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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2022年2月18日、ものづくり振興課 足利・稲継)
高橋練染株式会社(外部リンク)(京都市右京区)の高橋聖介代表取締役社長、松田隆年社長秘書兼総務部・法務部部長にお話をおうかがいしました。
--まずは御社の概要を教えてください。
松田)1948年創業、30名超の体制で、主に生地整理加工業を営んでいます。整理加工業というのは、生地屋、染屋、整理加工屋、縫製屋という服地メーカーの外注工程の一角を担っているものです。
--具体的にはどういう加工を行うのですか?
松田)ごく簡単に申しますと、薬剤を投入して洗い、薬剤を熱蒸着させて乾かし、機能性を付加して巻き上げるという流れです。
--機能性というのは?
松田)いろんな種類があります。例えば、化合繊維の布帛・ニット素材に対して特殊彫刻ロールにて、生地表面に凹凸をつけることにより、ジャガード生地のような質感に仕上げる「デジタルエンボス加工」などの「表面加工」、薬剤だけでなく特殊タンブラー機にて風速約60km/hの風とともに加工生地を一定時間衝突板に当てることにより、然繊維の布帛、ニット素材に対し、スーパーソフトな風合いと、適度な膨らみ感を与える「リラッシュ」などの「風合い加工」、キシリトールを生地にイオン結合させた加工で、水に溶けると冷たくなる性質を利用し、体内の水蒸気で生地に清涼感を与える「I-9」などの「機能性加工」などです。
--そうした機能性加工から生まれたのが「DEOFACTOR」ですね。
高橋)はい。鉄、カリウム、アルミニウム、チタン、ゼオライトなどの100%天然ミネラルの無色無臭成分で、衣類や繊維製品に加工します。それらミネラル成分が触媒となって、空気中の水分や酸素からOHラジカルを生成します。
--活性酸素ですね。OHラジカルやスーパーオキシドは不対電子を有するので、他の分子から電子を奪い取って酸化させるものですね。
高橋)そうです。生成されたOHラジカルは周囲の菌や有害物質などすばやく働きかけた後、水や酸素に戻り空気中に還ります。こうして「制菌」、すなわち、菌数を減少させるのです。
--「制菌」ですか?!
高橋)「抗菌」が、生地表面上の細菌を防臭する程度に、増殖するのを抑制することであるのに対し、「制菌」は、雑菌をそれ以上増やすことなく、菌数を減少させることを差します。DEOFACTORは、一般社団法人繊維評価技術協議会が「使用する加工剤と製品」の両面から安全性と性能を評価しクリアしたものを認証しているSEKを取得しています。具体的には、黄色ブドウ球菌、肺炎かん菌、モラクセラ菌(洗濯物の生乾き臭の原因菌と言われるもの)、大腸菌、緑のう菌、MRSA等の制菌を確認しています。また、特定のウイルスの数を減少させるSEK「抗ウイルス」を取得している製品も開発しています。
--原理は光触媒に似ているのですね。
高橋)そうですね。ただし、光触媒は光(紫外線)がないと反応しませんが、DEOFACTORは、夜間はもちろん、クローゼットやトランクルームなど光が届きにくい場所でも空気中の水分と反応し、イヤなニオイを分解し続けます。臭いとは菌が分解した際に出るガスですから。
--なるほど。
高橋)今回、木野織物株式会社(外部リンク)(京都市)とともに、京都府・京都産業21の「産学公の森推進事業」に取り組み、開発、事業化を進めています。
--なるほど。
高橋)既に様々な分野の大手企業様と組んで、布マスク、ソックス、インナーウェア、制服、コートなどにDEOFACTOR加工を施しています。
--しかし大手と組むと名前を出せないのは?!
高橋)いえ、全てDEOFACTORの名前を出していただいています。
--素晴らしい!むしろDEOFACTORが付加価値を表しているわけですね。
高橋)また、含浸加工だけでなく、塗布加工も行っており、病院、遊園地、公共施設等での導入も進んでいます。
--いいですね。
高橋)他者との協業も進めており、例えば、阪神園芸様ではDEOFACTORを塗布加工したフェイクグリーン(造花・人工樹木)を取り扱われています(「デオファクターグリーン(外部リンク)」)し、キャンピングカーへの施工もトイファクトリー様との協業でスタートしています。
キャンピングカー ライフの専門誌「AUTO CAMPER」2021年9月号で紹介
-こうした新技術においては、計測・測定もポイントだと思うのですが。
高橋)そのとおりです。自社で微生物蛍光画像測定機の導入を進めており、全国で数十人しかいない技師資格者のうち当社が6名を占めています。
--素晴らしいですね。塗布には塗布の様々な課題があったかと思いますが、熱心に研究開発をなさってきたわけですね。どうして、生地整理加工業の御社がここまで?
高橋)私は、「世の中に1mmでもお役に立つ会社」が口癖で、20年間やってきました。初代は戦後の焼け野原の中で、何がこの国に必要かを考え、戦前に丁稚奉公で学んだ和装産業の精錬業を創業しました。私の父である2代目は、市場調査の中から、新興勢力である洋装業界は整理加工をわざわざ他府県に依頼していることを突き止め、洋装産業界で叶わなかった加工を和装精錬技術で可能にしました。しかし、私が入社した頃には、洋装産業は海外生産海外縫製の時代に突入しており、同業他社も次々と廃業倒産に追い込まれていました。そんな中、父と父の弟の専務を、私と私の弟が若くして引き継ぐことになりました。そうした中で、たとえ海外生産依存率が99%になっても持続できる会社にするためには、と生産改革や加工の付加価値向上に関し日々励んできたのです。
--今後の展望はいかがでしょう。
高橋)社会に蔓延する感染症の影響が色濃くなる中、今年2021年に、ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)の「STOP感染症大賞 最優秀賞」を受賞、関西ものづくり新撰2021に選定され、同時に「安心空間賞」を受賞するなど、社会に必要とされる事業を営ませていただいている責任を強く実感しています。会社設立から70有余年、人々の安心・安全・快適な暮らしを未来につないでいくため、高橋練染は衛生トータルマネジメントの高みを目指し、精進していきます。
今後の展開がますます楽しみです!
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