トップページ【ゼロカーボンバイオ産業共創拠点】
ZET-valley
四季折々の豊かな自然の未知なる機能を活かすことで、資源貧国から資源大国に転換しよう-
エネルギー資源、原材料、食料を輸入する従来方式から地産地消方式に転換したい-
カーボンニュートラルにより、地域の自然と共生し人生を再構築できる新しい社会を創ろう-
住民や関係人口、企業、大学、自治体が一体となって、20年、30年後の地域社会のあり方を追求しています。
新着情報
トピックス
- 【2023年10月31日更新】令和5年度公開シンポジウムを開催します!
- 【2023年8月22日更新】8月25日6時30分放送NHK「おはよう日本」内「おはBIZ」で「環境にやさしく “細菌から糸” 京都大学」全国放送予定
2021年度科学技術振興機構「共創の場形成支援プログラム」(地域共創分野・育成型)の採択以降、開発、推進体制の構築、ビジョンづくりなどを通じて、「光合成生物の空気の資源化を基軸として自然環境を含む資源循環とバイオエコノミーの融合を目指すゼロカーボン拠点」の形成を進めています。
ゼロカーボンバイオ技術の開発
海洋性紅色光合成細菌(海水のミネラルと太陽光によりCO2と窒素を固定)は、CCS(貯留)、CCU(利用)に比べて、CO2の分離が必須でなく、高分子の生産も可能である反面、効率の定量化、大規模化の技術確立、産業化事例の創出が課題であり、それらの課題を克服するための農業、水産業、伝統産業におけるゼロカーボンものづくり技術開発を進めてきました。
- 光合成細菌の培養等:京都舞鶴の海水からの紅色光合成細菌の単離(新株含む)、紅色光合成細菌の効率的な培養技術の確立(2500Lスケール、4000Lスケール、人工光照射と海水条件での培養に成功)、全有機体炭素計(TOC、島津製作所)による正確・高速なCO2固定定量化の確立と知財化
- 魚粉代替飼料の作成(「光合成細菌、プランクトン、小魚、飼料用魚」から「光合成細菌、飼料」へと飼料製造サプライチェーンの劇的短縮):紅色光合成細菌由来の飼料作成(集菌、淡水化、破砕、乾燥、造粒・整粒、加工)、メダカ給餌試験の成功(14日間)
- 窒素肥料の作成:紅色光合成細菌由来の肥料の作成(集菌、洗浄、破砕、凍結乾燥、粉末加工)、小松菜生育試験の成功(35日間)
- 世界初の水系繊維の作成:クモ糸シルクタンパク質の生成(ジョロウグモのシルク成分MaSpタンパク質をコードする遺伝子を最適化し、発現用遺伝子ベクターに挿入した後、紅色光合成細菌内に導入することで、細菌内でクモ糸シルクタンパク質を発現。10L量の連続培養による安定生産の上、集菌、破砕、抽出生成により高純度のクモ糸シルクタンパク質を生成)、人工タンパク質と混合し紡糸に成功
また、林業におけるゼロカーボンものづくり技術開発も進めます。
- さとやまコンビナートの実装:森林はCO2を固定化するが、一定の樹齢を超えると吸収力が減退するため、生産・伐採のサイクルを繰り返すことが重要であり、そのためには市場を維持・拡大する必要があるため、遺伝子技術を用いて高付加価値木材の開発をめざす。
「オープンイノベーション2.0」のための推進体制
京都大学などの「学」、島津製作所などの「産」、京都府そのた府内市町村などの「公」が連携して推進しています。
- プロジェクトリーダー(京都大学)、副プロジェクトリーダー(民間出身大学関係者)、プロジェクトリーダー補佐(京都府)の下に、研究戦略部門、人材育成・社会展開部門、知財戦略部門を設置
- 京都大学においては、大学から独立した「研究ユニット」として位置づけ、組織体組織による「オープンイノベーション2.0」京大モデルとして実施
そして、ビジョンの具体化に向け、府民・企業との意見交換を重ねてまいりました。
- 地場産業事業者への個別ヒアリング:16社(農林水産業、伝統産業、ものづくり製造業)
- 地域住民等とのワークショップ:府内4箇所(木津川30名:農業、笠置30名:林業、堀川高校270名:伝統産業、舞鶴30名:農林水産業)
- 全体の公開シンポジウム:2回(170名、180名)
その結果、府民・企業の期待と課題感が明らかになりました。
- ゼロカーボンバイオ技術の導入による付加価値への期待が大きい。
環境に配慮した材料やプロダクトが生まれる過程・ストーリーなどが評価される時代にあって、米All birds社のように、スニーカーの原料・ユーカリ繊維の調達におけるFSC認証(森林や動物を保護するための基準)取得、大幅にCO2排出量を抑制したカーボンフットプリントが高く評価され創業2年でユニコーンになった事例もあるように、獲る漁業から育てる漁業に傾斜していく水産業では増加する飼料の脱炭素化は重要性が増す、海外に人気の高い茶の製造において脱炭素化は不可欠である、プロセスエコノミーへの関心が高まる伝統工芸などでは脱炭素化は付加価値に直結する、などの意見が多い。
- 一方で、量産技術の確立による低コスト化が今後不可欠な課題である。
競合品並の価格競争力が基本的に不可欠である、などの意見が多い。
これらを踏まえ、ゼロカーボンものづくりを、ゼロカーボンまちづくりに帰結させていくためのグランドビジョン「ZET-valley」構想の策定・推進等を始めています。
- 「ZET-valley」は、国や環境推進部局による再生エネルギー、サーキュラーエコノミー等の推進と両輪を成して、サプライチェーンやまちづくりにおけるCO2削減技術の開発等の推進を図るもので、その中核プロジェクトに「ゼロカーボンバイオ産業」を位置づけている。
- 温室効果ガス排出量(2016年時点)は、世界全体で50Gt(50,000,000千t)、うち京都府全体で16Mt(16,426千t、うち製造業3,426千t、農林水産業155千t)となっており、削減目標は、「京都府総合計画」では46%(2030年)としている(「ゼロカーボンバイオ産業」では、現行技術で0.1%(農林水産業の10%)の削減をするためには、紅色光合成細菌を27t/年生産することが必要)。
- 農水省「みどりの食料システム法」(有機など環境との調和)への対応として、2023年初期に基本計画の策定、その後は個別プロジェクトの認定(設備投資税制、農地転用等の手続ワンストップ化など)を進めていくこととなっている)。
- 金融機関等と連携した中小企業の脱炭素化京都コンソーシアムの形成も進めていく。
- イオングループとの提携では、廃棄から再生まで考慮したリユース容器の導入を府内イオン8店舗での展開を予定している。
量産・応用技術開発とカーボンプライシング
今後は、量産・応用技術開発とともに、経済効果の試算やカーボンプライシングに着手してまいりたいと考えています。
- 経済効果の試算は今後のテーマであるが、市場は着実に伸びていくと思われる(CO2分離・カーボンリサイクル市場規模は、2019年4兆8,569億円に対し、2030年5兆6,928億円)。
- カーボンプライシングは、事業者にCO2排出を減らす工夫・努力を促す「インセンティブ・デザイン(ゼロカーボンものづくり(企業のイノベーション))と、事業者や消費者が炭素の価格を見てCO2を削減する行動を選択するという行動を促す「価値の外部性(ゼロカーボンまちづくり(社会の変革))」の両面で重要である。