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平成30年6月22日
本日、ここに6月定例府議会を招集いたしましたところ、議員の皆様におかれましては、御多忙の中お集まりいただき、まことにありがとうございます。
それでは、今後の京都府政の施政方針及び提出議案の概要を申し上げます。
私は、知事就任以来、議員各位をはじめ多くの府民の皆様から温かい御支援と御助言を賜りながら、府域の均衡ある発展と一党一派に偏しない公平・公正な府政の推進を旗印に、第51代京都府知事として、林田知事から荒巻知事、そして山田知事へと引き継がれてきた府政の舵取りを担わせていただいているところであります。
この3代の知事が40年にわたって築いてこられた京都の発展の基盤を継承し、京都の更なる発展と明るい未来に向け、そこに蒔かれた種をしっかりと育て、「花」を咲かせるため、全身全霊をもって府政を運営してまいります。
「安心」「いきいき」「京都力」をキーワードに府内の北から南までくまなく回った知事選挙において、府民の皆様からは、急速に進む少子高齢化や人口減少など将来に対する漠然とした不安を抱きつつ、医療・介護・福祉の確保や子育て環境の整備、自然災害への備えや中小企業・農林水産業の担い手の確保・育成、地域コミュニティや地域の活力の維持など、暮らしの安心・安全の確保に向けた施策に対する期待や切なる願いをお聞きしてきました。
今年は京都府開庁150年であり、来年は「平成」から新たな時代が幕を開ける節目の年となります。
その長い歴史の中で、先人の叡智により築かれてきたこの京都の50年後、100年後を見据え、府民の皆様からの期待や切なる願いをしっかり受け止めるとともに、未来を担う子どもたちに、将来に希望の持てる京都を引き継いでいくため、行政だけでなく、経済界、大学、各種団体、府民の皆様のあらゆる京都の力を結集して、新しい時代の京都づくりに果敢に挑戦してまいります。
府政運営に当たり、職員にこの3点のメッセージを発しました。私たちが直面するのは、世界のどの国も経験したことのないほどの人口減少社会であります。これまでのシステムにとらわれることなく、現場のニーズを汲み取り、思い切った発想の転換や庁内外の幅広い連携により施策のウィングを広くしながら、新たな課題に立ち向かってまいります。
あわせて、早急に対処すべき課題に対応できる体制づくりに着手し、府政の部局横断的な重要課題については、私自身が本部長となる「子育て環境日本一推進本部」、「観光戦略総合推進本部」を立ち上げ、全庁挙げての総合的な推進体制を構築するなど、必要な執行体制の見直しを実施しました。
その上で、
この3つの観点を中心として、必要な施策について6月補正予算を編成しました。
第1に、安心で暮らしやすい社会の構築です。
まずは、子育て環境日本一の実現です。
安心して子どもを産み育てられる社会の構築は、将来への不安を和らげ、未来の活力の土台となる大変重要な国家的課題です。先日、発表されました京都府の平成29年の合計特殊出生率は1.31と一昨年を0.03ポイント下回り、出生数は806人減少の18,521人となりました。全国的に見ても出生数は統計開始以来最少となっており、危機的状況にあると言えます。結婚し、子どもを産み育てることに希望を持つ人たちが、その希望をかなえることができる環境づくりが重要です。
そのためには、国・府・市町村や、個人・企業・NPOがそれぞれの立場から、個人や地域の状況に応じたきめ細やかな支援を息長く続け、子育て世代のみならず、将来を担う若い世代が、子育てについて安心感を持てる社会を構築する必要があります。「子育て環境日本一推進本部」においては、出会い・結婚から、妊娠・出産、子育て・教育から就労支援に至るまで、幅広い分野で総合的に子育て環境の充実に取り組んでいくこととしておりますが、第一段階として、「出産」「子育て」環境の充実に取り組んでまいります。
近年、出生時の体重が2,500グラム未満の、いわゆる低出生体重児の割合が増加しています。小さな生命をしっかりと守り、育てるため、先般、京都府、京都第一赤十字病院、京都府立医科大学附属病院、京都大学医学部附属病院の4者間で「京都府周産期医療体制強化に関する協定」を締結したところであり、NICUの増床やハイリスク症例受入体制の強化、周産期医療に従事する地域の医師の確保・育成等を進めます。
「子育て」環境整備については、ここ5年間で5,815人の保育所定員増を実現するなど、量的な整備は大きく前進してきました。今回は、保育環境の質的な充実に向け、安全対策・衛生対策等のきめ細やかな支援のほか、更なる保育人材確保と就業環境向上に取り組みます。
