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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2023年12月14日、ものづくり振興課 足利、安達、中原、木原、白石)
IVS 2023 KYOTOのLAUNCHPADで「スタートアップ京都国際賞」を獲得された株式会社aba(千葉県)(外部リンク)の製品を深掘り!
まずは、本年10月30日に販売開始された本商品がどんなものなのか?
その特徴は「ベッドに敷くだけ」ということ。介護職員の声、被介護者の声として「身に着けるものはNG」ということがあったからです。そうですよね、身に着けると、心身両面で負担になりますものね。
そして「検知」されたら、端末の表示が赤色になればオムツ交換が必要のサイン、黄色はそろそろ交換のサインです。
これまでは決まった時間にオムツ交換をしていたため、「排泄していないのにオムツを開けられる」「排泄しているのに時間になるまでオムツ交換してもらえない」という被介護者の悩みを解消するとともに、定期交換を無くし介護職員の負担も軽減できることになるのです!
このスグレモノを支える仕組みとは?
センシングは、ビッグデータに裏打ちされたにおいセンサーです。
全国の排泄検知データをもとに、AIによる学習がなされており、ユーザーが増えるほどに検知精度が高まり、より良い排泄ケアが提供されます。
開発のきっかけは何だったのだろうか?
中学時代に、祖母の介護を経験したという宇井さん。「介護者の負担を軽減したい」という思いからロボット開発の道に進まれました。大学時代、実習先で見た排泄介助の現場は壮絶だったそう。まだ汚れていない「空振り」や失禁に悩まされる職員から漏れた声が「オムツを開けずに中が見たい」でありました。それが原点となり、2011年、大学4年生の時に起業されました。
padという「製品」を売買するのではなく、「サービス」として展開されており、大変利用者想いとなっています!
(2023年11月10日、ものづくり振興課 中原、木原)
IVS2023 LAUNCHPAD KYOTOで見事優勝され、初代「スタートアップ京都国際賞」を受賞された株式会社abaの宇井代表取締役にお話を伺いました。
-- 「スタートアップ京都国際賞」受賞おめでとうございます!反響などありましたか?
宇井代表取締役(以下「宇井」))全国の介護事業所等から、「ぜひうちの施設にも入れたい」と多数の問い合わせをいただきました。また、「一緒にabaの事業に取り組みたい」という、営業、広報、エンジニアなどの専門家にチームにはいっていただくことができました。
--スタートアップ業界だけではなく、介護事業所の方々にもお声が届いたと。
宇井)プレゼンの中でも、介護事業者へ届けたい、介護職員の負担を軽減したい、という想いを込めました。
-- 受賞時のコメントでも、一人の介護事業者の声から今の事業ができたとお話をお伺いしましたが、起業のきっかけを改めて教えていただいてもよろしいですか?
宇井)学生の時に介護ロボットの研究をしていて、介護施設の方にヒアリングにいったんです。現場の方々とお話をする中で、我々への気遣いと、「言ったところで叶わない」という半ば諦めからか、本心を話していただけていないような感覚がありました。
実際のところ、当時の我々のアウトプットは「研究論文」でした。これでは、現場の方々は誰も喜ばないな、と。そこで、実際に現場の課題を解決する製品を世に届けるため、大学4年生の時に起業をいたしました。
-- 使命感と行動力に脱帽です。実際に介護事業所での従事経験もおありだとか?
宇井)実際に現場で使っていただけるものにするためには、介護の“全体”を知らないといけないと思い、介護事業所でアルバイトをはじめました。
さらには、研究開発の傍ら、実際に3年間ほど介護事業所の職員としても勤務をしました。
-- なんというバイタリティ。やはり現場に入ると違いましたか?
宇井)介護職員の忙しさにまずは驚きました。少ない人員にも関わらず、やるべきことが山程ある。「やらなくてもよいこと」「後回しにできること」がわかるだけでも助けになる。その中の一つで出てきた声が「おむつの中が見たい」というものでした。
-- 具体的にはどういうことでしょう?
宇井)介護職員は、要介護者のおむつの交換を定期的に行っています。ですが、毎日同じ時間に排泄が行われるわけではないので、交換にいくと、排泄から時間が経っていてベッドに漏れてしまっていた、又は、まだ排泄していなかった、といったことがあります。
“排泄したらすぐ交換にいく、排泄していなかったら交換にいかない。” 業務の効率化には、これを実現する仕組みが必要でした。
-- それで開発されたのが、Helppadなのですね。
宇井)はい。ベッドのお尻部分ににおいを検知するセンサーを埋め込んだパッドを敷いて、排泄が行われると、そのにおいに反応してWEBアプリ上にアラートを出し、交換のタイミングを知らせる製品を開発いたしました。においの検知には、空気清浄機などで使われている一般的なセンサーと同じ技術を用いています。
-- そして今回、バージョンアップした「Helppad2」の販売を開始されたとのこと。改良点を教えていただけますか?
宇井)以前のHelppadはやや幅が広かったため、褥瘡を心配される方がいらっしゃいました。そのため今回は、幅を狭くし、褥瘡が発生しやすい仙骨に触れない大きさへと改良いたしました。
また、におい検知の方法を、マットの下に通したチューブで空気を吸引する形式から、薄型かつ防水性の高いにおいセンサーをマットの下に埋め込む形式へ変更したことで、チューブへの異物混入等のおそれがなくなり、メンテナンスも容易になりました。
▲(奥)初代Helppad、(手前)Helppad2
-- より安心して使っていただきやすくなったのですね。
宇井)既に多くの介護事業所から発注いただいておりますし、これからは代理店とも連携して、全国へお届けしていきたいと思っています。今後、ご家庭からの需要にも対応をしていきたいと思いますが、その際は、ケアマネさんと十分に相談していただくことを仕組みに取り込めればと思っています。介護の悩みを自身で抱え込んでしまうご家族も多いので。
-- なによりも、介護現場ファースト。
宇井)私たちの製品は、技術ドリブンではなく、現場の介護職員の“願い”に端を発した、ニーズドリブンのものです。だからこそ、真に現場に求められる形を実現することができました。
ただ、介護現場の課題はまだまだたくさんあります。これらを解決していくために、まず、介護に関わる方の「こうなったらいいのに」という“願い”を言語化していくことが重要だと考え、今年の介護の日に合わせ「#ねかいごと」という取組みも始めました。
-- 「#ねかいごと」!?
宇井)「介護の日」である毎年11月11日に、介護にまつわる願いごと(=ねかいごと)を皆でつぶやこう、という呼びかけです。我々が介護職員の一言からHelppadを生み出したように、課題や悩みを言葉にすることが、解決に向けた第一歩になると信じています。
今年は、Helppad2のローンチイベント兼関係者へ感謝を伝える会として、「ねかいごと」と題したイベントも開催いたしました。
-- 私もイベントに参加させていただきましたが、abaが多くの方々に応援されているなと感じましたし、自社製品に限らず介護業界全体を良くしようとの想いがとても伝わってきました!
さらなる御活躍、楽しみにしております!
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