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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和3年3月29日、ものづくり振興課 足利・橋本)
WINDシミュレーション株式会社(精華町)の中田代表取締役にお話をお伺いしました。
--先般の「スター創生」でもプレゼンいただいたのですが、改めて御社の概要から教えてください。
中田)私は2019年9月まで約35年間パナソニックに在籍し、その年の10月にこの会社を立ち上げました。機械制御、光学、流体、光ディスク、燃料電池、水素関係を専門分野として、特許出願も約300件に上りますが、この会社では以前から目を付けていたことの一つ、すなわち、迎角制御式の垂直型風車の開発等に取り組みます。
--風力発電ですか。
中田)風力発電は、世界では既に再生可能エネルギーの約50%を占めていますし、2050年には世界全体の発電量の25%に到達すると見込まれています。しかし、国内の発電コストは世界平均8.8円/kWhの約1.6倍と高い上に、暴風対策等の技術的課題があり、あまり普及していません。
--そうした課題を解決しようということですね。まず、「迎角」というのは何ですか?
中田)気体の流れに対して、翼などの物体がどれだけ傾いているかということです。飛行機の翼の断面を思い描いて下さい。膨らんでいる上側の方が気圧が薄く「揚力」がかかりますね。一方で、気流にぶつかるため「抗力」がかかります。うちわを仰ぐ際などのイメージです。この揚力と抗力のバランスに応じて制御するということなのです。
--ん!ということは、風車の羽も、飛行機の翼のように揚力を用いているということですか?
中田)そうです。100年前から、そうです。
--そうなんですか!知りませんでした。子どものおもちゃの風車のように、風の力だけで回ってると思ってました、お恥ずかしい(笑)。その揚力等を制御する、ということですか、なるほど!
中田)理論計算の結果、迎角制御により通常で10%、暴風時で50%以上、発電量がアップすると考えています。
--すごいですね。しかし、このグラフ、一定の風速を超えると、右肩下がりになるのはなぜですか?
中田)「風速」ではなく「平均風速」と記載してあるのがミソなのですが、まず、風車は強風では壊れてしまうこともあり、強風になると止めます。正確にはファーリング制御と言って、風を正面から受けないように軸をずらして回転数を落とすなどの制御をします。それをせず電源だけを落としてしまうと、ニュースにもなったような風車が折れてしまう事態にもなりかねないので、ファーリング制御をするために電源は落とさないようにするのですが、話を戻せば、強風になれば風車の動きを抑制するわけです。
--なるほど。
中田)風速とは常に変化し、そうしたばらつきのある風速の集合体として「平均風速」としているため、平均風速が高まるほど、風車の動き、すなわち発電を抑制するケースが増えて、右肩下がりになるのです。
--なるほど!
中田)しかし、これを右肩下がりにせずに、強風になっても、発電量が落ちないように、グラフが高い発電量のところで水平になるようにしたいというのが当社の考えであり、そのために迎角制御と翼径制御を行うのが当社の新技術なのです。
--具体的にはどういったものですか?
中田)迎角制御は、下図のようなイメージで、風速が遅いほど迎角の変化は大きく、暴風では発電効率を落とすということになります。
--風車みたいな形ではなく垂直型なのですね。
中田)風向が変化しやすい日本では、垂直型が有効なのです。
--なるほど。動かすのはモーターで、ですか?
中田)そうです。この図は最大効果を生む角度を図示したもので、左側の図では一番下のところで真逆に入れ替わっていますが、実際には徐々にスムースに角度を変えるということになります。
--なるほど。
中田)また、翼径制御は、次のようなイメージです。
--迎角制御にしろ、翼径制御にしろ、非常に複雑な制御が必要になろうかと思うのですが?
中田)CFDによる流体解析で、様々なパラメータにより緻密に計算をしており、この理論式と制御ソフトウェアを構築できる点が当社の強みだと思っています。
--素晴らしい。この効果を整理するとどういったことになりますかね。
中田)こうした迎角制御と翼径制御により、従来の水平型、あるいは垂直型の風車では不可能であった暴風での発電が可能となるとともに、発電効率も先ほど申したように高くなります。
--いいですね。
中田)そうして効率が良いため、翼の数を減らすことができ、それによってコストも低く出来ますし、小型で騒音も抑えられます。
--こうした小型で効率が良い風力発電が実現すれば、夢が広がりますね。
中田)そうです。まず、海外で多く普及している風力発電、特に洋上大型風車のファーリング用非常用電源として活用することができます。
--なるほど。
中田)また、太陽光と相性が良いのです。天気が悪い時こそ風力でよく発電できますから、家庭用、スマートタウン用として最適です。
--いいですね。
中田)小型で街中に多く設置されれば、風速センサ・ネットワークとしてドローン等の安全航行にも寄与できます。
今後の展開が楽しみです!
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