選定理由 |
いずれの地域でも個体数はごく少なく、京都市内では東山区から伏見区の丘陵近辺で確認されているにすぎない。しかも、そのうち2ヶ所では、すでに生息を確認できない状態であり、絶滅が危惧される。 |
形態 |
体長20〜30mm大型のベッコウバチ。全身黒色、翅は黄褐色、頭部前面が鮮やかな黄色、肢も基部を除き黄褐色。一見するとキバネオオベッコウ(旧称ベッコウバチ)やキオビベッコウなどと類似するが、頭部・胸部の斑紋が異なり、とりわけ鮮やかな黄色を特徴とする。 |
分布 |
本州、四国、九州、台湾にも分布。いずれの地域でも個体数はごく少ない。 |
生態的特性 |
アシダカグモ(本来は熱帯産であるが、日本では屋内に生息することが多い)や、おそらく野外にいるコアシダカグモなど大型の徘徊性クモを狩り、朽ちた切株や樹洞内の腐朽材に営巣する。京都府市岡崎ではカシの腐朽した倒木に、伏見区桃山ではアカマツの古い切株に、大阪府池田市でセンダンの大木の腐朽材に、淡路島では神社の杉の老木に営巣することが確認されている。岩田久二雄によると、台湾でも大きな古木の樹洞内に営巣していたという。 |
生息地の現状と保全対策 |
府内で知られている生息地のうち、岡崎の記録は1957年であり、その後は未確認。伏見区では遠藤が1988年頃に確認したが、その後は姿を見なくなり、瓜生山では1994年に1個体を採集したにすぎない。個体数減少の理由は、狩猟されるアシダカグモやコアシダカグモの減少というより、古老木という特異な営巣場所の減少によると考えられる。常時、適切な腐朽段階にある古木が存在するという条件は、危険性を口実に腐朽木や倒木を速やかに処理するのではなく、それらを残すことによって多様な生息場所の自然状態を保持する高度の森林管理を前提とする。 |
その他 |
東アジア固有種 |