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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和3年2月12日、ものづくり振興課 足利)
KTC(京都機械工具株式会社)(外部リンク)の大間課長様にお話をおうかがいしました。
--人口減少時代に突入した日本。多くの工作機がモノを自動で加工をしてくれるようになりました。しかし、工作機にモノ(ワーク)をセットする、加工されたモノを工作機から取り外す、といった作業はまだまだ人手に依っています。そんな中、そうした段取り作業、マテハン作業をもロボットに置き換えられた、というわけですね!
大間)奥の緑色をした工作機の手前にいる、白い箱形の本体の上から青いアームが伸びているロボットが、それです。今、工作機にモノをセットしているところです。
--特徴を教えてください。
大間)まず、自走式ということです。工場内の環境を予め認識しており、複数のロボットどうしが衝突することなく、目的の工作機の前に移動していきます。
--まるで作業員の方が自分の担当する工作機に向かっていくようですね。
大間)次に、ばらばらに置かれてあるモノを目(カメラ)で認識し、脳(コンピュータ)で考えて、アームが正確に動いて、ハンドで掴むことができます。
--まるで作業員の方がモノを掴むように、ですね。
大間)さらに、ハンドを自分で取り替えることができます。モノの形状に応じてハンドも違う形状のものが必要です。例えば加工前のモノと、加工後のモノでも形状が変わってきますから。こうして一品一様のモノを、ロボットと工作機だけで作ることができるようになりました。
--おお!
大間)ただ、逆にネガティブな言い方に言い換えますと、モノに応じてハンドをいちいち取り替えなければならないということです。
--なるほど。
大間)また、「自律移動」をし、人が真横にいても一緒に作業できる「協調ロボット」である故に、法令上の縛りもあり、スピードが遅いのです。
--そうなのですね。
大間)ですから、人は、昼間に人がやらねばならないことをやり、ロボットは、人が家に帰った夜間や休日に働いてもらう、照明や空調、休みも不要で働いてくれますから、そういった新しい工場の姿が見えてきました。
--なるほど。
大間)もちろん、もっと人の動きに近づけたいと考えており、アームやハンドの部分を進化させる研究開発を現在進めています。
--そうでしたね。
大間)ただし、高度な動きになってきますから、こちらは「自律」ではなく「リモート」を基本に考えています。その際には、「ローカル5G」が必要になってきます。
--その辺りもお手伝いさせていただきます。
大間)こうした研究開発では、京都府さん、京都産業21さんの「京都エコノミック・ガーデニング支援強化事業」や、国のものづくり補助金にも大変お世話になっていますし、「けいはんなロボット技術センター」のある「けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)」にも入居させていただいています。
--ありがとうございます。
大間)こうしてリモートで動かせる、人と同じスピードのロボットが完成すれば、新型コロナウイルス感染症対策としても役立ちます。オフィスだけでなく工場でも大幅に出勤を減らすことができるようになりましょう。
--なるほど。
大間)その開発の参考のため、カリフォルニアのスタートアップ企業のテレプレエンスロボットを、当社のショールーム「ものづくり技術館」に置いていまして、事務棟のパソコンやスマホからリモート操作できます。ちょっと動かしてみましょうか。パソコン画面に写っているのは、ロボットの足(車輪のついた台車部分)です。
--おお!
大間)そして、矢印のキーだけで前後左右動かせます。
--いい感じですね!これは楽しい!
大間)充電ステーションに近づけますと、後は自動で充電器に進んでいってくれます。
--おお!画面に線が出るのが、FSものの映画みたいで格好いいですね!
