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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年5月1日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成18年度経営革新、24年度・26年度知恵の経営の株式会社キャビックの兼元社長にお話をおうかがいしました。
―タクシー、福祉など大変幅広く展開されてらっしゃいますね。
兼元) 「移動」「介護」「環境」をキーワードに事業を展開しています。「移動」については、タクシー事業、民間車検・福祉車両整備などの整備事業、福祉施設や病院などの送迎業務を行う自家用自動車運行管理業務を行っています。「介護」については、介護施設「すぃーとハンズ」の運営、デイサービスやグループホームなどの居宅施設事業、「あんしん駆けつけサービス」などの福祉事業を行っています。「環境」については、グリーン経営認証やエコカーの導入など環境配慮に努めた経営を目指しているということです。
―ほかに先駆けた取り組みをされてこられましたね。
兼元) 昭和36年創業、翌37年にタクシー事業を開始して以降、昭和52年に京都府内初の「福祉タクシー」認可、平成10年に患者搬送事業者第1号認定(京都市消防局)、平成11年に全国初となる65歳以上の会員10%割引制度開始、平成17年に全国初となる「ケア輸送運賃」認可、平成19年に京都府内初の「24時間対応訪問介護」(在宅ケアサービス)開始など取り組んでまいりました。
―そして、さきほどの「移動」と「介護」。この掛け合わせで御社ならではのサービスを展開されてますね。
兼元) 「福祉タクシー」では京都市福祉タクシー共同配車センターが当社内に設置されています。そのほか、介護保険制度に基づき、ケアマネージャーのケアプランにより自宅から病院までの移動と乗降介助を行う「介護タクシー」、介護保険外で独自に外出支援を行う「ケア&ケアタクシー」、ご高齢者、障がいをお持ちの方など向けのケア付き日帰り旅行「ケアたび」なども行っています。
―まず、「24時間対応型訪問介護」や「あんしん駆けつけサービス」とはどんなものですか?
兼元) 「24時間対応型訪問介護」とは、ケアプランに基づいた定期巡回や、ご利用者宅から当社コールセンターに直結した緊急コールによる随時訪問で、在宅での介護サービスを24時間365日提供しています。「あんしん駆けつけサービス」は、介護保険外で24時間の緊急コールに対応するものです。普通は24時間介護福祉士を待機させておくことが難しいのですが、タクシー事業を行っている当社には、まず24時間対応のコールセンターがあります。また、24時間市街を駆け回っているタクシーがあります。そして、コールセンターにもタクシードライバーにもヘルパー2級(介護職員初任者研修)を取得している者が多くいます。こうしたインフラと人材を活用することで実現しています。
―なるほど。どういうコールがあるのですか?
兼元) 「トイレで立ち上がれなくなった」ですとか「ベッドから落ちてしまって動けない」ですとか、様々です。在宅での介護を必要とする高齢者の方は、自宅で転倒したり急に病状が悪化したりといったリスクを常に抱えながら生活をされていますし、特に独居の場合は自力で助けを求めることも困難な場合があります。
―どういった仕組みでしょうか?
兼元) 電話回線につながるハンズフリータイプの「コール端末機」をご家庭に貸し出します。身に着けていただける「ペンダント式のコールボタン」もあり、コール端末機から直接か、コールボタンはコール端末機を介して緊急コールをいただければ、コールセンターと話ができます。コールセンターではGPSシステムでヘルパー2級資格を有する「ケアドライバー」を迅速配車するというものです。また、このサービスの他に認知症の方に小型GPS発信機を身に着けていただき、徘徊された場合にコールセンターで本人の場所を特定し、家族、警察やケアマネージャーにお知らせする「徘徊高齢者あんしんサービス」も受託事業で行っています。
―次に、「ケア輸送運賃」や「ケア&ケアタクシー」とはどういったものですか?
