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(令和5年8月1日 ものづくり振興課 大空、牧野)
平成20年度に創設された「知恵の経営」認証制度の最初の認証企業である、株式会社山岡製作所(外部リンク) 山岡代表取締役社長、細谷取締役にお話をお伺いしました。
―当課の「知恵の経営」認証制度の第一号である御社ですが、改めて概要を教えてください。
山岡)弊社は、1938年に、祖父の代が京都市左京区聖護院でプレス部品の製造業として創業しました。その後、聖護院界隈が住宅街として発展したため、1970年に城陽市に移転しました。現在は、自動車や次世代エネルギー、医療、電子部品など幅広い分野において、超精密プレス金型・モールド金型や超精密プラスチック金型の製作、プレス機や無人搬送車(AGV)など生産設備の設計製作、半導体製造装置などFA関連設備の受託生産に加え、2004年に派遣会社を設立して技術者派遣事業を行うなど、幅広く事業展開しております。おかげさまで業績は好調で事業拡大を続け、2016年にはタイの金型製作会社を、2020年には愛知県の搬送機等設計製作会社を関連会社化しました。
―御社の強みの源泉は、「匠の技」を持つ職人技を持つ社員の皆様だとお伺いしています。そのような素晴晴らしい社員をどのように確保・育成しておられるのでしょうか。
山岡)弊社は、理系学生向けにインターンシップを実施していますが、理系学生だけ採用するわけではなく、文系出身者でも技術職で採用し、活躍いただいている女性社員もいます。弊社は、専門知識や資格を持たなくても、ものづくりのプロフェッショナルになる夢と、ひたむきに努力する情熱を持った社員を全力で大切に職人に育ててきました。
弊社には、独自の人材マネジメントシステム「山岡技能経営(Management of Skill)」があります。具体的には、社内の熟練工を講師として、基本的に勤務時間外で200科目の加工スキルやマネジメント教育を実施します。スキルレベルをILUOチャート(スキルマップ)で可視化し、「押し付けOJT」制度で部下後輩への指導育成も評価基準に組み入れ、全社員が協力して各社員の成長を援助します。また、技能士の資格獲得への補助制度、保有スキルや加工スピードの見える化、技能に応じたスーパー職人手当・諸手当制度、会社への貢献度に応じた追加の報酬制度を設けています。さらに、社員1人1人が年度初めに目標を立て、私(山岡社長)に提案するボトムアップ経営により、社員の意識・意欲向上に取り組んでいます。
―とても手厚い人材育成制度ですね。ただ、Z世代はプライベートを重視すると言われますが、社員の皆様に敬遠されたりしないのでしょうか。
山岡)もちろん、昔に比べてプライベートを重視する傾向はありますが、弊社には、他社に真似できない高精度加工技術を修得したいという情熱を持った社員が集まり、日夜研鑽に励んでいます。弊社の入社5年以内の離職率は7%程度で、業界内において非常に低いと思います。
1人前の職人になるには、腰を据えた長期間の研鑽が必要です。育成の過程は失敗の連続で、失敗こそが成長の糧です。ですから、弊社はチャレンジする社員の失敗を責めません。若手のチャレンジに、とことん付き合い、支えます。弊社の経営方針は「自由闊達な企業風土と失敗を恐れぬチャレンジ精神を育む」です。類まれな技術を持つ社員は、弊社の大切な財産で、誇りです。日本人の気質としても、誠実に高品質のものづくりを行うことにやりがいを感じるのだと思います。
―工場見学させていただきありがとうございます。随所に御社の「文化」を感じますね。
山岡)お客様の信頼に応え、弊社の競争力を強化して社員の幸せを守るには、技術力だけでなく、社内の安全衛生や整理整頓など基本的な取組に加え、社員による効率化・チャレンジ、社員同士の挨拶や思いやり、マナー、前向きな精神力や根気が不可欠です。そのためには、社訓や5S、ヒヤリハット、環境データ、失敗コストなどを社内で目に付くように掲示し、社員にしっかり覚えて守ってもらっています。先代から受け継いだ弊社のやり方で、一部ホワイトボードに手書きであったものをモニターに変えたりしてはいますが、本質的な部分は変えていません。平成27年度には、社員が手作りで、工場の窓を窓断熱で省エネを実現する内装工事を行って、文部科学大臣表彰を受けました。社員も、弊社の昔ながらの手作りの文化に愛着を持っているのだと思います。
―自動で動いている機械もありますが、職人さんによる手作業がたくさんあるのですね。皆さん集中されています。
山岡)ある程度までは機械で加工しても、最終的に、弊社の超高精度の実現には、職人の手による追い込み加工が必要です。たとえば、機械加工では、金型使用時のバリや表面の超微細な面荒さを除去することは不可能で、最後に社員が指先の感覚で金型を研磨します。
―研削作業中に職人さんが時折何かを確認しておられますね?
山岡)弊社の職人は、工作機械の加工保証精度を超えた加工を目・耳・指先の感覚により行います。高精度の研削盤による加工中でも、微細な異変を感じて、即時に条件修正・再測定の対応を行います。ワークに当たる砥石のわずかな感覚を頼りに、金属面に極限の仕上げを行うためには、豊富な経験と知識で砥石を操る技も必要です。
―ええ!機械にヘッドホンがついている?!
山岡)そうなんです。±1~2μm以下の精度においては、熟練工は目視による確認に加え、研磨材が金属にあたる微かな「音」をヘッドホンで「聴く」ことにより研磨具合を感じます。加工機械の進化により金型加工も簡素化が進みますが、これら長年の研鑽の末に修得する技術をベースに簡素化の良し悪しを見極めて、高精度保証プラス経年変化のない金型に拘って提供しています。機械での自動化を目指される会社が多いですが、弊社は「高度な人と機械の融合」にしか実現しえない領域を追求し続けます。
―貴重な機会をいただきありがとうございました。では最後に、今後の展望をお願いいたします。
山岡)これから、新名神高速の全線開通を活かして弊社の宇治田原工場をさらに発展させるとともに、EVなど次世代分野にも力を入れながら、人を大切にした精緻なものづくりを進めてまいります。また、我々と一緒に、熱意と向上心を持って仕事をしていただける人材も求めております!
ー今後ますますのご発展をご期待しております!
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