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産学公連携、産業振興の一環として、京の研究者・専門家の皆さんを紹介するページです。
科学技術振興機構「共創の場形成支援プログラム」(地域共創分野)
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(令和4年10月21日、ものづくり振興課:足利・足立・中原・稲継)
西脇知事による紅色光合成細菌培養デモプラントの見学会を開催しました。
西脇知事、沼田教授、Symbiobe株式会社後CEOと沼田研究室の皆さん
海水管の中で培養している紅色光合成細菌
窒素を細菌が固定した分だけ追加注入
LEDも
沼田教授(左)と西脇知事
出来上がってきた糸(左)と肥料(右)
(令和4年6月7日、ものづくり振興課:足利・稲継)
ミトコンドリア遺伝子(変異)が、様々な病気に関与していることが分かってきましたが、ミトコンドリアの遺伝子改変(修復)は、世界的に技術開発が進んでいない中、京都大学大学院工学研究科材料化学専攻 教授の沼田圭司さん(外部リンク)は、この分野をリードされてきました。
今回、遺伝子を運ぶシグナル材として、ペプチドではなくカーボンナノチューブを用いることで、植物のミトコンドリアに効率的に遺伝子を運ぶ手法に成功されました(外部リンク)。
(令和3年1月8日、ものづくり振興課 足利)
京都大学大学院工学研究科材料化学専攻 教授の沼田圭司さん(外部リンク)の技術をベースに、本日、Symbiobe株式会社が設立されました。
(掲載日:令和2年7月22日、ものづくり振興課 足利)
京都大学大学院工学研究科材料化学専攻 教授の沼田圭司さん(外部リンク)にお話をおうかがいしました。
--ジョロウグモの遺伝子を導入した紅色光合成細菌にMaSp1タンパク質を作らせ、クモ糸様のファイバー構造を再現することに成功されたとお聞きしました。
沼田)カイコやヤギ、酵母、大腸菌等からクモ糸を作らせるという取組は、世界を見渡せば、他でも研究されています。
--へー、カイコからカイコのシルクではなく、クモ糸のシルクを作る研究もされてたりするのですか。
沼田)クモ糸は、軽量かつ強靭という特性を併せ持ち、特に鋼鉄に匹敵する靭性(タフネス)を示す材料ですから。
--すごいのですね。
沼田)今回、我々は、クモの牽引糸、すなわちクモの巣でいうところの、骨格を作る糸と言いましょうか、放射状に延びる糸を再現したということです。このような牽引糸は、柔らかさなどまた違う特性があるのですよ。
--なるほど。
沼田)そして、今回の細菌、すなわち、海洋性の紅色光合成細菌は、地球上に豊富に存在する海水、窒素、二酸化炭素、光を生育に用いることができる微生物であることから、本研究成果は、天然資源の利用による持続可能な物質生産技術の一つとして、地球環境の保全に貢献すると期待できます。
--いちど遺伝子が導入されれば、細菌が増殖していってもその遺伝子は維持されるのですか?
沼田)そうです。
--それならすごいことですね。逆に遺伝子の導入ってどうするのですか?
沼田)そこがポイントなのですが、主要な方法として、遺伝子の水平伝播を利用した接合伝送と言いますが、大腸菌に導入し、そこから紅色光合成細菌に遺伝子が導入されていく方法を採っています。この手法は既に確立されたもので、やりやすいからです。
--そうなのですね。
沼田)光合成細菌を使うからには、私たちは大気中の窒素や二酸化炭素だけでクモ糸を作りたいのです。
--なるほど。
沼田)そこで、窒素や二酸化炭素を原料として、光合成細菌によりクモ糸タンパク質を合成した点が重要なのです。
--そういうことなのですね。
沼田)様々な生物の細胞に遺伝子を導入する技術の研究がなされていますが、私たちは、細胞の中のどこに導入するか、その技術で最先端を進んでいるのです。
--ほう。
沼田)遺伝子は、細胞の核だけでなく、ミトコンドリアや、植物の場合には葉緑体にも存在します。
--細胞分化の際に転写されて・・・とかいうことではなく、ですか。
沼田)ではなく、です。現在、ゲノム編集で扱えるのは、核の遺伝子が中心ですが、私たちは、ミトコンドリア、葉緑体といった細胞小器官に特異的に遺伝子を導入する技術開発に世界で初めて成功したのです。
--すごいですね!どうするのですか?
沼田)既に諸先輩方の研究で、ミトコンドリア、葉緑体に移動するシグナルは発見されており、そのシグナルの配列に遺伝子を融合させたということです。
--なるほど。目からうろこと言いますか、結果だけを言われてみると、今まで誰もなさってこなかったのですね・・・。
沼田)そうなのです。生物学系の先生方は、キャリア因子の研究をなさってこられていました。私は高分子化学、材料に関する研究をしてきました。そういう化学、物理の研究と、生物の研究が出会ったらこうなった・・・ということですね。
--研究をなさってる先生にお尋ねするのも恐縮なのですが、この技術シーズでベンチャーを立ち上げるとか・・・いったことはないのでしょうか?
沼田)私自身は研究に集中したいのですが、誰かがCEOをしてくれるなら、という思いはありますよ。どなたかいないですかね?海外への知財展開等も考えると、大学としてだけでなく、ベンチャーも作っておきたいところではあります。
--そうなのですね。先生はいつから研究の道へ?
沼田)大学4回生までは水泳に没頭していましたが、怪我で水泳が出来なくなったことがきっかけで、大学院に入り、その縁で博士への道を進んだといったところです。プラスチックやクモの糸もそうですが、高分子も構造と物性の研究をしてきまして、医療用材料、自動車の材料、アパレルの材料など多岐に亘りますね。
--なるほど。
沼田)遺伝子をがん細胞に導入するといったことも研究していましたが、やがて先ほど申しましたように、遺伝子を植物の細胞に特異的に導入できるようになったら、生物を研究なさっている方からも様々な問い合わせが来るようになって・・・というように、広がってきましたね。
--アメリカとか理化学研究所等にもいらっしゃったのですね。
沼田)京大には、実はこの4月に来たばかりで、まだ京都のことはあまり知らないんですよ(笑)
--そうなのですね。最後に今後の展望はいかがでしょう?
沼田)生物素材の可能性を拡張したいですね。例えば木造だけど、超高層ビルの材料になるとか、自動車の材料になるとかといったことですとか、例えば今後自動運転の時代が来た際に、衝突吸収性を高めるために、やわらかい材料を天然素材から作るといったことにもチャレンジしたいですね。
--夢がありますね!
沼田)企業さんではできないようなことを目指すのが研究者の務めと思っています!
大変楽しみですね!
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