兼元) 介護保険制度の通院等乗降介助(介護タクシー)は、通院時に本人しか利用できないなどの制約があります。また、通常のタクシー運賃には乗降介助が含まれません。そんな中、ご利用者から「介護保険外でいいから買物や病院に行けるサービスを」という声を聞いた乗務員の報告がきっかけで始めたのが「ケア&ケアタクシー」で、一人二役で介護と輸送を一体的にサポートする介護付き外出支援サービスです。ご自宅での着替えなどの介護から、お出かけ先での介護、帰宅後ご自宅でくつろがれるまでしっかりサポートします。
―すばらしい。
兼元) ただしそのために、運行の行き先を介護保険に縛られないとか、時間制の貸切運賃を「車外」である自宅や病院での介助まで拡大するとか、まったく新しい枠組みを構築する必要があり、全国で初めて認可されたのが「ケア輸送運賃」です。移動は国交省、介護は厚労省という管轄の違いの中、交渉を重ねてようやく認められました。おかげさまで平成23年に近畿運輸局から、タクシー会社として初めて「バリアフリー化推進功労者表彰」をいただきました。
―すごいですね。こうした取り組みの延長線上にあるのが「ケアたび」ですね。
兼元) はい。こうして実現した「ケア&ケアタクシー」も、ご高齢の方や障害をお持ちの方など移動制約者の方々に、病院に行く、買物に行くといった日常生活に最低限必要な移動手段を提供するものに過ぎません。旅行や観劇などもっと人生を楽しんでいただくようなサービスができないか、引きこもりになりがちなご高齢者などの皆さまに、外出を積極的にしていただいて心身ともに元気になっていただけないか、という現場から湧き出てきた声を元に開始しました。平成25年に旅行業登録を行い、当社オリジナルツアー(募集型企画旅行)「ケアたび」と、受注型企画旅行に対応しています。
―もう一つ、「自家用自動車運行管理事業」とはBtoB事業ですね。
兼元) デイサービスなどの介護施設、支援学校、病院などで、それぞれの施設等様が保有する自家用車両を使用した送迎業務について、運転士、労務管理、車両整備等を一括して管理・提供するものです。大きい送迎車を運転するのを敬遠されるヘルパーさんも多いです。また、毎日使う送迎車ですからきれいに清掃もしておきたいところですが、結構な手間がかかります。そうしたことを一括でお引き受けしています。加えて、当社にインフラがありますので、車両整備や車検、代車提供もできます。
―インフラをお持ちということのほかに、何といっても社員の皆さまという人的資産が強みではないですか。
兼元) まず、全社員約400名中、約300名がヘルパー2級を取得しています。運転手とヘルパー2級を兼ねる一人二役の「ケアドライバー」の存在は重要ですね。また、当社はタクシー部門、整備事業部門、介護福祉部門など多岐にわたる部署がありますが、新卒採用社員は入社数年の間にジョブローテーションでひととおり経験しますし、部署間の垣根を超えた横断的チーム「TEAM NEXT」という組織を営業企画室に設置し、現場ニーズから新サービスの開発につなげる仕組みを作っています。「BBQタクシー」なども開始しているのですよ。
―人を大切にされる会社でらっしゃいますね。
兼元) 創業以来、2度に亘ってタクシー会社どうしの合併を行ってきました。会社風土の異なる者どうしが一緒になるわけですから、社員の育成、統率に苦労してきた歴史もあります。そうした苦労を乗り越えて社員とともに成長してきました。
―福祉分野にはいつ頃から目が向いてらっしゃったのでしょう?
創業者は、児童養護施設の子どもたちを招待して観光バスで遊園地へ日帰り旅行を行ったりしてきたそうです。そして、車いすでの外出などあまり考えられなかった当時、車いすの方でも乗れるタクシーとして社員から提案されたのが「リフト付き福祉タクシー」です。専用の福祉車両自体が存在しない時代のことでしたのでトラック用のリフトを改造してワゴン車に取り付けて使用しました。話題にはなったものの、車両価格が通常の3倍以上する一方、売上は少ないですから、赤字が続きましたが社会的な必要性が高く維持してきました。
―最後に今後の抱負について。いかがでしょう。
兼元) 当社の社名はキャブ(CAB=タクシー)とパブリック(PABLIC=公共の・社会・仲間)を合わせた造語です。創立100周年までには、だれでも、いつでも、どこへでも移動できるサービスを提供しながら、一つの街(コミュニティ)自体をケアする「キャビック・タウン」を実現したいですね。
とても温かく地域に貢献されていらっしゃる同社。今後の展開がますます楽しみです。
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