大間)じゃあ、実物を見に、「ものづくり技術館」に行ってみましょうか。
--さて、「ものづくり技術館」にやって来ました。これですか!?ちゃんと充電ステーションに帰ってますね。
大間)とてもシンプルなものでしょう?!スタートアップ企業らしく、3Dプリンタで作られています。
--なるほど。
大間)スマホでも動かせます。「こんにちは」(ぺこり)
--おお!なんか愛着わきますよね。お掃除ロボットとかも、そうですけど。
大間)コロナ時代になって、同じ敷地内の別セクションとの打ち合わせでもインターネットで会議を行うようになりました。特に、社内の別工場とは、これまで以上にコミュニケーションがとれるようになりましたね。互いにインターネットにつながれたパソコンさえあれば、電話感覚でできますからね。
--なるほど。
大間)さらに、こうしたテレプレゼンスロボットは、相手がパソコンやスマホがなくても会議ができます。しかも自由に動いてくれますね。
--いいですね。
大間)このロボットは、他社が付属品や付属システムを自由に加えて、販売してもいいことになっています。なのでエレベーターのボタンを押すアームをつければ、階をまたがる移動もできますね、WiFiさえあれば。
--さて、最後に、御社本業の自動車関係について少しおうかがいしますが、EV化や、スマートモビリティ化の動きに対し、いかがでしょう?
大間)自動車のエネルギーや駆動部分、制御部分が変化していくわけですが、当社の整備工具は、自動車の安全性にとってもっとも重要でベースとなっている足回り部分がメインですので、そういった意味では、大きくは変わりませんね。コロナにおいても、新車販売の動向というより、既に買われて乗られている自動車全体の数が関係しますので。
--なるほど。
大間)ただ、CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)の中でも、コネクティッドや自動化の部分は特に関心を持って見ています。自動車自らが状況を伝えてくるようになりましょう、内部的には既にそうなっておりましょうけれど。そうなった時に、整備工具側もコネクティッドであり自動化でありたいと思います。すなわち、整備マニュアルが、どの工具とどの整備法がいいかを自動で伝え、整備記録も自動で残る、そんな時代を目指し、我々も進化していきたいと思っています。
引き続き、同社の動きには目が離せませんね!楽しみです!
(掲載日 平成28年8月18日 ものづくり振興課)
本日開催されました、IoT/IoEビジネスセミナー「イノベーションで多彩なビジネスチャンスを考える!」にて、京都機械工具株式会社 次世代開発本部ブランド戦略部長の髙橋広様にご講演いただきました。
開催報告
(平成28年1月12日、平成30年5月14日更新、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
KTC(京都機械工具株式会社)(外部リンク)メディカル部の坂根部長様、ものづくり技術本部生産技術部の大間課長様にお話をおうかがいしました。
KTCものづくり技術館に飾られている工具の数々
―アイテム数12,000、自動車整備工具の国内シェアNo.1の御社の歩みを教えてください。
坂根) 1950年に創業、航空機用工具製造に始まりほどなくしてトヨタ自動車搭載工具に採用され、自動車工具製造事業に進出し、同社のジャストインタイム、かんばん方式も採り入れながら量産体制を確立しました。やがて、海外製品の流入など時代の変遷を踏まえ、社是でもある「軽くて、強くて、使いよい」、そして美しさや格好良さなど、質を高め「違いの分かるプロ」をターゲットにブランド化を図りました。おかげで「あこがれの工具」という地位を確立できました。現在では広く一般向けにもご愛用いただいております。
工具ケース(同社製)もカッコイイ!
―新製品の開発はどのようにされてらっしゃるのですか?
坂根) 世の中の動向を予測して展開マップを考えていくのです。それを元に製品ラインナップを構築して開発をしていきます。それには業界文献や展示会、営業やモニター情報などがベースとなっています。
TOYOTA F1チームとテクニカルパートナー契約
―顧客の声を拾う仕組みはどうなっているのですか?販売ルートは?
坂根) 販売は代理店経由ですが、全国にモニターを有しており、直接情報収集をしています。
―生産上の強みはどういったことでしょうか?