また、共働き世帯が増える中、出産・子育てや介護と仕事が両立できる環境づくりはますます重要になっています。福祉サービスの充実と併せて、企業の理解・協力も必要です。不妊治療や子育て、さらには子育てと介護のダブルケアとの両立に関する相談体制の構築など、働きやすい環境整備をサポートします。
子育て世帯に対する経済的負担の軽減については、この間、私立高等学校あんしん修学支援制度や第3子以降保育料無償化など、全国トップクラスの制度を創設してきましたが、子育て支援医療助成制度についても、早急に検討会を立ち上げ、市町村と連携しながら、来年度の制度拡充を目指します。
次に、先進的な防災・減災対策の強化についてです。頻発・局地化する集中豪雨をはじめ、南海トラフ地震、万が一にもあってはならない原発事故等に備え、河川整備や内水氾濫対策、構造物の耐震化、避難体制や情報提供体制の強化など、ハード・ソフト両面から施策を磨き上げることで日本をリードする先進的な危機管理体制を構築します。
まず、指揮官クラスによる「緊急参集チーム」を編成し、初動対応に万全を期すほか、ホットラインの整備等緊急時の情報収集体制の強化や災害時応急対応業務の標準化など、国や市町村とも連携して、危機管理体制を充実・強化します。
ハード面については、国と一体になって進めている由良川・桂川関連整備、古川等の府管理河川の改修や天井川対策、中小河川の内水減災対策、さらには、「いろは呑龍トンネル」の南進事業の推進や、流木対策も含めた治山対策等の総合的な治水対策、橋りょうや公共施設の耐震化促進等の地震対策など、安心・安全基盤の整備を着実に進めます。
ソフト面においても、全ての府管理河川における想定最大規模降雨による洪水浸水想定を行い、災害危険情報を府民の皆様や関係機関と共有するとともに、地域における避難行動タイムラインを作成し、府民力を活かした防災・減災対策を推進します。原子力防災対策については、災害情報の提供体制の向上や屋内退避施設の充実のほか、今回初めてUPZ市町の避難路の計画的な整備に取り組むなど、実効性のある広域避難体制の確保を着実に進めます。
次に、いきいきと暮らせる健康づくりについてです。特に、団塊の世代が後期高齢者となる、いわゆる2025年問題を見据え、人生100年時代のシニアライフを充実させ生涯現役社会を築いていくことが、高齢者本人にとっての健康・生きがいづくりの面、地域や企業にとっての人材確保の面、医療・介護など社会保障制度の持続可能性の確保の面からも非常に重要です。
このため、保健所内組織を再編し、地域包括ケア推進に係る市町村支援の体制を強化するとともに、介護・医療データを分析し、地域の実情や個人のライフステージに応じた健康づくりを支援するなど、市町村や地域、大学と連携した健康寿命延伸対策を総合的に推進します。府民の3人に1人ががんにより死亡するなど、がんはまさに国民病となっています。とりわけ、がん死亡率が府内で最も高い丹後医療圏の診療体制を強化するため、北部医療センターに高度がん医療機器を備えたがん診療棟を整備するとともに、保健所におけるリハビリテーション支援体制の強化を図ります。
続いて、生活の安心と共生社会の実現についてです。人口減少と家族の小規模化が、地域の支え合いの力を低下させつつある中、若者も高齢者も、男性も女性も、障害のある人もない人も、日本人も外国人もともに支え合い、多様性を尊重することで、地域コミュニティの持続可能性を高めるとともに、弱い立場の人々をしっかりと支える共生社会の実現を引き続き目指してまいります。子どもや女性、高齢者をターゲットとした犯罪、スマートフォンやSNSの急速な普及によるネットトラブルから府民生活の安心を守るため、交番相談員による地域の見守り体制の強化をはじめとした、消費者被害や多様化するネット被害、特殊詐欺被害を防止するための取組みを充実させます。
また、京都ウィメンズベースや中小企業応援隊が連携した女性の起業支援体制の強化、障害者の工賃向上につながる「京のはあと製品」の商品力向上支きょう援など、社会活動への参画を通じた個人の自己実現と社会の活力向上を図ります。
次に、学びの安心と次世代の育成についてです情報化・グローバル化など急激な社会変化の中、予測できない変化に主体的に向き合い、よりよい社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していく次代の人材育成が必要です。
グローバル時代にふさわしい人材を育成するため、外国語教育の充実や海外留学支援の拡充に取り組んでいますが、さらに、低所得世帯の府立高校生向けの留学支援制度を創設し、すべての子どもたちが、自ら夢や目標を持ち、実現できる教育環境の充実を図ります。
