選定理由 |
生息洞窟の減少や消滅、個体数の激減、その理由としての生息洞窟の環境悪化が考えられる。 |
形態 |
鼻部が菊の花を想像させるので、「きくがしら(菊頭)」という名がつけられ、これがこの科のコウモリの特徴である。翼の形が他種に比較すると、幅が広く長さが短い。
◎近似種との区別
前種の前腕長が約60mmであるが、本種は40mm前後と小型である。 |
分布 |
北海道、本州、四国、九州のほかいくつかの島部。
◎府内の分布区域
瑞穂町質志鍾乳洞と京北町下中新大谷マンガン廃鉱で生息が確認されている。 |
生態的特性 |
昼間は洞窟を隠れ家にし、50〜数百頭、多い場合は数千頭の群れをつくる。夕方に隠れ家から飛び出して、飛翔する昆虫類を採餌する。初めて出産するのは通常満3歳前後である。昆虫類が飛ばない冬期には冬眠する。 |
生息地の現状 |
瑞穂町質志鍾乳洞と京北町下中新大谷マンガン廃鉱から生息が知られている。前者では古く(1973年)は夏にも2頭のみ確認されたことがあるが、最近は冬期のみの生息であるようであり、200頭前後の冬眠が確認される。一方、後者では数十頭が冬期に知られている。いずれにしても、通常は数百の群れをつくり、繁殖をするが、京都府ではそのような繁殖の群れの発見はない。上記のほかにも中部地域に広範囲にあるマンガン鉱山の廃鉱のいくつかをねぐらとしていることが想像され、それらではおそらく少数だが、繁殖している可能性も考えられるが、未調査である。さらに丹後地域の海岸にある海蝕洞にも生息の可能性があり、今後の調査が待たれる。 |
生存に対する脅威 |
鍾乳洞などの環境悪化、洞内での生息の妨害。人工洞の消失。 |
必要な保全対策 |
昼間の隠れ家である、鍾乳洞や鉱山廃鉱などの洞窟類の環境を変えないこと。コウモリが利用する洞窟に人が入らない、洞内でたき火を絶対にしないようにする、懸下するコウモリに灯りを照らさない、及び触れない、触らないようにする。そのために、コウモリが利用する洞窟に、人が入れないような、しかしコウモリが通れるような扉を設ける。観光鍾乳洞の場合は、コウモリの一年を通した移動や個体数変動を調べて、観光客のための灯りを確保する場所を決定する、及びコウモリの移動や懸下が妨げられないようにする。 |