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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。
(掲載:令和2年12月2日 ものづくり振興課 牧、星)
株式会社今しぼり(外部リンク)(綾部市)の多田社長にお話をうかがいました。
-綾部で昔ながらのこだわりの製法で、醤油づくりをはじめられたきっかけを教えてください。
醤油や味噌といえば、昔は、各家庭で手作りしていましたが、現在は、大量生産された醤油が主流になっており、大豆から脂肪分を除いた「脱脂加工大豆」を使うことで生産効率を高められています。
また、アミノ酸などを加えて作られるものもあります。
そうした中で、私たちは、自然豊かな里山で、昔ながらの製法で、じっくり仕込んだ醤油を皆さんに味わってもらいたい、体験してもらいたいと思いたちました。
-所狭しと醤油樽が並んでいますが、そのこだわりの製法、本醸造醤油の作り方をお聞かせください。
まず、綾部で有機栽培された小麦を、丁寧に時間をかけて香ばしく炒り、石臼などで粉砕します。
また、大豆を一晩水につけ、柔らかくなるまで茹でます。大豆は、今しぼりのメンバーが育てたものや国産のものを使用しています。
小麦と大豆を人肌に冷まして樽に入れ、麹菌をまんべんなく振りかけて、72時間じっくり発酵させます。
こうして、できた醤油麹に沖縄の粗塩と水を加え、醤油のもろみとして仕込みます。
もろみは樽の中で発酵を続け、まずは乳酸菌による乳酸発酵が進み、味に深みを与え、香りを引き立てます。さらに、酵母菌が300種類もの香り成分を作る酵母発酵を続け、深い旨味と豊かな香りを生み出します。
仕込み後、櫂棒でかき混ぜる「櫂入れ」や別の樽に移し替える「天地返し」をしながら、美味しさを追求し、2年の熟成期間を経て、製品にしています。
-大事に育てた醤油を、「今しぼり醤油」をはじめ、「育てる醤油」「食べる醤油」などユニークな商品で提供されていますね。
「今しぼり醤油」は、工房で2年間じっくりと発酵熟成した、搾る直前の醤油もろみをお客様にお届けするものです。
届いて直ぐに、自分でもろみを搾って搾りたての醤油を楽しんだり、もろみをそのまま召し上がったり、いろいろな味わい方をお楽しみいただけます。
「育てる醤油」は、お客様自身が、昔ながらの醤油づくりを体験できるキットで、小麦と大豆に麹菌を培養した醤油づくりの原料と、ミニ樽となるビン、呼吸するための木の蓋がセットになっています。
作る温度や明るさなどの環境や発酵期間によって、お客様オリジナルの醤油に仕上がります。
「食べる醤油」は、「もろみ」を軽く搾り、オイルに漬けたものです。
この商品には、開封期限を設けています。(実際には、賞味期限として記載していますが。)
もろみが生きているので、発酵が進んで内圧が上がり、液漏れしてしまうかもしれないからです。
逆に、開封すれば長持ちするんですよ。
-開封期限ですか。通常は、開封すれば早めに消費するものですが、逆の考え方ですね。
そうです。他社の品質管理部門にいる友人に「こんな商品を考えているんだけど」と相談したら、「すごいことをするんだな」と驚かれると同時に、「常識を覆す商品だけど、おもしろいと思う。」とも言われました。
-「もろみ」って、こんなに美味しいんですね!芳醇な香りとまろやかで深いうま味が混然一体となって・・・言葉にできない美味しさです。
当社は、綾部で生きていくことを決めて、移住した者が、日々を暮らしていくためにスタートした会社です。
2017年に会社を立ち上げましたが、醤油を仕込んでから商品になるまで2年かかるため、なかなか資金が回収できず、経営状況が厳しくて、一時は解散しようという話も出たほどでした。
テレビ等で取り上げられたのをきっかけに、百貨店や老舗旅館、レストラン・料亭から引き合いがあり、徐々に取引先が増えて、ようやく軌道に乗り始めたところです。
当社の商品や理念に共感いただける方とともに、今後も地道に醤油づくりに取り組んでいきたいと思っています。
自然豊かな里山・綾部で、2年間、ゆっくりと仕込まれる手作りの醤油。
火入れもろ過もせず、生きているそのままの醤油。
里山のくらし、昔ながらのくらしを、醤油を通して感じてみてはいかがでしょうか。
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