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京西陣菓匠宗禅有限会社(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。

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「イタリアンあられ」と「串わらび」

(2023年12月27日、ものづくり振興課 足利)

京西陣菓匠宗禅有限会社(外部リンク)の新商品。

イタリアンあられ

「イタリアンあられ」(外部リンク)は、まさに和洋折衷の京都らしいお菓子ですね!

串わらび

「串わらび」(外部リンク)は、あられ屋でありながらわらび餅を研究されてきた同社の結晶ですね!

 

関西テレビ「よーいドン!:スゴ腕ワーカー」で日本唯一の「上技師」としてご紹介

(令和2年12月15日、ものづくり振興課)

京西陣菓匠宗禅有限会社(外部リンク)の山本社長が、関西テレビ「よーいドン!:スゴ腕ワーカー」で日本唯一の「上技師」としてご紹介(同社ホームページ(外部リンク)

京都 西陣で、日本一の「あられ処」を目指して(京西陣菓匠宗禅有限会社)

(掲載日:令和元年7月11日、ものづくり振興課)

 京西陣菓匠宗禅有限会社(外部リンク)の山本社長に、お話を伺いました。

 

-会社概要について教えてください。

山本)弊社が京都西陣に拠点を構えたのは、平成12年のことです。元々は、昭和23年に創業した大阪の米菓子屋でした。お土産品の製造販売にシフトし、たこやきブームを巻き起こしたことがきっかけで会社は盛況し、現在も父が事業を続けております。自分は米菓子屋として再度「あられ」の価値を復権したいと思い、京都で新たに会社を興すことにしました。

-なぜ京都だったのですか。

山本)日本一のあられ造りを目指したいと考えたときに、やはり京都で認められることが重要だと感じました。また、西陣は西陣織などの職人の町ですから、京都西陣で認められた技術は、日本一と言えるのではないかと思ったのです。そう思い立ち、西陣の伝統工芸師さんへ開業の相談をしましたところ、「本物さえ作っていたら、生き残ることができる。」と言って私らの開業を応援してくださり、西陣地域の皆さんも温かく迎え入れてくださいました。本店を移転する時も、町の人が場所を探してくれまして、今の場所に落ち着きました。新商品開発にしても、西陣地域の職人さんたちが色々とアドバイスをしてくださいますし、新たな視点からの発見もあり、非常に良い場所にいると感じています。現在、従業員は30名を超え、年間50アイテムほど商品開発をしております。開発してきた商品は累計1000アイテムくらいあります。

「あられ」の価値を復権したい

 

-伝統的な御菓子である「あられ」で日本一を目指すとのことですが、そもそも「あられ」はどのように造られるのですか。

山本)製法としては、まず米を洗米・浸漬します。あられ製造は冬が一番適した季節なので、製造環境は常に冬の温度に合わせていて、浸漬する水の温度も冷水にしています。一日水に漬けたら、せいろで蒸して、餅をつき、数日かけて熟成させます。熟成させることで米のうま味が深まります。その後、カットして3日間乾燥させます。室内で湿度・温度を管理しながら乾燥した後、天日干しもしています。ここまで約1週間かかり、やっと焼く工程に入ります。焼いた後は、味付けして、火入れをしながら乾燥させます。こうしてあられが完成です。

-すごく手間がかかっていますね。

山本)本当は、あられは手間のかかるお菓子です。しかし、ほかでは粉を水で溶かして混ぜて、カットして焼くだけという製法で1日で完成させているところも多いです。それが「おかき」や「あられ」の標準として流通してしまっているので、一般消費者のあられに対するイメージは安価な米菓子ですが、我々はそのイメージを変えたい。「あられ」は献上菓子であり、手間暇かけて作るものだということを伝承し、「あられ」の価値を復権したいのです。

-素晴らしいですね。そうして、伝統産業は守られていくのですね。ところで、「あられ」と「もち」の製法の違いは何ですか。

山本)原料はどちらも、もち米です。もち米をつく作業の際に、あられはよくつきますが、もちはあまりつきません。そのため、もちは米の味が残ります。また、乾燥の工程でも、あられはよく乾燥させますが、もちはあられほどは乾燥させません。

