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当園では「ナラ枯れ」と呼ばれる、カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という小さな虫によって、あじさい園のピンオーク(ブナ科)の穿孔被害を2007年に受けて以来、毎年、ブナ科樹木に穿孔被害を受け続けています。
ナラ枯れは1991年に京都府北部で発生以来、京都市街地周辺の森林でも被害が発生し、まるで夏に紅葉したかのような異常な光景が拡がったため、報道などで大きく取り上げられました。
カシナガは幹の地上高2メートルのまでところに集中加害します。成虫の発生は毎年6月頃に発生し10月には終息しますが、ビニールの巻き付けなどの防除によって、被害を軽減することができます。
当園では、2008年以降、ナラ枯れの予防として幹にビニールの巻き付けや被圧木の整理伐などを行ってきた結果、年間1、2本の被害におさえることができました。
貴重な樹木をカシナガ被害から守るため、当園のボランティアやインターンシップの学生に手によってビニール巻き付けと取り外し作業を手伝っていただいています。
学生によるビニールの取り外し作業
平成25年9月15日からの台風18号の影響により降り続いた雨は、府内各地に甚大な被害をもたらすに至りました。被災された皆さまに対し、心からお見舞い申し上げます。
18号台風では園内でもかつてないほどの大きな被害が発生しました。大きな樹木では倒木15本、幹折れ10本の被害が出ました。台風による臨時休園のなか倒木や落枝等の処理を行いましたが、ランシンボク、アンズ、タカネゴヨウについては完全に倒れた幹をもとのように引き起こして復旧を行いました。
アンズの倒木(写真左)とヒムロの倒木(写真右)
引き起こした樹木については、切断された根とのバランスを考え、枝葉を大きく剪定しましたが、雌株のランシンボクについては、たくさんの果実がついていただけに非常に残念です。あとは無事に根が活着するようにしなければなりません。
ランシンボクの倒木(写真左)と復旧後の姿(写真右) (森のカフェ北側に植栽)
今年のように台風が多い年は、その都度、倒木などの心配をしなければなりませんが、普段から災害や異常気象に強い樹木にするのはどうすればよいかといことも考えていかなければなりません。
園内にある樹木の樹高については、測定者と樹木との水平距離と仰角(水平と樹木天辺との角度)を求め、器械によって測定をします。今回データの見直しのため樹種別の樹高ベスト5を測定をしたところ、順位の入れ替えがありました。
第1位センペルセコイア(Sequoia sempervirens 針葉樹林内、前回第2位)37.0メートル、第2位カツラ(Cercidiphyllum japonicum 、絶滅危惧園内、前回第1位)33.5メートル、第3位ヒマラヤシーダ(Cedrus deodara 、針葉樹林内、前回第5位)33.0メートル、第4位メタセコイア(Metasequoia glyptostroboides 、針葉樹林内、前回第3位)30.0m、第5位フウ(Liquidambar formosana 、アジサイ園内、前回第4位)28.5mという結果になりました。
前回は10年ほど前のデータであり、センペルセコイアは6メートルほど伸びていますが、カツラは1メートルほどしか伸びていないという結果になりました。
センペルセコイア樹高37メートル、幹周り4メートル(写真左2枚)と樹高33.5メートルのカツラ(写真右)
日本を代表する花木であるサクラは、古く江戸時代以前から多くの園芸品種が育成され、江戸時代末期には文献上約400種類以上の品種があったとされます。しかし、その後明治時代以降の近代化や戦災によって各地の桜の名所が消滅し、それとともに多くの品種が姿を消したようです。
また、サクラの場合「○○の桜」というように、銘木など個々に名前がつけられていることが多いことや「品種名」においても同種異名(例えば「江戸」と「糸括」など)のものがあり、その結果多くの品種数が存在し、混乱が生じているのも事実です。
サクラを文化遺産として後世に伝えるため、国の機関である森林総合研究所多摩森林科学園がサクラの保存・収集と研究を進めており、サクラの遺伝子(DNA)分析のため同研究所の勝木俊雄博士らが継続的に調査研究されているところですが、当園でも調査試料の提供などこれらの系統保全のための研究に協力しております。
勝木俊雄博士と調査を行う当園中井貞樹木医
今後とも、サクラの遺伝子の品種識別による系統的な保存や栽培技術向上への取り組みを進めていく必要があり、その一翼を担う施設として京都府立植物園の役割も重要です。
サクラ見本園の「糸括(イトククリ)」と「御衣黄(ギョイコウ)」
3月23日、24日の二日間、植物園展示室において「第53回つばき展」が開催され2日間で2400人の来場者にお越しいただき、たくさんの椿愛好家が訪れ賑わいました。
写真 (左)珠錨、(右)数寄屋
その中で、開会と同時に入場し、熱心に一つ一つの椿を見て回られる外国人の姿がありました。彼の名はスコット・ドラムヘラー氏、はるばるこのつばき展のためにアメリカ・ロサンゼルスから来日されたとのこと。
ツバキ「珠錨(たまいかり)」の前で「この椿の花は僕の奥さんです。」と、「???」その心を聞くと「僕の奥さん、たまに怒ります」とユーモアたっぷりに巧みな日本語で話された。最後に「今回の展示品の中で一番好きな花は?」と聞くと「数寄屋が好きや。花、葉、長い雌しべとそれを取り巻く短い雄しべ。形が完璧です」との事。よく見ると、なるほどピンクのかわいい花だった。ちなみに「数寄屋」はアメリカにはないそうだ。
スコット・ドラムへラー氏
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文化生活部文化生活総務課 植物園
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