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京都まちとみどり写真コンクール令和元年度第35回講評

[総評]審査委員長:白岩貞昭(京都写真家協会)

第35回京都まちとみどり写真コンクール、今年も283作品ものたくさんの応募がありました。
さまざまな皆さんからの御応募作品、心から感謝いたします。
このコンクールは「京都・まち・緑」というお題が決まっているのが他の写真コンクールと少し違ったところです。
応募された方々の作品は緑というテーマをそれぞれの思いで切り取った秀作揃いです。
写真の完成度だけで評価したのではなく、その「まちの緑」に触れてみたい行ってみたいと思わせてくれているか、地域の魅力が伝えられているのかが大きなポイントになっています。今回も入賞作品13点、佳作16点の合計29点、審査委員の皆様にも1枚ずつ丁寧に選んでいただき、力作を並べさせていただくことが出来ました。

皆さんの作品で思う事は、街や緑に対する優しさや思いやりのようなものを写真に感じます。お気に入りの場所やお散歩コースがあるようで、カメラを担いで足繁く通われている姿が浮かびます。同じ場所でも季節や時間帯が違えば全く違った表情を見せてくれます。そんな街や緑に対する愛おしさが作品に込められているように思えます。気分が良く優しい気持ちの時ほど良いシャッターチャンスに遭遇するものです。
デジタル撮影の昨今、露出や構図は後処理でまかなえますが、込める思いやシャッターチャンスはその時だけの物です。すばらしいまちと緑、これからも新たな発見や魅力的な作品ができあがるのを心より楽しみにしています。

京都府知事賞「雨色の回遊」小和泉春男

色とりどりのアジサイが咲き誇る善峯寺。高台から望む景色は絶景ですね。
そんな絶景のなか女性がひとりで赤い傘をさし回遊しているのも、見ている側にいろいろな連想を与えてくれます。
S字の上り坂で難しい構図ですが、うまくバランスがとれていて、小雨がよく似合う情景をうまく切り取っている作品です。アジサイの色にも負けない傘の朱色が、今にも動き出しそうなシャッタータイミングですね。

京都市長賞「ツツジ咲く新緑の階段」谷八紘

今年の蹴上浄水場ツツジ、満開には少し早かったようですね。しかしちらほら咲き始めのツツジと階段上部に歩く女性のリュックの赤色の構図が見事で、新緑の時期をうまく演出しています。
天地を少しトリミングし余計な部分を省いているので新緑のグラデーションに目を引きつける効果があらわれているのも良いところです。階段で画面を二分するような構図もダイナミックで印象的です。

特別賞(久御山町長賞)「スクリーン役の水田」早坂良二

高速道路の真下に水田という対比、それと夕景という物悲しさも面白いです。田んぼに映り込むグラデーション、それに横ラインの使いかた画面の切り取り方がうまいです。所々に残った苗の配置もバランスがとれています。ただもう少し暗く調整すれば空の色が強調できたのではないかと思います。

(公財)京都府公園公社理事長賞「夕日に輝く」川口喜美惠

色づき始めた公園の木々に向かう後ろ姿の女の子。元気に縄跳びをしている姿が可愛いですね。
お孫さんなのでしょうか。女の子の髪の毛が夕日に輝いてポイントになっていますね。
もう少しクローズアップしてみると躍動感が出てくるように思えます。

(公財)京都市都市緑化協会理事長賞「シャボン玉の不思議」中村多克

3月の終わり頃でも緑の芝生が鮮やかに映えている、気持ちの良い憩いの場所なのですね。
子供の頃によく遊んだシャボン玉ですが、じっくり見ると上下に景色が写っています!写真で大きく見なければ気づかないものなのですね。
大小のシャボン玉が家族連れや子供たちの休日を、楽しそうに演出しています。良いシャッターチャンスです!

(一社)京都造園建設業協会長賞「緑の守人」村田寛明

緑の枝葉が詰まった布袋?
よく見てみると足と頭が見え街路樹の手入れをされている方の後ろ姿だとわかりました。大きな布袋を担いでいる姿で、題名のように御苦労が伝わってきますね。何気ない日常ですが見る人をなんだろうと思わす力、インパクトのあるユニークな作品だと思います。絶妙のシャッターチャンスですね!

京都府市長会会長賞「晴天に咲く」居原田晃嘉

大胆に太陽を入れ込み、魚眼レンズの面白さが強調できている作品ですね。空の青と白い雲、コスモスの淡いピンクがすがすがしく、コントラストの良い作品に仕上がっています。遠方にまで沢山の人で賑わい、それぞれが楽しんでいる様子も行ってみたいと思わせますね。

京都府町村会長賞「風のオーケストラ」田中雅之

緑の木々を背景にたくさんの風鈴、真正面から仰ぎ見るような左右対称の構図が、見る物を引きつけてくれます。周りの木枠を歪まずにまっすぐにすることで、風鈴の音が規則正しく五線譜の上を奏でて行くように感じます。また着物を着た女性を真ん中に配置する事で、頭上を越えて音色が広がっていくような演出も出来ています。

京都新聞賞「シルエット」阪本良弘

夏の日の夕方、公園で遊ぶ二人のシルエット。ボールを蹴って遊ぶ親子の姿が、まるで切り絵の世界のように仕上がっていますね。
背景のグラデーションと、人物の動きも良いタイミングでとらえています。思い切ってシルエットで撮影した事で、夕刻の情景を上手い具合に誘い出し叙情的な作品に仕上がったのだと思います。

KBS京都賞「緑の中で体操」白木文枝

新緑いっぱいのこどもの日、丹波自然公園でのワンショット。みんなヘルメットをかぶりアスレチック前の準備体操なのでしょうか、元気に飛び跳ねている姿が躍動的です。広角レンズの歪み感が功を奏し、中心からの放射消失点効果も動きの後押しをしていますね。

エフエム京都賞「初夏の八瀬」金岡明光

画面いっぱいに緑が広がり、池と木の枝の構図もバランスがとれていて安定感があります。
鯉が湖面に跳ねたのでしょうか、散歩されてる女性が池の波紋に目を止めてるのも絶妙のタイミングです。静かな散歩コース、池の波紋が音楽を奏でてるようで上品な作品ですね。

NHK京都放送局賞「230段凍れど」和田敏博

モノクロ写真のような冬の情景写真が目にとまりました。中央に長い階段、シンメトリーな構図で安定感を保つなか、凍り付いた階段を駆け上がる姿が印象的です。モノトーンな色彩で寒さも伝わってきます。またよく見るとその男性は赤い手袋をされてるんですね。雪の白と階段の黒、ワンポイントの赤色が良いですね。

奨励賞「丹後の海」公文雄基

撮影を重ねていくとポイントを探してみたり、見せ方をひねってみたりと余計なことを考えがちなのですが、この作品は素直に景色を切り取っています。目の前に広がった景色をどこで切り取るかが難しい所なのですが、コントラストや色彩、空と海のバランスもよく安定しています。まるでポスターのようですね。
19歳、これからの作品に期待します。

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