 

-なるほど。そういう違いがあったのですね。お煎餅とあられはどのように違うのですか。

山本)お煎餅は「米」を原料にしており、あられは「もち米」が原料です。ちなみに、「あられ」は、お正月のお餅を乾燥させ、手で欠いて作ったことから「かきもち」とも言います。大きいものを「おかき」小さいものを「あられ」と言って区別することもあります。

 

-そうなんですね。材料の米は、どのように仕入れているのですか。

山本)当社では、先代から「田を持つな」と言われてきました。菓子屋として、自社の田を持ちたいという思いもありますが、田を持つことによって、米の出来栄えによらず自社米を原料としてしまいます。そうすると、できあがる菓子の精度にも影響してしまうので、毎年、全国から一番適した田を探して、最良の米を選んでいます。

 

-「あられ」っていつから日本にあったのでしょうか。

山本)日本には空海が御菓子の文化を伝えたと言われていますが、日本ではその前から、餅をお供えする文化がありました。餅とあられは製法の違いだけで、原料は米です。米の豊作を祈って、「一手間かけたものを作って神にお供えする」という意識から、お正月に備える餅ができたといわれています。丸餅は縁起がいいと言われたり、鏡餅の文化があり、餅がさらに乾燥したものが「あられ」なので、見方によっては、あられが日本最古の御菓子ではないかと感じています。

 

餅屋だからこそ、わらび餅への新たな挑戦

-現在は、わらびもちの商品開発にも力を入れているのですね。

山本)そうです。現在の場所に本店を構えて、ただの売り場ではなく、カフェスペースを併設しました。作りたてのおいしさを知ること・作り方の体験をすることが「あられ」文化を残す近道だと感じたからです。そんな中で、お客さんや西陣の町内の方々から、「せっかくカフェをやるなら、山本さんが作るパフェが食べてみたい」と言われました。そこで、「既製品を一切使用しないパフェ」の開発に着手したのがきっかけです。アイスも自家製で、15品目全て作っています。和風パフェならわらび餅が欠かせないだろう、とわらび餅も作り始めました。何より自分は元来もち屋ですから、わらび餅にこだわりを感じ、6年ほど前にわらび餅も一般商品のラインナップに追加されました。パフェは、飲食業界のアワードを頂いています。

 

-なぜ、パフェから始まって、「冷凍」のわらび餅の開発に着手したのですか。

山本)餅はでんぷん質が多く含まれるため、冷凍することにより品質が劣化すると言われており、特に、水分を多く含むわらび餅については、冷凍品に向かないと言われていました。あつあつ、とろとろのわらび餅を食べるという常識の反対を行き、冷凍に成功させて海外進出を目指したいと思ったのです。

 

-すごいですね。しかし、誰も挑戦しないことに挑むのは大変だったのではないですか。

山本)はい。「冷凍する」という段階に行くまでに、3年かかりました。先ほど述べた「でんぷんの凝固による品質劣化の課題」は、急速冷凍という方法を編み出しました。通常の冷凍ですと、劣化温度帯をゆっくり通過するため、ダメージが大きくなりますが、急速冷凍により劣化する温度帯を一気に通過することができます。

さらに急速冷凍によって他にもいい影響が出ました。(1)半冷凍の状態になるため、揉めるようになり、成形が可能になったこと、(2)コシが強くなり、食感がよくなること、(3)水分量が減るため、他の材料を混ぜやすくなったこと、が挙げられます。

 

―それがきっかけで、フルーツわらびなどが生まれたのですか。

山本)そうです。わらび餅は、きなこや抹茶を和えて食べますが、生地が熱いままだと、きな粉の風味を飛ばしてしまったり抹茶の苦みを増長させてしまったりします。急速冷凍して半冷凍になったわらび餅はとても扱いやすく、きな粉や抹茶をそのまま練りこむこともできるようになったのです。また、通常のわらび餅は水分が多く、成形することや中に蜜を入れることなども不可能と言われていました。半冷凍のわらび餅は、水分が少ないため、成形して中に蜜を入れることが可能になり、フルーツソースやチョコレートなどを入れることにも成功しました。急速冷凍を含め、3段階に分けて冷凍するのですが、最終的に餅やフルーツに含まれる水分が冷凍乾燥によって飛ぶため、味が濃縮されてより美味しいわらび餅を作ることを実現しました。

 

-冷凍と聞くと、品質も味も劣化するイメージですが、むしろ冷凍によって美味しくなるんですね!