特別支援教育については、現在、山城地域において、新設特別支援学校の整備に取り組んでいますが、向日が丘支援学校においても、就学前から特別支援学校卒業後にわたる切れ目ない支援体制を構築し、教育と福祉が連携する共生型地域づくりに向け、地元市と連携して、学校改築に係る構想策定を進めます。
また、老朽化が進む学校施設について、予防保全型の改修により長寿命化を進めるとともに、災害時の避難所としても活用される府立高校のトイレの洋式化を計画的に実施します。
第2に、京都産業の活力向上です。
府内企業のうち、中小企業が99.8%を占めており、また、中小企業の従業者も76.3%を占めるなど、この京都経済を支えているのは中小企業です。
府内の景気動向は緩やかな拡大基調である一方で、中小企業の現状としては、人手不足・生産性の伸び悩みや、経営者の高齢化、休廃業・解散の増加といった厳しい課題を抱えています。
「船は港にいれば安全だが、それでは船の用をなさない。」これは、英国の経済学者ケインズの言葉です。生産性向上や人材確保・育成などに向けた中小企業のチャレンジを後押しし、経済成長と安定的な雇用を実現します。
まず、中小企業等の裾野拡大と成長支援については、小規模ものづくり企業の設備投資やIoTを活用した企業の連携・協働を後押しするとともに、現在、オール京都体制で整備中の新たな中小企業総合支援拠点「京都経済センター(仮称)」を核として、中小企業の創業から経営、人材の育成・確保、販路拡大、海外展開に至るまで、総合的な支援策を講じます。
また、同センターと府内4つの支援拠点をネットワークで結び、産学公連携によるオープンイノベーションを支援することにより、府内全域にわたり産業人材育成・新ビジネス創出等を強力に推進します。
次に、担い手の確保・育成については、オール京都体制で中小企業の人手不足対策に取り組むために立ち上げた「中小企業人材確保推進機構」が中心となり、さらにハローワーク等関係機関との雇用対策協定や府内各大学との就職支援協定の締結により、新卒離職者の再就職に向けたマッチングや学びなおし支援など一体的な人材確保・育成・定着支援や府内企業への就職促進に取り組みます。
また、丹後地域の主要産業である製造業の底上げを図るため、丹後・知恵のものづくりパークを再整備し、人材育成・新産業創出機能を強化するほか、不本意廃業いわゆる黒字廃業の防止に向け、事業承継支援体制を強化します。
次に、京都観光の次なる展開と京都ブランドの海外進出強化についてです。
京都観光の振興は、日本を代表する歴史と伝統、多様な地域文化や文化資産、豊かな自然環境や景観などの地域資源を守り、育み、活かしながら、京都の魅力の発信・創造と交流の増加につながり、京都経済の活力を支える重要な取組みです。
この間、海・森・お茶の京都の推進をはじめ「もうひとつの京都」事業を通じ、府内各地の地域資源の発掘・発信を強化するとともに、DMOが観光地域づくりの総合プロデューサーとして市町村や事業者と連携した振興策に取り組み、各地域の観光入込客数は増加するなど、成果が見られる反面、依然として、京都市域の一部に観光客が集中している状況です。
このため、「観光戦略総合推進本部」において、近隣府県との広域連携なども含め、府域全域への観光客の周遊を促すとともに、観光消費額を高めるための観光戦略を総合的に推進していくこととし、まずは「もうひとつの京都」の深化のため、「食」をキーワードとしたガストロノミーツーリズムを推進してまいります。
また、京野菜や伝統工芸品をはじめとした京都産品の海外進出強化や、瓶入りや水出しの京都らしい宇治茶の商品開発・新たな喫茶文化の発信にも取り組みます。
さらに、こうした経済活動を支える交流基盤整備については、平成27年に長年の悲願であった京都縦貫自動車道が全面開通し、昨年には南北140kmの高速道路が繋がり、京都府の背骨が完成しました。
この背骨と一体的に京都府の骨格を形成する交通網として、新名神高速道路や山陰近畿自動車道などの高速道路網やそのアクセス道路、北陸新幹線やリニア中央新幹線などの高速鉄道網、JR奈良線等幹線鉄道網、海のゲートウェイである京都舞鶴港の一層の整備など、整備効果がいち早く府内に幅広く行き渡るよう、ヒト・モノの交流基盤の整備を着実に推進します。
第3に、スポーツ・文化力による未来の京都づくりです。
文化・スポーツには、私たちの暮らしに潤いや活力を与える力があります。
人々に感動を与え、地域の誇りや一体感を高め、地域社会を活性化させる力があります。地域資源を活かして、交流人口の拡大や新たな産業の創出など経済を活性化させ、その魅力を国内外に発信する力があります。
こうした文化・スポーツのパワーを最大限発揮し、京都が有する資源に磨きをかけることで京都産業の新たな展開を図り、府民生活を豊かにするとともに、未来の京都を創造し、東京一極集中の是正にもつなげてまいります。
