川遊楽図>

<華洛四季遊戯図巻>

<四条河原遊楽図屏風>

 芸術の秋、5箇所の鴨川ギャラリーを巡ってみるのもお勧めです。

 御池大橋を後にして、上流へと向かいます。

 東の空に朝日が登り始めました。二条大橋の西側にその朝日が当たりますが、まだまだ気温は低く肌寒く感じます。

<二条大橋を望む>

 みそそぎ川の脇の植栽では、真っ赤な実がたわわに実っています。ピラカンサ属の鑑賞用植物です。赤い小さな実を結ぶ植物は数ある中でも、存在感のある姿です。

<ピラカンサ属の赤い実>

 みそそぎ川の石積みの上では、寒そうに体を膨らませて羽繕いをしているのは“キセキレイ”です。朝のストレッチのように翼を整えて飛び立って行きました。

<寒そうに膨らむ“キセキレイ”>

<羽繕いして>

<翼を整えて>

<出発>

 二条大橋まで来ました。ここにも“鴨川ギャラリー”が設置されています。ぴかぴかの展示プレートが朝日に浮かび上がっています。ここには、国宝洛中洛外図 上杉本の原寸大に近いレプリカが展示されています。

<更に明るく照らされる二条大橋>

<洛中洛外図 上杉本>

 二条大橋の上流の橋は丸太町橋です。その下の中州に降りて上流の荒神橋を眺めると、上から青空の層、グレーの雲の層、北山の稜線と色づき始めた山々、両サイドに紅葉した桜、そして鴨川の流れがあります。山紫水明を感じます。

<丸太町橋下から上流を望む>

<同左ズームアップ>

 丸太町橋上流右岸には、鴨川ジョギングロード案内図が設置されており、歩く人、走る人のコースの目安に役立っています。

<鴨川ジョギングロード案内図>

 川の中に目を向けると、まだ朝日が当たらず濃いグレー色の川面にモゾモゾと動くものがいます。一見何もいないようですが、よく見ると沢山のカモ達が水に頭を潜らせてエサを食べています。

<一見何もいないよう>

<カルガモ>

<オナガガモ>

<ヒドリガモ>

 荒神橋上流の飛び石の真ん中から上流を撮影してみました。私はカメラに関しては全くの素人で、いつもオートで撮影していますが、最近知り合いに少し手ほどきを受けたので試してみました。ホワイトバランスでイメージが随分変わります。

<通常モード>

<赤を強く>

<青を強く>

 観光情報誌の出版社の方から、鴨川を紹介する際に画像提供を求められる時に一番多くリクエストがあるのが、鴨川デルタとも呼ばれる“鴨川・高野川合流点”の写真です。

 賀茂大橋の下からと上からとそれぞれ撮影しました。朝日が高く登るにつれて空の青い部分が増えてきました。ホワイトバランスで青を強くした訳ではありません。

<賀茂大橋下から>

<賀茂大橋上から>

 水面に朝日が届きはじめ、野鳥達にも光が当たり、その存在が一目で確認できるようになりました。

<コガモ>

<オナガガモ>

 賀茂大橋の上流にも鴨川ジョギングロード案内板が設置されています。先程の丸太町橋から1.2km余り歩いた事を確認しました。ここからは高野川へ行くも良し、そのまま北上するも良しです。

<賀茂大橋右岸上流 鴨川ジョギングロード案内図>

 鴨川をそのまま北上して、葵橋の下から北山を眺めると、鴨川沿いの樹木の奧に北山が挟まっている感じです。その上流の出雲路橋の上から同様に眺めると、連なる北山の稜線が視界の両サイドに広がっています。

<葵橋下から上流を望む>

<同左 ズームアップ>

<出雲路橋上から上流を望む>

<同左 ズームアップ>

 出雲路橋を東に渡って左岸へ移動し、少し北西に視線を向けると、赤や黄色に色づく木々の上に送り火の“舟形”あごを乗せている様に見えます。

<出雲路橋上流左岸から北西を望む>

<舟形を支える様に紅葉>

 北大路橋を通過して半木の道へはいります。日陰の東側左岸から明るく照らされた西側右岸を眺めながら進みます。陽が登るにつれて気温が上昇し、少し暑くなってきました。東側の日陰は適度な気温となりました。

<半木の道 秋の主役は対岸のニレ科の紅葉>

 ここでも川の中の様子を眺めます。ヒドリガモが綺麗に揃ってお尻を上げてエサを食べています。カモ類のこの姿を見ると「シンクロナイズドスイミング」と心の中でつぶやいてしまいます。

<ヒドリガモ>

<見事にシンクロ>

 カワウが泳ぎ回る周りには、沢山のコザギが集まっています。カワウが潜水して魚を追うと、逃げる魚をコサギが捕獲します。カワウが場所を移動すると、すかさずコサギも後を追います。

<カワウの動きを待つコサギ>

<カワウが移動するとコサギも移動>

 そろそろこの日のゴール北山大橋に到着です。御池大橋から約4.5kmの秋の早朝散歩となりました。鴨川では、多くの方が鴨川の早朝散歩を楽しんでおられます。朝の苦手の方も一度は少し早起きをして早朝の鴨川を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 また別の日、鴨川冬の風物詩といわれるユリカモメの姿を求めて散歩してみました。例年は10月半ばくらいから姿を見かけるのですが、今年は11月の半ばを過ぎても姿を見かけませんでした。

 この日、鴨川真発見記的には今シーズン初お目見えです。荒神橋下流で一羽だけポツリと佇んでいました。群で行動するのでは?と思いつつ、仲間の姿を探して下流へ向かいました。

<荒神橋下流>

<ポツリと一羽“ユリカモメ”>

 丸太町橋、二条大橋、御池大橋、三条大橋、四条大橋、団栗橋、松原橋を通過していきましたが、ユリカモメの姿はありません。

 五条大橋手前まできて、ようやく十数羽のユリカモメの姿を確認しました。コサギと一緒にカワウの傍でその動きを待っていました。

<カワウとコサギと共に>

<ユリカモメ>

 数は年々少なくなっているようですが、何はともあれ今年も鴨川に“ユリカモメ”の姿を確認する事ができました。

 

平成27年11月19日 (京都土木事務所Y)

おまけ 秋の昼下がりカワセミ鑑賞

 カワセミを見つけると何だか得した気分になるのは私だけでしょうか?秋の昼下がりに鴨川を散歩していましたところ、カワセミに出会いました。

 これまで何度もカワセミを撮影してきましたが、そのほとんどの写真は一方方向を向いたショットを撮影したところで、サッと飛び去っていきましたが、この日は少しサービスしてくれました。

<ブロックの上に“カワセミ”発見>

 しばらくカメラを構えていると、色んな角度の姿を見せてくれました。

 カメラを構えている時はそんな事を考えている余裕はありませんでしたが、「あっち向いてホイ!」をしているかの様に、右に左に斜め右に首を向けてくれました。

<正面を向きました>

<あっち向いてホイ!>

 次に体をねじりながら方向転換をしていきます。背中の真ん中の鮮やに光るブルーが見えてきました。そして真後ろを向いてくれました。

<体をねじりながら>

<背中のブルーのライン>

<まだ回るの?>

<真後ろからのショット>

 野鳥観察会でも、「今日は“カワセミ”が姿を見せてくれたらいいね」という言葉をよく耳にします。

 散歩の途中少し足を止めて川の中の様子を眺めていると、カワセミに出会えるかもしれません。都市の真ん中で「“カワセミ”ウオッチング」贅沢な時間です。

 

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