山本)はい。冷凍することでより美味しいわらび餅を作ることができました。フルーツわらびの開発後は、チョコ生菓子をわらび餅で作ろうと思い、オレンジピールやブランデーなどアルコールを含むものを入れることを研究していました。昨年から開発に着手しているのは「食べるお酒」シリーズです。

 

-「食べるお酒」ですか!初めて聞きました。

山本)フルーツや蜜は、熱を加えてとろみをつけることができますが、アルコールは熱を加えると飛んでしまうため、とろみのつけ方に苦労しました。しかし、どうしても、お酒を「食べて」みたかったのです。1年かかってやっと成功し、「食べるジン」「食べるテキーラ」「食べるウォッカ」が完成しました。

 

-わらび餅というより、本当に「食べるお酒」ですね!

山本)はい。わらび餅という枠を超えたものを作りたかったんです。せっかくなので、「食べる日本酒」や「食べるジャパニーズウイスキー」にも挑戦してみたいです。

 

「米」を食べてもらうために

-本当に、様々な商品開発に挑戦されているのですね。最近着手されたものはありますか。

山本)最近は、米粉100%の食パンに挑戦しています。一般的に流通している米粉パンは、小麦粉も含まれていたり、グルテンを追加したりして作っているので、100%米粉の食パンはほとんどありません。やはりグルテンがないとふんわりするパンが出来ないので、試作を重ねながら研究しています。天然酵母にもこだわっていますが、それだけでは膨らみが足りないので、注目したのは「塩麹」です。麹がグルテンの代用になるのではないかと思っています。

 

-なぜ米粉100%にこだわるのですか。

山本)理由は3点あります。まず一つは、米菓子屋として、米の国内自給量を上げたいという思いがあります。食の欧米化により、米の消費量が減ったため、パン食への移行が進んでしまっています。そのため、米の国内自給量はどんどん下がるばかりです。食生活を和食に変えていくことはハードルが高いため、パンそのものの原料を米に変えるという狙いです。2つ目は、アレルギーの問題です。小麦アレルギーの人口は高く、特に小さなお子さんに多いです。食物アレルギーの原因となるのはグルテンなどに含まれるたんぱく質ですから、グルテンを添加した米粉パンでは意味がありません。そのために米粉100%にこだわっています。3つ目は、「セリアック病」の問題に着目しているためです。日本では健康診断の検査項目にないためあまり注目されていませんが、グルテンを摂取すると、小腸が敵が侵入して来たと勘違いし、自らの小腸を傷つけてしまう自己免疫疾患です。小腸が傷つくことで栄養素を適切に吸収しますできなくなって、様々な状況を引き起こします。栄養が不足すると、精神面に影響を及ぼし、うつ病の原因になると言われています。心身の健康のために、グルテンフリーであることは重要なポイントになります。

 

-素晴らしいですね。新商品開発をしながら、地域のために取り組んでいることもあるのですか。

山本)西陣は職人の町と言いましたが、近々、「杼(ひ)」の職人さんが業を辞めることになったのです。織物職人が減ったこともありますし、「杼」自体とても丈夫なので、一度作ると100年くらいもってしまいます。伝統技術を持った職人がいなくなることは、町としてはとても寂しいことです。そこで、「杼」をモチーフにしたまんじゅうを作りました。伝統的な御菓子を通じて、伝統技術の歴史を残せたらいいなと思っています。こういう取組みは西陣の異業種30人くらいで集まってやっています。これから、おかき・あられの文化を継承し、価値を復権するとともに、西陣地域産業を盛り上げる活動もしていきたいと思います。

 

-どんなことにでも、とにかく挑戦し続ける姿を、これからも応援しております!

ありがとうございました!

 

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