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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。
(掲載日:令和元年6月6日 聞き手:ものづくり振興課 足利)
こと京都株式会社(外部リンク)(京都市伏見区)の営業課リーダー 小川様にお話をおうかがいしました。
-カット葱で有名な御社ですが、改めて事業の概要を教えてください。
小川) 当社は2002年に創業した農業生産法人で、現在約150名で九条ねぎの生産、加工、販売を行っております。
-農業生産法人ということは、農地を保有するなどして葱の栽培から手掛けてらっしゃるのですね。
小川) はい。5割は自社です。残りの5割は、「ことねぎ会」という契約農家から仕入れています。「産地リレー」を行うことで、年間を通した安定出荷を実現しています。11月~3月は京都市内、3~7月は亀岡市、7~11月は南丹市美山で生産を行い、通年で九条ねぎを栽培しております。
-なるほど。
小川) 「ことねぎ会」は、京都伝統野菜・九条ねぎの伝統を継承し守る会として形成しており、九条ねぎの栽培技術向上や年間安定供給の実現に向けた研究も取り組んでいます。
-そんな中で、御社の九条ねぎは、何か特長があるのですか?
小川) 現在当社では「こと九条ねぎ」としてブランディングを行っております。具体的には、(1)京都府内で生産され、(2)その地域等で守られてきた農法を基本に慣行農法による農薬や化学肥料を抑えた栽培方法、(3)九条ねぎ群に属する原種、またはその原種から直接交配した品種によるものという定義を設けております。
-そうなんですね。
小川) 「あんじょう」という品種の種を使用しており、味の良さを追求しこだわりを持った九条ねぎです。九条ねぎは栽培期間が他のねぎに比べると長いこともあり、背丈が80cm以上まで伸び、葉の厚みもあり食べ応えのあるねぎです。九条ねぎの葉の内側に、他のねぎに「ぬめり(あん)」があり、ここに甘さが凝縮されています。
-ぬめり、おいしそうですよねえ!!
小川)九条ねぎの天ぷら・すき焼き・お肉に巻いても美味しく召し上がれます。
-ドローンがありますが、何のためですか?
小川) 今は空撮用です。今後は、空撮により成育状況を確認などにも用いたいと考えております。また東京オリンピックの選手村での供給も見据えて、JGAP認証も取得しております。
*GAPとは、「農業生産工程管理」を意味し、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のこと。
-栽培については分かりました。収穫されたねぎは、どうなるのですか。加工について教えてください。
小川) 収穫の段階で根付き原体・根切り原体・カット用の3つに分類します。根付き原体・根切り原体は、まず一次調整場である、向島工場に運ばれます。根付き九条ねぎは手でほぐし、土を落とします。その後「ねぎピカ」と呼ばれる機械でそれぞれ人の手で並べながら、洗浄・選別作業を行います。
-ん?!なんか、クラシック音楽が流れてません?!あっ、保管庫にスピーカーがあるんですね。
小川) 実は、保管の際にクラシック音楽を聴かせています。植物も健康からストレスを感じると言われておりますので、クラシックを聴かせることで、リラックス効果があるのではないかと。スピーカーにもこだわっていますよ。
-おもしろいですね。
小川) ありがとうございます。カット用の葱は横大路工場に運ばれます。カット加工は、機械(スライサー)にただ単にねぎを通すだけの作業ではなく、圃場ごとに収穫・納品されたねぎの状態を知り、プロとして目利きし、実際に手で持った感覚を意識してカットしています。原料は適切な温度で、適切な場所で区分けし、鮮度を保持しながら冷蔵庫での保管に気を付けています。床からの跳ね水による食品の汚染なども防げるように管理しています。
-横大路工場では、伏見の水を使用しているとか?
小川) そうです。伏見地域は酒蔵の名所で有名なこともあり、非常に水が綺麗です。軟水で綺麗な水を使って洗っています。
-加工面での差別化要素は?
小川) お客様の用途に合わせて様々なカット幅で加工できるのが特徴です。ラーメン屋さんには3mmカット・居酒屋店には1mmカットなど様々な用途に合わせてご提案をさせて頂いております。
カット幅は現在1mm・2mm・3mm・5mm・斜め切り・加熱用カット計6種の規格を取り扱っております。
-ただでさえぬめりが多いから、難しいのでしょうね。
小川) スライサーの歯の研磨方法・回数など試行錯誤しながら品質保持の向上を行っております。ねぎは歯触りが命ですから。
-袋詰めは手作業なんですね。
小川)はい。人の目で確認をしながら、丁寧に袋詰めができるように手作業です。時間はかかりますが、消費者に安心して供給するために譲れない部分です。出荷までの間、冷蔵庫で保管します。
-実は、創業間もないことに、農林水産部職員として寄せていただいたことがあって、当時創設した農業法人づくりに関する事業の第1号案件として取り組んでいただいたんです。よくこれだけ会社を大きくされましたね。
小川) 創業当初、後発組でしたし、社長は、関東のラーメン屋さんから開拓を始め、約300件営業に回ったそうです。当時、ネギ農家がそんな営業に回るなど誰もやっていないことでした。
-頭が下がりますね。しかし、どうして「ねぎ」だったのですか?
