選定理由 |
分布域は近年拡大傾向にあるが、各地で有害鳥獣駆除のために大量に捕獲されたため、群れが小さくなって複数の群れ同士の接触が断たれている。孤立化が進み、消滅してしまった群れもある。 |
形態 |
頭胴長はオス53〜60cm、メス47〜55cm、尾長はオス8〜12cm、メス7〜10cm、体重はオス10〜18kg、メス8〜16kg。体毛は茶褐色ないしは灰褐色、赤ん坊は黄褐色。冬毛は淡色で長くふさふさしている。顔と尻が赤く、秋から冬にかけての交尾期には鮮明な紅色となる。 |
分布 |
北は青森県の下北半島から南は鹿児島県の屋久島まで広く分布するが、東北地方では生息域が限られている。中部山岳地帯から近畿地方にかけて複数群が連続的に分布し、地域的な集合をなす地域個体群が見られる。府内では主として北部地域と南部地域に集中して分布するが、北部地域内陸部の小さな地域個体群の多くは近年消失あるいは縮小している。京都市内には野生群の情報はなく、嵐山と比叡山に餌付けされたニホンザル群が生息していて、個体数は捕獲によって管理調整されている。 |
生態的特性 |
10〜150頭ほどの複オス複メス群をつくり、年間1〜30km2の範囲を遊動して暮らす。雑食性で四季の変化に応じて葉、果実、樹皮、根、きのこ、昆虫などを採食する。5〜9才で初産を迎え、一産一仔。毎年春に出産し、2年続けて産むことはまれである。野生では20才までに閉経し、死亡すると考えられる。オスだけが集団間を移籍する母系の特徴をもち、単独で暮らすオスのハナレザルも見られる。 |
生息地の現状 |
府内では近年針葉樹の植林地が増加し、農作業に従事する人口が減って農業が機械化されたことに伴い、自然の食物が乏しくなった奥山から、サルが人手の減った畑地へと移動して作物を荒らし始めた。猿害の発生している地域は府内44市町村の半数に及ぶ。被害の多い地方は丹後地方を中心とする北部、宮津市から園部町までの北中部、木津地方を中心とする南部に大別される。被害作物は29種類が記録され、クリ、シイタケなど重要な換金作物を荒らすところもある。対策として、畑を金網や漁網で囲ったりガス銃や爆音機で脅したりしているところが多いが、あまり効果が上がっていない。1970〜80年代に餌付けによる集団捕獲が実施され、90年代には駆除頭数は減少しているが、被害軽減との関係は明確ではない。 |
生存に対する脅威 |
猿害地では大量捕獲により群れがばらばらになり、ハナレザルになる個体が増えたり、群れ同士の接触が断たれて孤立化が進み、地域的な絶滅が懸念されている。 |
必要な保全対策 |
地域個体群の縮小、孤立化、絶滅を防ぐために、生息状況のより正確な把握と群れ同士の接触を保証するような保全対策が急務である。 |
その他 |
日本固有種 |