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青年海外緑と文化の大使レポート(マレーシア)

原 早恵子(出身:京都市) 平成23年度4次隊(職種:作業療法士)

  こんにちは。第3回目は、配属先でのボランティア活動についてお伝えしたいと思います。

 私は、1年9ヶ月の間、精神科のリハビリテーション(精神科作業療法(精神科OT))の質の改善に向け、作業療法士としてボランティア活動に取り組んできました。

 配属先の精神科成人部門担当のOTスタッフは毎年担当分野を交代しており、日々の業務改善が難しく、OTの特性が活かされたアプローチが断片的となりがちでした。そのため、精神科医師や上司OTと相談し、半年程は現場の様子を伺いながら、各種アセスメントやOT処方箋の再作成を行い、下記の活動を通して、同僚やこれからの未来を担うOTの学生さんに働きかけていきました。

○急性期病棟OTへの支援

−安全に活動を行える環境作り

 作業に使用する物品棚は、入院患者さんが常時使用する礼拝の場所(Surau)と同室に設置されており、安全性に欠く状態でした。早急に施錠と針やはさみ等の危険物の管理について会議等で呼びかけ、同僚看護師と共にチェックリストを使用しながら、リスク管理を行いました。その結果、物品の紛失は大幅に減少し、準備や後片付けの時間が大幅に短縮されました。

 2週間前後の短期入院の患者さんの状態に合わせて臨機応変に活動を変更する必要があったため、額縁に飾られていたスケジュールボードをホワイトボードに変更し、随時変更内容を書き込むようにしました。その結果、対象者だけでなく、他職種にも作業活動の具体的な内容を理解してもらいやすくなりました。 

 スケジュールボード スケジュールボード

−園芸活動

 病棟には園庭があり、草抜きが時折行われていましたが、腰の高さまで成長した雑草や雑木が生い茂り、危険物やたばこの吸い殻等が捨てられていても、気付かない状況でした。また3m以上にも成長した木に登っての離院もあり、安全管理に欠くと感じたため、最初はGotong Royong活動(マレー語で協力活動)として、スタッフと共に草抜き活動を開始しました。最初は不安でしたが、呼びかけによってスタッフの協力を得ることが出来、雑木の抜去も行えました。

 赴任1年後より、ピーナッツやパパイヤ、バナナの木等を植え、草抜きをしながら収穫や成長を楽しむことが出来るようになりました。植えたレモングラスは収穫後販売することが出来、収益は次の園芸用品に使用出来るようになりました。以後、園庭は安全な場所として使用出来ています。1年半後、同国の協力隊員とコンポスト作りのワークショップを行いました。キノコが生えたり、虫が大量発生する等のハプニングもありましたが、「私これからも続けていくね。」と同僚看護師が引き継ぎを名乗り上げてくれ、活動終了後も継続してくれています。

収穫日 待ちに待った収穫日は多くのスタッフの協力が得られました

コンポスト 亜熱帯性気候に適したコンポスト作り

−音楽活動

 マレーシアは、備品や設備が整っているにも関わらず、「伴奏が出来ないから音楽活動が出来ない」と楽器はあるのに使われていない、という状況でした。そのため、まずはギターの修理を依頼し、マレー語歌集を同僚、OT学生と作成しました。打楽器のリズム打ち等、楽器の用い方と工夫点を実践をもって伝達すると、スタッフが楽器の楽しみ方や使用方法をより理解できるようになり、活動の幅が広がりました。

セッション リズム打ちセッション

−創作活動

 短時間、1回の参加で完成出来る折り紙を用いたメッセージカードやしおり作りを通し、負担が少なく達成感を味わえる創作活動の機会を設けたり、自己管理プログラムとして、服薬時間や時間管理、金銭管理の話し合いを行い、退院後のイメージ作りを図れるようにしました。紙面上のアセスメントだけでなく、ゲーム性を取り入れ、負担感なく楽しめる様に配慮しました。

○通院プログラムへの支援

 デイケア(週1回)はOT部門にて定期的に実施されており、数名の対象者が常に来院しており、外出活動や調理活動は一定して行われていました。調理はマレー焼きそば(Mee goreng)やサンドイッチ等、手軽に作りやすいメニューが中心であるところは日本とも似ています。しかし、OT職種以外の関与は乏しく、管理運営が行き届いていない状態であったので、個別評価、導入前評価の推進を同僚OTと行いながら、医師に状況を伝達するように努めました。現在は同僚看護師も定期的に参加し、他職種との情報交換が行えるようになりました。

○精神科コミュニティサービス部門(Unit Psykiatry Service(UPS)への支援

−訪問OTの定期的な実施

 赴任前から行われていた訪問サービスは注射と投薬が中心であり、自宅での活動性が低下している対象者が多くいたため、赴任後間もなく各種Activityを対象者の能力に合わせて開始しました。「Activity早く終わって!」とスタッフから急かされることもしばしばありましたが、言語的な指示のみよりも、実際に一緒に日常生活活動(歯磨き、入浴等)、家事動作、エクササイズ等を行い、対象者個々に合わせた活動を一緒に経験するプロセスが非常に大切であることを序々に理解してもらえるようになりました。現在は訪問OT(Activity)中心の日を設け、同僚看護師と担当OTがペアで継続しています。

報告 OTの様子を会議でも報告

−Craft Clubのスタート

 精神障がい者に対して、マレーシアは差別と偏見の目がまだ根強く、社会参加の行く手が阻まれてしまっています。そのため、手工芸の得意な外来患者さんをピアサポーターとして招き、少人数のグループ活動を開始しました。完成した手工芸品は一般企業のワークショップや各種研修会等に持参し販売活動を行いました。グリーティングカードは桜のデザインが人気で、日本の四季や文化紹介を兼ねるとさらにマレーシア人の興味と関心を引きつけることが出来ました。売り上げた収益は患者さんに還元したり、材料費にまかなうことも出来るようになりました。販売活動は対象者だけでなく、スタッフの意欲向上にもつながっています。

カード 桜をイメージしたカード

−就労支援への取り組み

 配属先の将来的な目標であった就労支援に向けて、病院内就労支援(病院内食堂での飲み物のパッキング作業)を始めました。最初は雇用側に理解をどう呼びかけるか、予防接種はどうするの?等1つずつのステップに戸惑いました。中にはリタイアされた対象者もいらっしゃいますが、継続出来ている対象者からは嬉しい、との声もあり、最終的には同僚看護師が主導となり今で10ヶ月継続することが出来ました。JICAのプロジェクトであるJob coach研修にも同僚と参加したり、NGOや就労支援が活発であるパルマイ病院(Permai Hospital)への訪問を通し、情報交換を図ることも出来ました。

 その他、広報活動として、配属先やOT養成校(Universiti Teknoligi MARA)にて、日本のリハビリの紹介と活動発表を行う機会を頂けました。一般企業や近郊病院に対してもボランティアの活動紹介を行うことも出来、地域連携のきっかけ作りを行えました。今後も、マレーシア国での精神科リハビリテーションや精神障がい者の就労支援が軌道にのることを願っています。

インタビュー 対象者へのインタビュー

就労評価 同僚看護師と就労評価中

ゲーム 研修会でお金釣りゲームを紹介

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健康福祉部家庭・青少年支援課

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