小川) 社長は、アパレル業界で働いていましたが、家業を継ぐことになったそうです。もともと実家は1haの農地でホウレンソウや大根など、季節の野菜を栽培していました。売上を伸ばすには品目を絞り、良い物を大量に作るしかない。そう決意した社長は、京の伝統野菜であり、通年収穫が可能な九条ねぎに賭けます。 作業効率が上がって、売上は初年度の400万円から1600万円になりました。それでも目標売上1億円にはまだ遠くおよばないということで、カットねぎの加工・販売を手がけることにしました
-なるほど。
小川) 最近では、単なる薬味ではなく、料理の素材そのものとしても扱われるようになってきました。すき焼きや炒め物、九条ねぎの天ぷらなども京都の料亭さんのメニューとして出されております。ねぎ坊主の天ぷらもありますよ。
-ねぎの地位向上ですね。工場も新たに設立されるんだとか。
小川) はい。東京オリンピックの食材供給を担うことを目指しています。関西から関東への安定流通は非常に難易度が高いのです。震災にも左右されますし、僕自身、流通が途絶えて東京まで新幹線で20kgのねぎを運んだことがあります。
-では、新工場設立で関東圏への安定流通が可能となるのですね。
小川) はい。新工場設立にはもう一つの狙いがあって、農場併設型の6次産業化モデルとなることを目指しています。九条ねぎ栽培のノウハウを活かした白ねぎや青ねぎの生産、そして加工品の製造まで一環して行える工場になります。2014年に「こと日本株式会社」という日本のねぎ専門商社を設立しましたので、全国のねぎ産地との連携や、国産葱供給能力の日本一を目指し、新工場を東の拠点にする計画です。
-今後は、ねぎ市場のシェア拡大の他、どのような取組みをされる予定ですか。
小川) 京都府内の流通で留まっている京野菜の他府県流通や、九条ねぎの海外流通を目指しています。2015年に「こと京野菜株式会社」を立ち上げ、九条ねぎを中心に、京野菜の冷凍加工に挑戦しています。ねぎは水分量が多いため、冷凍に向いていませんでしたが、岩谷産業株式会社様の鮮度保持技術を活用し、水分や養分を均一に保持したまま冷凍ができるようになりました。収穫時期が限定される他の京野菜にも注目し、当技術を活かして冷凍加工を可能にしています。冷凍加工品の製造量を増やし、流通拡大を目指します。
-カットねぎの生産、ねぎ市場のシェア拡大、冷凍ねぎへの挑戦など、幅広い取り組みですね。御社はふしみ美人プロジェクトにも関わっておられますが、どのような狙いがありますか。
小川) 弊社は様々な挑戦で売り上げを伸ばしてきましたが、一般のお客様、いわゆる最終消費者の方にも「こと京都」を知っていただきたいという思いがあります。ふしみ美人プロジェクトを通じて、「こと京都」という名前を知ってもらい、直接目にしてもらえる機会が創出されたらいいなと思っています。
-どんな商品をふしみ美人プロジェクトの商品として出されるのですか。
小川)まずは、「乾燥九条ねぎ」です。カットねぎは賞味期限が短く、すぐに消費する必要がありますが、乾燥ねぎは一番シンプルに使用してもらえます。味噌汁やスープなどにそのままお使いいただいたり、たまご焼きやパスタなど料理のアクセントにもなります。コンパクトで軽量なので、京都のおみやげ品としても適していると思います。
-他にも色々な加工品を作ってらっしゃるのですね。
小川)はい。九条ねぎのポタージュ、グリーンカレー、ねぎ味噌など色々な製品があります。自社で加工している商品は、乾燥九条ねぎ、九条ねぎドレッシング、九条の葱の油です。
-九条ねぎの油もあるんですね。
小川)こちらは「イル・ギオットーネ」笹島シェフに監修していただきました。山中製油さんのなたね油を使用しており、まさに京都らしい商品で京都限定商品として販売させて頂いております。今後こちらの商品もふしみ美人プロジェクトのラインナップに載せたいなと検討しています。
これからも、様々な取組みを応援しています!
ありがとうございました!
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