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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
※記事中の企業名は訪問当時の名称です
(掲載日:令和2年1月22日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社黒坂塗装工業所(外部リンク)(宇治田原町)の黒坂俊之代表取締役社長にお話をおうかがいしました。
--まずは御社の概要を教えてください。
黒坂)塗装業務を行っております。私の祖父が輪島塗の漆器職人でして、この会社は、父が1951年に創業し、現在40名弱です。自動車のドア廻り、建機の外板、鉄道車両の内装や外板、OA機器・家電等をはじめ様々な機械部品関係の塗装を行っています。
--私もペンキを塗ったりすることはあるのですが、色の元である「顔料」、膜の元となる「樹脂」や「硬化剤」等が、溶剤(油)に溶かしてあれば油性、水に溶かしてあれば水性、といったことくらいしか知りません。
黒坂)塗装の目的は、対象物を錆による腐食から防ぎ、耐候性・耐水性・耐薬品性など用途に応じた機能で付加価値を上げ、着色によりデザイン性を高めて製品として送りだすことです。そのために、例えば、色の美しさを追及する「上塗」の前に、発色しやすいように「中塗」を行い、さらには、それらの塗装が対象物から剥がれないようにする、しっかりと付着させることを目的に、下地となる「下塗」など、塗装を重ねていきます。
--大手メーカーのお仕事もなさってらっしゃいますし、誰もが知ってる有名鉄道車両等も関わってらっしゃいますが、直接依頼があるのですか?
黒坂)直接もありますし、板金屋さん経由のもありますよ。
--そうしてお声がかかる秘訣、御社の強みは?
黒坂)40名弱と規模もありますので、小ロットから大ロットまで対応できるといことと、カチオン電着塗装、溶剤塗装、粉体塗装のラインやパーカーライジング加工まで、トータルで対応できることですね。カチオン電着塗装は、メーカーさんが専用ラインを持っているほかは、関西でも数社しか対応できるところがありません。
--カチオン?
黒坂)下塗、下地調整でよく用いられるものですが、プラスの電荷をもった陽イオンという意味です(逆がアニオン)。カチオン電着塗装は、対象物を塗装液に浸漬して100~200Vの直流電流を流してマイナスに帯電させ、電気泳動によって、プラスの電荷をもった塗料による塗膜を形成する塗装方法です。
--なるほど。
黒坂)被塗物の形状が複雑でも均一に、効率的に塗装をすることができるため、防錆方法として自動車部品・家電部品をはじめ、多くの製品に使われています。
--塗装液は水性?
黒坂)そのとおりです。これだけ大きなタンクですから、油性では危険です。水性だと乾燥など難しい面もありますし、吹付塗装等では油性が残っていますが、環境配慮等で自動車関係等でも水性へのシフトが進んできています。濃度は自動計測しており、常に一定の濃度を保つよう自動で追加注入する仕組みになっています。
--そうなのですね
黒坂)また、洗浄工程で溶液は回収して、無駄にしていません。洗浄に使う純水は、逆浸透膜(RO)方式の装置で水道水から作っています。
--電気めっきや溶融めっきの工程を想起してしまうのですが、めっきと違って樹脂を付着させるんですものね。
黒坂)はい。樹脂ですので、付着すると抵抗になりますから、厚くするのが難しいなど、独特の難しさがありますね。
--なるほど。
黒坂)一方、こちらは溶剤塗装ですね。溶剤で希釈した液状の塗料を、エアガンや自動塗装機を使ってスプレーし被塗物を塗装する一般的な塗装方法です。使用する塗料のタイプや色も豊富にあるため、用途に合わせて塗料を選択することにより、目的に合った性能を適切なコストで行えます。
--これが最もよくイメージする、「ザ・塗装」といった感じですが、自動塗装機、すごいですね。
黒坂)光学センサーで対象物を認識して動いています。まさに「プログラムレス」ですよ。
--なるほど。
黒坂)また、こちらは「静電粉体塗装」です。粉体塗装とは、有機溶剤や水などの溶媒を用いません。100%固形分の粉末状の粉体塗料を使用して、静電気により対象物に塗着させ、加熱融合させて被塗物に塗膜を形成させる方法です。塗装の環境規制の強化を受けて、環境配慮型塗装として、これからの発展が期待されています。
--そうなのですね。
黒坂)そして、こちらは「パーカーライジング加工」です。鉄鋼や亜鉛などの金属表面にリン酸亜鉛などの金属塩の薄い皮膜(ミクロンオーダー)を生成させるもので、塗装前処理として最適な方法です。塗膜が剥離しにくくすること、塗膜に傷が付いても錆が広がらないようにすることを目的とし、近年は、自動車を初めとした工業製品に広く標準的な塗装下地として採用されています。
--最後に今後の展望について、今、検討中で言えないこともたくさんあると思いますし、一言だけ。
黒坂)どんどん「未来の塗装」にチャレンジしていきたいですし、そのための「未来型工場」についても、いろいろ考えているところです。
今後の展開が大変楽しみです!
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