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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2023年3月22日、ものづくり振興課 足利・中原・御厨)
獣害対策で捕獲された命を無駄にしない!
株式会社RE-SOCIAL(外部リンク)は、こうして命を無駄にしない取組を進めておられます!
(掲載日:令和2年8月8日、ものづくり振興課 中原)
株式会社RE-SOCIAL(外部リンク)取締役の山本海都様にお話をお伺いしました。
—大学時代に3人で創業されたとお伺いしました。
山本)はい、もともと同じゼミの副ゼミ長同士だったんです。
「地域の課題解決」に取り組むゼミで、京都北部の獣害対策の現場を見に行ったことからはじまりました。
—山間部では獣害被害が甚大ですよね。
山本)そうなんです。猟友会の高齢化や山間地域の人口減少等と相まって、野生鳥獣の頭数が大幅に増え、獣害被害が多くなりました。そこで、従来狩猟期間にしか捕獲できなかった野生鳥獣を、猟期以外にも捕獲をできるよう有害鳥獣捕獲の制度がつくられ、狩猟免許を持つ猟友会における鹿や猪の捕獲が、一定進みました。
しかし、猟友会の皆様は、そもそも獣害被害を減らしたくて始めたのではなく、趣味で培った技術を社会貢献に役立てるためにされています。国や自治体が有害鳥獣捕獲に対し報償金を出していますが、猟友会の方々は別の本業を持っておられる方がほとんどで個体削減の大きなインセンティブにはなっていません。
—そこでミスマッチが起こっているのですね。
山本)はい。有害鳥獣捕獲は猟師の方々の趣味の範疇を超えたものであり、行政側と、狩猟者側では有害鳥獣に対するとらえ方が大きく異なるように感じます。単に捕獲期間が延びたため、捕獲頭数は増えてはいるものの、地域レベルの獣害被害はなかなか収まりません。また、旬ではない猪や鹿など、人気のない個体は廃棄されており、捕獲個体の内9割を占めます。このように様々な課題が発生しているのです。
—サステナブルな仕組みに変えたいところですね。
山本)はい。そこで我々は、有害鳥獣、その中でもまずは鹿の捕獲の効率化を図り、捕獲した鹿も有効活用される、という好循環を生むビジネスモデルを考えました。
鹿肉を含む「ジビエ」が、実生活で普及していない大きな原因は「安定供給」ができないことにあります。野生動物であるため一定量の捕獲を確約できないこと、また、銃殺されることが多く、すぐに劣化が始まり早急に加工しないと食肉として使えないことなどが課題になっています。
—普及、流通させるために、供給の仕組みをつくる必要があるのですね。
山本)そのとおりです。そこで我々は、捕まえた鹿を一時プールすることにより鹿肉の安定供給を目指すこととしました。
—具体的にはどのようなことを行っておられるのですか。
山本)弊社のメンバーは笠置町の猟友会に加入しており、現在は猟友会の一員として有害捕獲に協力させていただいています。また銃猟ではなく「わな猟」により鹿の捕獲をしています。「わな猟」にもいくつか種類がありますが、我々は、檻の中に餌を仕掛けて、獲物が入ってきたら重みで入口がしまる「檻猟」と、地面にしかけを置いて四本足の一つがその仕掛けを踏んだらワイヤーが足をしめつける「くくり罠」の2種類を行なっています。
ただ、くくり罠は獲物を捕らえやすい反面、捕まったあとも動き回ることが多いため、脱臼や内出血などのリスクがあり、檻猟に比べると獲物の状態が悪いことが多々あります。そのため、弊社では「檻猟」をメインにしています。
しかし、この檻猟も簡単ではなく、用心深い鹿を捕らえるためには、1週間程度かけて餌で檻への道をつくらないと成功しません。
―なかなか根気のいる作業ですね。捕らえた鹿はどうされるのですか?
山本)猟期にとらえたシカに関しては山中に設置した施設で市場に出せる肉質を確保するため一時生きたままストックします。
—方法も難しそうですね。
山本)はじめは何頭も死なせてしまいました。狭い小屋ではストレスがかかることがわかりました。また、子鹿は親鹿とセットとすることが必須であることなどがわかってきています。さらに、風景が見えると突進していく性質があることがわかり、柵の密度を高めてできるだけ壁に見えるよう改良を加えました。鹿をストックしている事例は、国内でも1、2くらいしかなく、まだまだ研究途中です。
—何を食べさせているのですか?
山本)米ぬかや木の枝、お茶を漉しだした後の茶殻等を与えています。茶殻はビタミンEがとても多く含まれており、鹿肉の臭みの原因であるヘキサナールという成分を抑えることが出来ます。愛媛県の「みかんぶり」のような、一風変わった鹿肉をお届けできるように給仕しています。
—それはオリジナリティがあり、楽しみですね!解体もご自身で?
山本)そうです。徳島県の「中川食肉販売店」に弟子入りし、これまで100体以上解体し、技術を磨いてきました。コロナの影響もあり、全体的にスケジュールが遅れましたが、解体場の工事も始まりました。そこで加工した食肉を小売りはもちろん大阪や京都の飲食店等を中心に卸します。
このように狩猟から加工まで弊社で行うことで、最高の状態の鹿肉をお届けできるように取り組んでいます。
—起業の地として笠置町を選ばれた理由は何ですか?
山本)初めは、融資をいただいている京都信用金庫さんやゼミの教授からの紹介で笠置町に訪れました。笠置町は他の同業者が展開している地域に比べ、畑や田の被害面積や被害総額はとても小さく専業農家もごく少数しかおられません。しかし、家庭菜園をされている方はとても多く、被害に悩んでいます。家庭菜園の場合、獣害被害として計上されない、「見えない被害」が多く補助も受けにくい地域です。民間企業であるからこそ、「見えない被害」に対して積極的に取り組めると考え、笠置町を起業の地にしました。
—なるほど。会社だけでなく住居も笠置町へ?
山本)そうです。我々の事業には地域の方の理解・協力がなくてはなりません。信頼を築くためには近くに住むのが一番だと考え、実践しています。実際に、今では地域の方々からたくさん話しかけていただけますし、鹿が捕まれば連絡ももらえます。「捕ってくれてありがとう」を直接きける距離感を実感しています。
—今後の展開を教えてください。
山本)そもそも社名の「RE-SOCIAL」には、「循環型社会」や「理想(りそう)の社会」という思いを込めています。また、価値のついていないものに価値創造をする、「生態系サービスに最大限の価値創造を」というスローガンを掲げています。
まずは、ジビエとして鹿の価値を高めることで好循環を生み出す取組から挑戦をしていますが、今後、新たな事業分野にも着手していきたいと思っています。
—ますますのご活躍、楽しみにしています!笠置ブランド鹿が食べられるのが待ち遠しいです!!
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