まず、文化力による京都の未来づくりについてです。
京都にとって文化は、日々の生活や経済活動の中に深く根ざし、長い歴史をかけて積み重ねられ、伝えられてきた英知の結晶であり、地域にはそれぞれ特有の文化資源が数多く存在します。
今回、「京都府文化力による京都活性化推進条例」を「京都府文化力による未来づくり条例」に改め、文化庁の京都移転等を踏まえ、文化の保存・継承・発展や新たな文化の創造、文化資源の活用による観光やまちづくり、国際交流、伝統産業等多様な分野との連携など新たな文化行政を総合的に推進し、日本の文化行政を牽引していきます。
文化資源を活用した地域づくりと経済活性化に向け、アートとクラフトの見本市を文化庁と連携して国際的に訴求力のあるフェアに拡充し、アート市場を拡大します。
文化を次代に継承する人づくりに向け、地域の文化芸術活動を牽引する地域アートマネージャーを府内全域に配置するとともに、平成31年4月に開設予定の京都府立大学和食文化学科(仮称)の学舎整備を行い、和食文化・産業の発展と担い手育成を進めます。
文化庁の京都移転については、府庁3号館の建替えと一体的に移転施設の整備を進めます。
次に、スポーツを通じた活力の創造についてです。
ジュニア層の強化や指導者育成の推進、市町村による広域的スポーツ施設整備への支援など、ソフト・ハードの両面で、スポーツ関係人口の裾野拡大及びスポーツ振興を促進します。
また、スポーツと地域の観光資源の融合により誘客を図るサイクリングイベントをはじめ、スポーツツーリズムや大規模な大会・スポーツ合宿の誘致、スポーツ施設の魅力・収益性の向上、スポーツと他産業との連携などを進め、スポーツを通じた地域・経済活性化を促進します。
京都のスポーツ振興の中核施設となる京都スタジアム(仮称)については、スポーツ環境の充実による競技力向上やスポーツ人口拡大に寄与するのみならず、新たなまちづくり計画の中心施設として地域活力創造の基盤や、地域防災拠点としての機能も有しています。
最近、サッカーJ1に昇格したV・ファーレン長崎の大躍進と、選手、サポーター、運営スタッフに加え、地域住民、地域企業、行政が一丸となった取組みが「長崎の奇跡」として話題となっています。京都でも関係者が一丸となり、スタジアムと一体となった、地域の持続的な活力が生まれるまちづくりを進めてまいります。
このほか、新しい時代の戦略づくりにも着手します。
府政運営の指針となっております「明日の京都」については、今年度で中期計画及び地域振興計画の計画期間の満了を迎えますが、今後の府政運営を考えたとき、社会経済情勢の変化や府内各地域の情勢変化を踏まえ、「京都こそ日本を先導する」との気概で、夢のある計画を府民の皆様にお示ししたいと考えております。
IoT、人工知能(AI)に代表されるように、近年は、知識・情報・技術をめぐる変化の早さが加速度的となり、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人の予測を超えて進展するようになってきています。
一方で、祭りや伝統芸能など、京都の文化は先人のたゆまぬ努力により、変わることなく次代に受け継がれています。
変わりゆくものと、守るべきもの、こうした京都の持つ強みを更に伸ばしていく指針が必要であり、来年秋の策定に向け、府議会の御指導をいただきながら、府民の皆様とともに京都府の未来図をしっかりと描いてまいります。
さらに、社会経済情勢の変化に応じた施策の新陳代謝を促し、限られた人員・財源を最大限有効に活用し、より効率的・効果的な府民サービスを提供するための新しい行財政改革プランも策定します。
今後、私たちは、人口急減、超高齢化など、誰もが経験したことのない新たな時代を迎えますが、様々な課題、試練に府民の皆様とともに立ち向かい努力を続けることで、必ず乗り越えられるものと信じており、「雲外蒼天」の心持ちで、新しい時代の京都づくりを目指し全力を尽くしてまいります。
以上が、私の府政運営に当たっての基本的な考えと決意であります。
府議会の皆様には一層の御理解と御協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。
最後に、今定例会に審議をお願いしております議案についてでありますが、ただ今申し上げました施政方針に基づき、今後4年間で取り組むべき課題への挑戦の第一歩として編成いたしました補正予算案のほか、条例の改正や財産無償貸付に関する案件など、全10件の議案の審議をお願いしております。
御議決いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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