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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2024年1月15日、ものづくり振興課 足利・安達・中原)
メトロウェザー株式会社(外部リンク)(宇治市/古本代表取締役/社員約40名)が開発した、小型ドップラー・ライダー「Wind Guardian」は、都市の風況をリアルタイムに可視化し、実測だけでなく予測が可能です。
これによりドローンをはじめとするエアモビリティの安全なインフラ構築の実現、集中豪雨や突風など防災分野への貢献を目指しておられます。
なぜ、同社ならそれが実現できるのか?
既に、2021年には、京都で世界に先駆けて京都市内2か所に設置し実証実験を進めておられるほか、「産学公の森」補助金を活用して車載型ライダー第1号機も開発されました。さらに、大阪で万博会場上空の計測可視化、米国NASAのプロジェクトへの参画も進んでいます。
(2021年9月30日、ものづくり振興課)
ニュース記事:宇治市の京大発ベンチャー企業がNASAの研究に参画、アメリカ総領事が企業を訪問!空飛ぶ車が安全に行き来できる世界に(外部リンク)
(掲載日:平成30年1月15日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
メトロウェザー株式会社(外部リンク)(宇治市)の東代表取締役CEO(理学博士)と、京都大学生存圏研究所 大気圏精測診断分野 助教で同社取締役の古本先生(情報学博士)にお話をおうかがいしました。
現在(2021年)は、古本代表取締役CEO、東取締役という体制です。 |
―まずは、事業の概要を教えてください。
東) 2015年5月に起業した京都大学発ベンチャーで、現在はドップラー・ライダーを用いて風を計測しています。上空は既存のレーダーで捕捉できるのですが、特に地上100m以下の低いところは、建物などの障害物も多く、実はあまり解明されていない領域なのです。
―ドップラー・ライダーですか。レーザー光ですね。
古本) ライダーの中でも、対象物の移動速度を計測できるものです。ドップラー効果は、有名な救急車のサイレンの音でご承知のとおり、発生源が近付く場合には、波の振動が詰まって周波数が高くなり、遠ざかる場合は振動が伸ばされて低くなるものですね。風の計測においては、レーザー光を空気中に発射して、PM10やPM2.5などの浮遊粒子状物質からの発射光を受信するのです。
―普通のライダーとは性能レベルが全然違いそうですね。
古本) レーザー技術、信号処理技術など、多くの技術の組み合わせですが、現在、開発競争中で、既存市場に参入し奪取しようとたくらんでいるため“潜伏状態”です(笑)
―ホームページも作ってらっしゃらない理由がわかりました。技術的な点はこれ以上お聞きしないようにしましょう(笑) では、低空領域というのは、具体的にはどういう用途があるのですか?
東) 例えば、空港の風を正確に計測するということですね。離発着、特に着陸時は最も安全に気を遣う場面ですが、そうした、航空機が離発着する高さにおける風を正確に把握しようということです。あるいは、海外で多いのが、海上風力発電での利用です。
―なるほど!
東) 他にも工場の煙突からの煙の拡散状態を計測し把握したいといったお話もありましたし、天気予報での活用もあり得ますね。私ども2人とも、もともと気象の研究をしてきたというのもありますし(笑)
―あっ、名刺に「気象予報士」の肩書もありますね!本日おうかがいしている、こちらの京都大学生存圏研究所大気圏精測診断分野で何をなさっているのですか?
古本) 大型の大気レーダーを幾つか有して、国際宇宙ステーションが約300キロメートルよりも遥かに高度な地上約500キロメートルまでの超高層大気の観測等を行っています。
―大気レーダーですか。電波ですね。
古本) 滋賀県の信楽に「MUレーダー」、インドネシアのスマトラ島に「赤道大気レーダー」があり、常に世界一高機能な大気レーダーの一つとして、超高層物理学、気象学、天文学、電気・電子工学、宇宙物理学など広範な分野に寄与してきました。発射する電波は、テレビ局が10個分くらいの強力なものです。また、今では他でも見受けるようになりましたが、世界で初めてアクティブ・フェーズド・アレイ方式を導入し、アンテナの基部にそれぞれ半導体送受信モジュールを配置しており、電子制御によってアンテナビームを任意の方向にすばやく向けることが可能で、風や乱流の立体構造の把握に役立つものです。
―そうなのですね。
東) このように高層領域を得意としてきたのですが、やがて、逆に低層域を観測したいと思うようになりました。しかし、レーダーではどうしてもうまくいかず、レーザー光、すなわち、ライダーにシフトしてきたというわけです。レーザーのノウハウは使えるはずだということで。
―起業の経過について教えてください。
東) 「真の大学発ベンチャーで成功したい」と思ったからです。日本の若手研究者をとりまく環境は厳しさを増しています。研究を支援する資金はますます下がっていますし、「本当に意味ある研究なのか」「社会実装してなんぼ」という風潮がますます強まっており、結果として眠っている研究が多いわけです。
―そう聞きますね。
東) また、アメリカの有名大学の教授に聞いたことがあるのです。「教授では食べていけない」と。それくらい、あちらの物価においては、給料が高くないわけです。ですので、ベンチャーを立ち上げて、それで得たお金で研究をするというサイクルを踏むそうなのです。こういう「社会実装→資金獲得→大学での研究→社会実装」という「正のフィードバック」を本気で日本でも成功させたいと思ったのです。
―素晴らしいじゃないですか!
東) しかし、最初は大変でした。起業準備期間の1年間は、失業保険をもらいながら、親戚にもお金を借りてなんとか起業をしたというのが実態です。そしてなんとか研究開発費をいただけるNEDOの採択を受けたというわけです。大学に研究員として籍を置いていますが、雇用関係はありません。
―まさしく「大学発ベンチャー」ですね。しかし、よく大学を辞めて、茨の道に進まれましたね。
東) 実は、妻の母に後押ししていただいたところがあるんです。「いつ大学やめるの?もっとリスクを取って進んでいけばどうか」といったことを言っていただいたのです。
―では、最後に今後の展望はいかがでしょう?
東) 引き続き大学近辺に居て、今の会社を大きくして、ベンチャーらしく、また次のことにチャレンジしたいですね。
今後の展開が楽しみです!
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