選定理由 |
府内での記録が少なく、また近年の生息が確認されていない。 |
形態 |
成貝は殻高70mmに達する。螺塔は高く、各螺層は膨らまず、平たく階段状になっている。螺層の周縁は角張っていて、張り出す。体層および各螺層には2〜3本の弱い螺条がみられる。胎殻はタニシ類では最も大きく、殻高10mmを越えるものも少なくない。また、螺層の周縁は角張り、螺塔は押しつぶされたような特異な形をしている。
◎近似種との区別
螺層は、オオタニシではやや膨らみがみられ、マルタニシでは丸く膨らんでいる。また胎殻は、オオタニシでは螺塔が高く発達し、全体に尖った感じであるが、マルタニシでは螺塔が低く、全体に丸い感じである。 |
分布 |
滋賀県、京都府、大阪府に分布し、府内では琵琶湖疏水と宇治川で記録がある。
◎府内の分布区域
淀川水系。
◎近似種との比較
オオタニシとマルタニシは水田や池沼などに多く生息し、ナガタニシと混生することは少ない。 |
生態的特性 |
殻高25mmで性成熟に達し、胎貝を保有する雌は一年中みられる。琵琶湖では水深2〜10mくらいの砂泥〜泥底に多く生息する。底上の藻類や腐食質を匍匐しながら摂取している。 |
生息地の現状 |
疏水や宇治川では琵琶湖から流入した個体が定着していたと考えられる。河川改修や水質汚濁によって生息環境は悪化しており、最近では生息が確認されていない。琵琶湖では、北湖にはまだ多く生息するが、南湖では非常に少なくなっている。このため、府内に移入してくる可能性は以前より遙かに低く、絶滅寸前の状態にあると考えられる。本種は1属1種の琵琶湖・淀川水系固有種であり、タニシ類の種分化を考える上で学術的な価値が高い。 |
生存に対する脅威 |
河川改修による生息地の破壊や、水質汚濁による生息環境の悪化。 |
必要な保全対策 |
本種は他のタニシ類に比べて乾燥に弱く、琵琶湖でも水位変動の影響を受けない深さの泥底が最も適した環境である。したがって、河川改修の際に深い淀みを残すことが必要である。 |
その他 |
琵琶湖・淀川水系固有種 |