選定理由 |
府内での記録が少なく、また近年の生息が確認されていない。 |
形態 |
成貝は殻高10mmに達する。殻は左巻で、薄く細長い。殻頂は尖り、螺層は離れてゆるく巻いている。縫合は深い溝状となり、その縁は鋭く角張っている。殻口は長卵形で、上方へ細長く、下方へ丸くなる。殻表には成長脈と弱い螺条がみられる。
◎近似種との区別
ヒダリマキモノアラガイには殻表に明瞭な螺条がある。 |
分布 |
本州、四国、九州に分布するが、産地は極めて局限される。府内では嵯峨大覚寺の大沢池、琵琶湖疏水、巨椋池で記録がある。
◎府内の分布区域
淀川水系。
◎近似種との比較
別亜種がインドに分布する。 |
生態的特性 |
春から夏にかけて、水生植物の茎などの表面に産卵すると考えられている。卵嚢は直径1.5〜2.5mmの扁平で円形に近い形をしており、比較的堅い卵嚢膜がある。卵嚢内には4〜8個の卵がある。1週間ほどで稚貝が這いだし、1年後には殻高10mm前後に成長し、産卵すると考えられる。殻高10mm以上の個体が見られないことから、産卵後にほとんどの個体は死亡し、寿命は1年と考えられる。生息地では、アシやマコモなどの茎に付着している。しかし、それ以外の生息環境に関する情報は不足している。 |
生息地の現状 |
本種の消長はかなり激しく、一度確認できた場所でも再確認ができないことが多い。府内の生息地もそれ以後には確認されていないが、思いがけない場所で発見される可能性がある。本種はヒラマキガイ科に属するが、殻は平巻でなく、螺塔が高く発達する点で特異な種である。また、別亜種が遠く離れたインドに分布し、生物地理学的にも興味のある種である。 |
生存に対する脅威 |
河川改修や圃場整備により、本種の付着する水生植物などが激減しており、生息環境は悪化している。 |
必要な保全対策 |
本種は個体群の消長が激しいため、生息地の保護が直接本種の保護につながるかどうかは疑問がある。生活史や繁殖生態などの基礎的な研究を行い、本種の種族維持の特徴を明らかにする必要がある。また、思いがけない場所で発見される可能性があるので、水草帯がある溜池などの改修の際には注意深い調査が必要である。 |
その他 |
日本固有亜種 |