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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和2年3月9日 ものづくり振興課 足立、足利)
イーグロース株式会社(外部リンク)(京都市)の今西代表取締役にお話をおうかがいしました。
--御社の概要を教えてください。
今西)2008年設立、現在8名体制で、3D-DICOMの画像処理AIなどの医用ソフトウェア研究開発を行っています。
--DICOMとは?
今西)Digital Imaging and Communications in Medicineの頭文字でして、CT、MRI、超音波画像処理装置などの画像発生装置、サーバなどの画像補完装置、画像診断装置、画像印刷装置などといった様々な機器の間で、デジタル画像データや関連する診療データを通信したり、保存したりする方法を定めた国際標準規格のことです。
--そうなのですね。
今西)例えばCTでX線照射直後に検出器が受け取る投影データ(生データ)はデータ量も大DICOMは、生データそのものではなく、機器間で通信できるよう再構成した画像データであり、撮影日時をはじめとする様々なタグ付けなどもなされているものです。
--なるほど。
今西)特に放射線治療分野においては、ガンマナイフやリニアックなどを用いた「放射線治療」の前に、CT等で撮影し、その画像を基に「治療計画」を立てて、適切な放射線量であるかなどの「計画の検証」をして、といった具合に、他の診療部門と比較しても、放射線治療に特化した多くの情報をDICOM内に保存するための「DICOM-RT」という拡張規格があるくらいで、この規格に対応する機器はかなり限定的です。以前は、病院の放射線治療部などバックヤードのワークステーションで保存されていても、病棟で診断や患者説明時にそれをデジタルで見ることができず、プリントアウトして使うのが一般的でした。。
--そうなのですね。
今西)当社の3D放射線画像・治療計画画像解析ツール「Growth RTV」では、まず、「Viewer機能」として、DICOM-RTフォーマットにも対応した各断面表示、2D・3D輪郭表示、照射野表示、線量分布表示など充実の基本表示機能を搭載しています。
--なるほど。
今西)なお、GPUを利用した医用画像三次元高速表示ビュアーなども製品として開発しており、ユーザの声に応じて、様々な保有技術を「Growth RTV」内に日々追加してしています。
--では、AIを用いた機能についてはいかがでしょう。
今西)例えば「臓器抽出機能」ですね。深層学習により、ワンクリックで対象臓器の三次元領域を高精度に抽出します。胸腹部臓器(体表、肺(L/R)、肝臓、腎臓(L/R)、脊柱管)について、畳み込みニューラルネットワークによって教師あり学習で学習しています。また、エクスポート可能であり、3Dプリンタでの立体造形・他社製CADと連携も可能です。
--おお!
今西)あるいは社内の研究開発でも「Growth RTV」を利用することで加速されており、その1つの成果が「超解像機能」ですね。被ばく線量を抑えてCT撮影された場合、積層した3D像には、線形補間が原因で、ジャギーが生じやすいです。そこで、「Growth RTV」で大量に抽出・加工されたデータを用いて、疎な3D-CTから密な3D-CTへの補間を学習させることで実現しています。
--なるほど。
今西)また、京都府・(公財)京都産業21の「次世代地域産業推進事業」で現在進めているものですが、「金属アーチファクト低減機能」もAIで開発しています。金属アーチファクトは、口腔CTに多く含まれるのですが、X線吸収率が低い物質中に、金属などのX線吸収率が非常に高い物質が点在する場合や、撮影方向によりX線通過距離が大幅に異なる場合などに、よく発生します。CT装置に低減機能がない場合や低減が不十分な場合、数十分から1時間程度掛けて手作業で除去することが一般的ですが、本製品ではAIが自動でアーチファクト部を認識して自動修正します。学習アルゴリズムはGAN(敵対的生成ネットワーク)を用いています。
--おお!
今西)なお、医療分野ではGANのメリットは大きいのではないかと思います。と言いますのも、まず、本来病気のBefore、Afterのペア画像がほしいところですが、病気になった後は画像を撮影しても、病気になる前の画像ってみんな撮影しないから、ないですよね。GANならペア画像がなくても訓練できます。
--なるほど。
今西)それに、忙しい専門医は教師データを作る時間もありませんが、GANなら明確な教師データは不要です。そして症例によっては、そもそもデータ数が少ないのもGANなら疑似症例画像を生成できます。
--「Python連携プラットフォーム」というのもありますね。
今西)DICOMは、C++で書かれていて、Pythonに親しんでいるAI技術者、研究者には扱えないことが多いので、そうした方々のために連携基盤を用意しています。こちらは、京都市・ASTEMの「京都発革新的医療技術研究開発事業」でご支援いただいたものです。DICOM-RTの解析・評価エンジンから構築しています。これが全てのベースになるものですね。
--いいですね!いろいろな開発をなさっていますが、御社の強み、御社サービスの強みはどの辺りにあるとお考えですか?
今西)まず、企業の強みとしては、国内企業の中でもかなり高いスキルで医療画像を扱えることだと思いますね。私自身は大学院在学時から医用画像処理、医用VRを専門に研究してきました。競争力のある製品を開発できたおかげで、薬事の対応等においても製造販売を担当する協力企業ができております。
--なるほど。
今西)また、研究支援製品の特徴としては、医用AI開発にかかる面倒かつ煩雑な前処理である3D医用画像のデータ抽出・処理支援エンジンです。2D一般画像や医用画像については既にたくさん支援エンジンがありますが、3D医用画像を簡単に扱える製品はほぼないんじゃないでしょうか。
--しかも、サービスとしてきちんと形になっているものが多いですね。
今西)前職はソニーに勤めていました。同社は、スペシャリストが多い上に、担当するユニットについて、設計、開発や、販売後のバージョンアップ対応まで、すべての工程を経験させてくれ、大変いい勉強になりました。
--さて、最後に、御社のお取組みは「医用」というイメージがあるのですが、産業用等でもご相談に乗っていただけるのでしょうか。
今西)はい、もちろんです。実際に既に相談も多いです。産業用、ロボット、自動運転など、私自身も関心を持っていますし、ぜひご相談ください。
今後がますます楽しみです。
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