選定理由 |
生息洞窟の減少や消滅、個体数の激減、その理由としての生息洞窟の環境悪化が考えられる。 |
形態 |
鼻部が菊の花を想像させるので、「きくがしら(菊頭)」という名がつけられ、これがこの科のコウモリの特徴である。翼の形は幅の広さの割に長い。
◎近似種との区別
コキクガシラコウモリ種の前腕長が約40mmであるが、本種は60mm前後と大型である。 |
分布 |
北海道、本州、四国、九州の他いくつかの島部。
◎府内の分布区域
現在生息が知られているのは、中部地域のみであるが、丹後地域の海岸にある海蝕洞にも生息の可能性があり、今後の調査が待たれる。 |
生態的特性 |
昼間は洞窟を隠れ家にし、50〜数百頭の群れをつくる。時々、少数の群れが家屋を利用することも知られる。夕方に隠れ家から飛び出して、飛翔する昆虫類を採餌する。初めて出産するのは通常満3歳である。寿命は長く、20年以上生きた例も知られる。昆虫類が飛ばない冬期には冬眠する。 |
生息地の現状 |
瑞穂町質志鍾乳洞や京北町下中新大谷マンガン廃鉱で発見例があるが、いずれも1〜5頭である。いずれもそこには常駐せず、時々数頭のみ見かけるという状況であり、もちろん繁殖をしていない。一方、美山町京都大学芦生演習林では林内を飛翔しているのが1回のみ発見されたので、林内にあるというマンガン廃鉱を昼間の隠れ家にしている可能性が高いが、未確認である。本種は通常は数百の群れをつくるが、京都府ではそのような群は発見されておらず、わずかな鍾乳洞や廃鉱から生息が確認されているのみであり、多くの場合、数頭の生息確認であり、その生息も常時確認できないことが多いなど不安定である。さらに、繁殖のための群れが府内からは発見されていない。上記のほかにも中部地域に広範囲にあるマンガン鉱山の廃鉱のいくつかをねぐらとしていることが想像され、それらではおそらく少数だが、繁殖している可能性も考えられるが、未調査である。 |
生存に対する脅威 |
鍾乳洞などの環境悪化、洞内での人による妨害。人工洞の消失。 |
必要な保全対策 |
昼間の隠れ家である鍾乳洞や鉱山廃鉱などの洞窟類の環境を変えない。コウモリが利用する洞窟に人が入らない、洞内でたき火を絶対にしないようにする、懸下するコウモリに灯りを照らさない、及び触れない、触らないようにする。そのために、コウモリが利用する洞窟に、人が入れないような、しかしコウモリが通れるような扉を設ける。観光鍾乳洞の場合は、コウモリの一年を通した移動や個体数変動を調べて、観光客のための灯りを確保する場所を決定する、及びコウモリの移動や懸下が妨げられないようにする。 |