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園内にある半木(なからぎ)神社南側の通路沿いのヤマザクラを「左近桜」と見立て、その向かい側に「右近の橘」として、日本の固有柑橘種であるタチバナを植栽しており、今年も果実が熟してきました。
タチバナ
周辺には同じミカン科とくにミカン属の植物を集め、「キトルス(柑橘)エリア」として現在、育成中です。
「柑橘エリア」に植栽しているものは以下のとおりです(この仲間には植物分類上は栽培品種のものにも学名が付けられていることは興味深いところです)。
ウンシュウミカン Citrus unshiu、キンカン Citrus japonica、ライム Citrus aurantifolia、ザボン (晩白柚)
ハッサク Citrus hassaku、ダイダイ(カワナツダイダイ) Citrus aurantium、シラヌイ (デコポン)、レモン Citrus limon
タチバナ Citrus tachibana、カラタチ Citrus trifoliata
写真のものは、植栽して間もない苗木ばかりですが、少しずつ果実が着いてきたところです。
ウンシュウミカン
キンカン(マルミキンカン)
ダイダイ(カワナツダイダイ)
シラヌイ(デコポン)
レモン
身近な果実であるミカン類は古くから栽培されたきた歴史がありますが、比較的温暖な気候で栽培されるこの属の植物を、京都市内北部域での露地栽培の可能性を探るとともに、今後、多様な種、品種を充実させ秋から冬の植物園のみどころのひとつとして育てていきたいと思います。
日本にはブナ科樹木が20種類以上あります。これらについては、①単葉互生②雄花と雌花は同じ木に付く③果実はドングリ状のものが多いなどの特徴があります。
ドングリの形や大きさなどは種類によって違い、ドングリを見比べることによっておよそ種類がわかります。秋が深まれば8月頃から成熟したドングリが落下しますので観察の適期といえます。
ドングリをつつんでいる帽子のようなところを殻斗(かくと)と呼びます。昔はブナ科ではなく殻斗科と呼ばれていましたが、殻斗の形も種類によってさまざまです。
またドングリは種類によって受粉したその年に成熟するもの(1年成)と受粉した次の年に成熟するもの(2年生)があります。今年のあたらしい枝にドングリができていたら1年生、古い枝についていたら2年生の種類となります。
アカガシ(水車小屋西側)
殻斗はリング状 2年成 今年は豊作です
アベマキ(大芝生地西側ほか)
殻斗は線形の鱗片 2年成 ドングリは球形
アラカシ(大芝生地南側ほか)
殻斗はリング状 1年成
クリ(植物生態園)
殻斗の外側は針状で熟すと4つに割れる。中にはふつうクリが3つ入っている 1年成
シラカシ(クスノキ並木南側ほか)
殻斗はリング状 1年成
シリブカガシ(大芝生地南側ほか)
殻斗は杯型 2年成(花は秋に咲く) ドングリのそこはへこんでいる
スダジイ(正門付近ほか)
殻斗はドングリを包み込むが、成熟すると3裂してドングリが顔をだす。2年成
マテバシイ(大芝生地西側)
殻斗はうろこ状 ドングリのそこは少しへこんでいる 2年成
沈床花壇の東側にたくさんの花が咲いているように、ひときわ目立つ大きな木があります。実はニワウルシの果実が色づいてきたところです。
(写真左)沈床花壇の個体 (写真右)バラ園から見える個体
ニワウルシは中国原産のニガキ科の植物で、別名のシンジュ(神樹)という名前は、英名のTree of heaven(天の木の意)を訳したとされ、非常に成長が早く大木になることにちなみます。
(写真)熟してきた果実と落下した翼果
ウルシの葉に似ていることからニワウルシ(庭漆)の名がつきますが、小葉の下部にやや突き出た鋸歯があるのが特徴で、その先には蜜腺があります。葉には独特の(こうばしい?)臭いがあります。
(写真左)葉や木の感じはウルシに似る (写真右)特徴のある葉の鋸歯と蜜腺
ニワウルシの果実には翼があり(翼果)、熟したものから順に落花し、くるくると回転しながら飛んでいきます。明治10年(1877年)日本に渡来しましたが、繁殖力が強く成長が早いため、パイオニアプランツ(先駆植物)として河川などで野生化することもよくあります。
7月の花木のひとつにシダレエンジュがありますが、今年は当たり年でたくさんの花をつけています。例年は梅雨と花期が重なり花があまりきれいに咲きませんでしたが、今年は花数が多いうえに花期がやや遅れたため、円錐花序の白い花が美しく目立ちます。
シダレエンジュは、古くから日本にあるエンジュの枝垂れるタイプのもので、当園のものは昭和9年(1934年)に当時の園長の菊池秋雄が中国への園芸視察旅行で穂木を持ち帰り、エンジュの台木に接ぎ木をして増やしたものです。
シダレエンジュは中国では縁起物とされ栽培されています。漢字で「龍爪樹」と表し、龍が爪を立てているように仕立て庭に植えられることがあるようですが、当園大芝生地西側に植栽のシダレエンジュは龍が昇っていくような感じに仕立ててあるのが特徴です。
当園で開催している1本の木から学ぶ教育プログラム「私の好きな木」(主催、京都市中学校理科研究会、京都府立植物園など)が今年で15年目を迎えました。
このプログラムは、春から冬までの年間6回の活動を通じて自分の気に入った1本の木を五感を使って観察、スケッチしていくというシンプルなもので、観察などで気づいたことをグループで話し合ったりします。今回は「夏の観察」。それぞれ「私の好きな木」の前でスケッチをして、おわりに前回の「春の観察」と違っていたこと、新たに気づいたことなどを発表し合いました。
