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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日 平成28年2月15日、更新 平成30年1月22日 聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
経済産業省 近畿経済産業局より関西ものづくり新撰2018認定 2017.10 日本企業初 スイス大使館公式サイトに当社が掲載されました! 2017.12 経済産業省より地域未来牽引企業2017に認定 第二種医療機器製造販売業許可(許可番号25B2X10007), 医療機器製造業(登録番号25BZ200034) |
本社外観
株式会社大木工藝(外部リンク)の大木社長にお話をおうかがいしました。
―炭素の様々な応用製品開発をされてらっしゃいますね。
大木) はい。炭素には原料や製造方法によって、ナノカーボン、ナノチューブ、グラファイト、電気伝導、熱伝導、多孔性など様々な特性が出ます。大きく分類すると、ダイヤモンドに代表される分子が六角形の結晶構造をなす結晶化した高密度炭の「定型炭素」と、備長炭・ヤシガラ炭など樹木炭の分子の結晶構造が定まらない多孔質の「無定形炭素」がありますが、前者については、「高密度炭素」、後者については「多孔質炭」それぞれの特徴を生かした製品を開発しています。
株式会社大木工藝 香川県さぬき市高機能炭素製造工場
―超高密度炭素とは?
大木) ダイヤモンドの分子構造に近いのですが、カーボン粉末をゴム袋に入れて水槽に入れ5万トンの水圧を全方位からかけて固形化、約3000℃で約90日間焼成すると結晶化して、全方位に導電性と熱が拡散する「等方性高密度炭素」となり、遠赤外線吸収・放射率の高い理想黒体(炭素純度99.9%)になります。当社の主な商品はこの固体を精密に削り出して製造しています。
―多孔質活性炭とは?
大木) 炭の中に無数のミクロ・マクロの穴があります。こういった構造を「多孔質」といい、普通の炭の穴を広げると孔の比表面積は通常1gで約300平方メートルですが、ヤシガラ炭は1,000平方メートルくらいです。これを水蒸気か、アルカリで賦活すると2,000平方メートル/gの活性炭になります。大木工藝の活性炭は1g約3,600平方メートルもあり世界最高峰です。
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―超高密度炭素を使った製品にはどんなものがありますか?
大木) 多種多様あるのですが、医・建材・エネルギー・衣料・農業・食・宝飾品・美容と幅広いジャンルを取り扱っております。中でもカラコル・ネックレス・万年筆・メガネ・節電クロス・球状活性炭などが主力商品です。ほとんどの商品は特許を取得しております。現在、海外特許を含め52件です。申請中や意匠・商標を含めると170件以上になります。製品は60%が自社のブランド・他社からのOEM商品が約40%を占めています。第56回「日本生体医工学会大会」東北大学医学部において東京電機大学より炭素材を使った装身具(腕時計・メガネ)の生理的影響の評価について論文発表もされています。
炭素ヘルスケアネックレス
―たしか遠赤外線協会の認定も受けてらっしゃいましたね。
大木) はい。こちらも主力の炭素ヘルスケアネックレスです。京都府立医科大学と3年間の共同研究で共願特許を取得。体温等で暖められた炭珠により、未装着時と比べ血流アップと保温性が向上していることが認定されました。炭珠はダイヤモンドに近いカーボンの表面をDLCコーティングし、安全で、きらきらと上品な輝きを持つネックレスです。11年間で400億円を越す大ヒット商品で現在もヒットを継続中です。平成25年度経済産業省後援・一般社団法人遠赤外線協会より社会貢献が大きいと優秀製品・技術賞を受賞しました。
ナノダイヤ・マグネックレス 愛I Ⓡ と自鳴琴飾箱:オルゴール(日本電産サンキョー株式会社とコラボ)(写真左上)
万年筆 うつやかⓇ(ペン先:セーラー万年筆株式会社・蒔絵:株式会社象彦とコラボ)(写真中央上、右上)
カーボン美容ローラー(フルーラⓇ)幅・角度調節可能(下3枚とも)
―最新で開発されてらっしゃるものにはどんなものがありますか?
大木) 歯ぐき専用ツール「カラコルⓇ」です。京都府立医科大学との7年の研究により共願特許を日本・中国・米国で取得し、平成29年12月より販売しています。歯ぐき専用ツール「カラコルⓇ」は、温熱と振動により歯肉のマッサージを行うものです。炭素ヘッドにダイヤモンドライクカーボンをイオン注入しているので、より安全です。温熱ヒーターには(株)村田製作所に開発依頼したPTCサーミスタを使用(ALL Made in Kyoto)、遠赤外線の放射率をアップ、内蔵された音波バイブレーターで歯肉の血流を促進します。電源はAC100V、USB、充電式バッテリーなど使用環境によりセレクト可能です。
カーボンブラインド(写真左)、天井には天井用デコカーボクロス(写真中央)、デコカーボ壁クロスCD-3(写真右)
― 一方、多孔質活性炭を使った製品にはどんなものがありますか?
大木) カーボンウェーブⓇ・節電シート「Deco CarboⓇ」があります。龍谷大学 理工学部物質化学科 青井教授と共同開発を初めて平成29年の10年目で完成しました。壁や天上・床に貼るだけで約27%節電効果があり環境にやさしい、不燃性で安全、悪臭を半永久的に吸着分解、電磁波遮蔽、シロアリもよりつかず、まさに五拍子揃った脱二酸化炭素革命の申し子といえる商品です。薄く窓のブラインドや保冷車庫内・船内・車内・電車内にも最適です。さらに平成27年度「ナノカーボンファイバーを用いた電気自動車用急速充放電キャパシタ電極の開発」が経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業「サポイン」に認定され世界最先端の電極の完成が目の前です。
― さて、特許取得数50以上でらっしゃるなど様々なアイデアを生み出される秘訣はなんですか?
大木) 私は初め直感で自分が欲しいと思う物を「勢い」と「スピード」で先ず作ります。創造企業に「直感」「勢い」「スピード」がなければただの零細企業です。要するに世の中に必要な物を探求し、潜在意識に眠っている物と組み合わせて独創的にするだけです。無から有は生まれません。
社長の創業当時(昭和45年)と現在
―逆に、多くの事業を抱えることに負担はありませんか?
大木) 創業47年の間、多くの開発型ベンチャー企業と同じく紆余曲折の歴史を歩んできました。弊社は二つの事業戦略をとっています。1つはニッチを基本とする戦略、2つ目は炭素を機軸とする戦略です。1つの市場でNo.1商品を1つ持つことで最低限の売り上げが確保できます。また、知財を必ず押さえています。これで大手とも対等に話ができます。大手と競争せず、異なる市場でNo.1商品をそれぞれで持つと売り上げ・安定性も増し、長期永続も可能となり決して負担でなく財産です。
―炭素に目を付けられたのはどうしてですか?今後の展望と合わせて教えてください。
大木) 100年前にセルロイドが発明されて以来、社会に便利さと豊かさを与えてきましたが、反面、世界の海がプラスチックのスープと言われるほどに汚染されています。今こそ自然高分子を真剣に考える時だと思います。それが炭素です。
炭素と同社の無限の可能性がどのように広がっていくのか、今後ますます楽しみです。
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