坂根) 材料の仕入れから出荷まで全て京都本社工場内で行っています。こうすることで、変化に素早く対応できます。材料切断、鍛造、切削、熱処理、表面処理、検査、梱包はもちろん、製造機械のメンテナンスも全て内製化しています。機械や治具は社内生産しているものも多数あります。
―そうか、鍛造なのですね。
大間) 冷間鍛造は、常温成形ですから金型寸法と製品寸法にほとんどズレがなく、仕上精度や公差の面で優れた手法です。ただ、1プレス当たりの変形量が少ないので、複雑な形状にするには金型数が必要であるなど、コストが高いので、数量が多い場合に向いています。一方、熱間鍛造は、成形後常温になれば製品は収縮するので、精度面では劣りますが。異形など複雑形状には向いています。当社では、トルクレンチやスパナなどの汎用品だけでなく、自動車メーカー様から、様々な特定の用途向けの道具の依頼も多く、鍛造方式も使い分けているのです。
―熱処理や表面処理もなさっているのですね。研磨工程も拝見していておもしろいです。
大間) 様々な大きさの砥石があります。メッキ槽、ひっかけ治具も、製品の種類が多いので、多様ですね。このように、当社に来ればひととおりの加工が拝見できるということで、学校はもちろん、「大人の工場見学」も多いです。
―そうなのですね。海外展開はどういう状況ですか?
坂根) 日本車が多いということもあり、東南アジアを中心に展開しています。日本車には日本車向きの当社工具が最適で好評です。
―大変興味深いのがトルクをデジタル管理するトルクレンチです。これについて教えてください。
坂根) 今では同様のものが多くありますが、デジタル表示をするトルクレンチを先駆けて世に出してきました。ボルトナットの締め付け加減の個人差を無くし、安全性を高めるために大変重宝されています。2008年の大型トラックのタイヤ脱輪事故がきっかけでトルク管理の重要性が一気に高まりました。「安全」は日本のものづくりが象徴する代名詞です。自動車向けだけでなく鉄道、工場向けなど幅広く求められるようになっています。また、単なる測定ツールを超え、誰が、いつ、どのように締めたかを管理するシステムに進化しています。
インプラント手術器具 「Newton-1」
―さて、歯科用インプラント工具について、開発の経過はどうだったのですか?
坂根) 車好きで当社工具のファンであるドクターからの一本の電話がきっかけでした。歯科ツールが、自動車工具とよく似ているのでインプラント用のトルクレンチも作れるのではないか、というものでした。骨に直接インプラントを埋め込み義歯を固定する際、どのくらいのトルクで締めるか医師の堪ではなく、確実なトルク管理により安全な施術が可能となる。その後に緩むこともなくなります。当社にとっては全く未知の分野でありましたが、そのドクターと開発、テストを重ねながら、最初の販売代理店も紹介いただきました。完成・販売まで足かけ5年で販売にこぎつけました。
インプラント技工用機材 「ラボトルクドライバ」
―ご苦労されたのはどんな点でしたか?
坂根) まずは当時の薬事法対応です。作れば従来の流通ルートに乗せて売れるものだと思っていたくらいで、医療機器製造施設の建屋は別にしなくてはならないこと、製造販売業等の許可も必要なことなど最初は全く知りませんでした。同様にお困りの企業はたくさんいらっしゃって、後に他の企業さんがよく相談に来られました。ですので、当社だけではありませんが、京都産業21さんに薬事法相談窓口の必要性を申しておりましたところ、「医療・介護等機器相談窓口」を設けられ、今でもよく利用させてもらっています。
インプラント手術器具 「トルクラチェットレンチ」
―他には?
坂根) 経験と勘を重視する歯科業界のドクターたちに「トルク管理」の重要性を認識してもらう啓発にも労力を費やしたと思います。
―最後に、今後の展開について教えてください。
坂根) 会社全体については、「次世代工具」の開発です。すなわち、自動車工具で進めてきたデジタル化を更に進化させて、「修理」だけでなく「予防」から「アフターフォロー」まで含めた一貫サポートの展開です。同じくメディカル部門については、歯科分野から医療全般を視野に、トルク管理に適する領域を見つけ進出していくことです。
未来社会を予感させる同社。今後の展開がますます楽しみです!
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