参加者ひとりひとりの見方、感じ方が違っているのもこの活動の面白いところで、指導者もあれこれと教えず、個人の目線と気づきをもっとも大切にしています。
観察のあとニュートンのリンゴ(一昨年の私の好きな木の行事で植栽)の果実を確認にいきました。
ウォレマイ・パイン(Wollemia nobilis)は、ナンヨウスギ科の植物で1994年にオーストラリアのウォレマイ国立公園内で発見されるまで、化石でしか知られていませんでした。
そのため、これは植物学上の大発見として世界から注目を集めました。ウォレマイ・パインの最も古い化石は約2億年前のものとされ、恐竜が生きていた時代のジュラ紀にあたることから、「ジュラシック・ツリー」とも呼ばれています。
自生地では100個体程度の貴重な植物ですが、当園の「針葉樹林」に植栽の個体は、2006年に日本植物園協会を通じて、オーストラリア・クイーンズランド州政府森林局から送られたものです。
当初は樹高20センチほどで、しばらくは鉢で栽培を続けていましたが、耐寒性などを確認した上で2011年に現在の場所に植栽し、樹高約2メートルに生育しています。
3月の冬芽の状態(撮影者 河内静子氏)
5月になるとロウ物質に包まれた冬芽の先端からシダような新しい葉が展葉しましたが、非常にきれいな緑色が全体を覆っています。今年は花をつけませんでしたが、近いうちに球果がつくように大切に育てていきたいと思います。
「ニュートンのリンゴ」の花が当園で初開花し、いま盆栽・鉢物展示場南側のエリアで見頃を迎えています。この木は2012年4月に東京大学小石川植物園から分譲いただき、2014年3月に当園教育プログラム「私の好きな木」の参加者全員によって植樹したものです。
物理学者ニュートン(1643~1727)がリンゴが木から落ちるのを見て、「万有引力の法則」を発見するきっかけになったという逸話はあまりにも有名ですが、そのニュートンの生家にあった原木の枝が接ぎ木によって増やされ、科学に関係する施設に分譲され育てられている貴重なリンゴの木です。
「科学の心を育てる記念樹」として親しまれているこの木が、「私の好きな木」の参加者によって植えられ開花したことはとても喜ばしいことです。
このリンゴの品種は「ケントの花」という名で、果実が順々に熟し自然に落花する品種ということです。当園ではまだ3メートルほどの幼木ですが、うまく果実がつくように育てていきたいと思います。
2月15日、岐阜市柳津町高桑において、当園において発芽した宇宙桜の苗の贈呈を行いました。
宇宙桜とは、全国14箇所のサクラの名所から集めた種子を、2008年11月にスペースシャトル「エンデバー号」にのせて地球を出発し、2009年7月の地球帰還までの約8ヶ月間を宇宙ステーション「きぼう」に滞在させたのち、各地へ届けられ発芽した桜のことです。
当園へは、2009年9月に宇宙を旅したサクラの種子133粒を有人宇宙システム株式会社から分譲いただき播種したところ、8品種12本、うち高桑星桜の種子8粒から2本を発芽させることができました。
地元、高桑桜保存会では発芽がみられなかったことから、地元の強い要望を受け、苗が2メートルに生育した時点で2本の苗のうち1本の苗を贈呈するはこびとなりました。
宇宙桜の里帰りを祝い、贈呈式において熱烈な歓迎を受けたのち、記念植樹を行いました。記念植樹では種子採取当時中学生だった生徒(今年成人を迎えた)や高桑の小中学生がたくさん駆けつけてくれました。
宇宙桜の記念植樹(写真左)と歓迎の和太鼓の演奏(写真右)
今は小さな苗ではありますが、故郷で根を張って50年、100年先まで地域のみなさまに愛されるサクラに成長してくれることを期待します。
話は前後しますが、2012年2月に高桑桜保存会から高桑星桜の大苗を当園に寄贈いただき、人気のサクラのひとつなっております。
高桑星桜は花弁の先が尖っているため星形の花をつけることから名付けられたサクラで、花期は2週間ほどと長く、最初に咲いた花は大きく、遅れて咲く花はやや小さいのが特徴で、当園桜林を含め、全国4箇所でしか見ることができない貴重なものですから、この春も多くのひとに見てもらいたいと思います。
サクラ品種の収集・調査については、関係する地域・機関と連携しながらこれからも積極的に進めていきたいと思います。
植物園の正門から入るとすぐ右手に「くすのき並木」があり、東西200メートルの園路沿いに92本とその周辺をあわせて約150本のクスノキの大木があります。この並木は植物園正門前の「けやき並木」とともに、長年にわたって来園者を迎えてきたシンボルロードになっています。枝葉からこぼれるやわらかい日差しは夏の暑さを緩和し、冬でも青々として緑は静寂感があり、年間通して魅力的な景観を作り出しています。
このクスノキは、植物園開園当初から植栽されているため、樹齢約100年の大木ばかりです。もともと樹勢が強いため、近年、成長に伴う大径化と個体間の競争による枝の枯れ上がりや形状比(樹高と直径の比で大きいとヒョロ長で風や雪などで折れやすい)が大きくなって枝折れ等の危険が高くなってきました。
これまでは、枯れた枝を落とす作業を繰り返してきましたが、この冬、はじめて本数を調整するために周辺とあわせ1割ほどのクスノキを伐採するとともに、細長く伸びた枝をある程度の太さまで切り戻す作業を行っています。
これらの作業は適度な本数への調整と枝の切り戻しにより、並木全体の若返りを図るもので、1本1本の個体をしっかりと生育させ、将来に向けて健全で立派な「くすのき並木」を作るものです。
お問い合わせ
文化生活部文化生活総務課 植物園
京都市左京区下鴨半木町
電話番号:075-701-0141
ファックス:075-701-0142