選定理由 |
本来は樹洞を昼間の隠れ家にするコウモリであるが、大木が激減し、樹洞が消失したために、家屋を利用せざるを得なくなっていると思われる。 |
形態 |
ヒナコウモリ科の中では中型であり、背中の毛が霜降り状である。 |
分布 |
北海道、本州、四国、九州。
◎府内の分布区域
正規には滋賀県側に当たるが、滋賀県と京都府の境にある比叡山の本堂に200〜300頭の出産・育児集団が毎年形成されるのが知られる。これらのコウモリは当然採餌行動は京都府でも行っていると思われる。なお、2001年3月に京都市鞍馬寺で14頭の冬眠している本種が発見された。 |
生態的特性 |
夕方に隠れ家から飛び出して、飛翔する昆虫類を採餌する。昆虫類が飛ばない冬期には冬眠するものと思われるが、どこで冬眠するか不明である。初夏にコウモリ類では珍しく1回に2子を出産する。本種は本来は樹洞を昼間の隠れ家にしていたと思われているが、樹洞が消失している地域では家屋でも繁殖するのが知られる。 |
生息地の現状 |
滋賀県と京都府の境にある比叡山本堂に200〜300頭の出産・育児集団が毎年形成されるのが知られるのみであったが、2001年3月には京都市鞍馬寺で14頭の冬眠している本種が発見された。これら両寺の間で群れ間の移動があるのかどうかは目下不明である。ちなみに、鞍馬寺の1頭は青森県で出生した個体だという。すなわち、青森では繁殖集団が知られるのみであり、比叡山も繁殖集団、一方鞍馬寺は冬眠集団であり、それらの間の移動に関しては今後の問題であり、まだ不明のことばかりである。いずれにしても、本種は本来樹洞をねぐらにするコウモリであり、家屋で繁殖すること自体が生息の危機的状態にあるということである。ちなみに京都府からは、隠れ家として利用する樹洞はまだ発見されていない。 |
生存に対する脅威 |
繁殖集団及び冬眠集団が各1か所のみであり、しかもそれらの集団の個体数も多くない。また、それらの昼間の隠れ家が寺であるので、そこをいつまで利用させてもらえるのかについては、今後非常に不安定である。 |
必要な保全対策 |
まず、本来の昼間の隠れ家である樹洞を今後一切減少させない。現在繁殖に利用されている寺院の理解を得て、しばらくコウモリに隠れ家を提供させてもらう。その間にコウモリの安心して住み着ける人工の「コウモリ小屋」を比叡山や鞍馬寺の一角につくる。 |