選定理由 |
良好な自然環境の指標として注目される種で、府内では芦生とその近隣のみから記録されている。これらの個体群は本州における低標高のブナ林に隔離された遺存個体群として極めて貴重であるが、生息条件の限界にある産地のため個体数は多くなく、微妙な生息環境の変化で絶滅してしまうおそれがある。 |
形態 |
体長16〜25mm。雌雄ともに黒褐色。オスの大腮はわずかながら発達し、雌雄とも大腮の先端に上向木の小歯がある。 |
分布 |
日本固有種で北海道、本州、四国、九州全域と、佐渡島など一部の離島のブナ帯に生息する。屋久島の個体群は独立種ヤクシマオニクワガタ(R.tokui)として記載されたが、水沼・永井(1994)以降、亜種として扱うことが多くなり、本稿もその扱いに従っておく。南九州産も別亜種( P. a. morimotoi)とされる。
◎府内の分布区域
府内では芦生とその近隣のみから記録されている。 |
生態的特性 |
芦生では標高500m前後から本種の生息が見られる。成虫は8月中旬から10月にかけて活動し、気温が高く乾燥した夏季には灯火にも飛来する。メスは産卵に際してトンネルを掘るがその入り口でオスがガードしている姿を秋によく見かける。幼虫は特定の樹種や腐朽型に対する選好性を持たず、色々な腐朽材に発生が見られる。 |
生息地の現状 |
芦生を除く福井県境の山地は伐採や植林がはなはだしい。幸い、芦生の山林は京都大学演習林であるため、大規模な伐採等を免れてはいるが、林道建設やハイキング道の整備、下草刈りなどによって深淵部でも林内の乾燥化が著しい箇所が多く、多湿な環境を好む本種への影響が懸念される。 |
生存に対する脅威 |
上記の要因に加えて、生息環境の破壊にもつながる「材割り採集」が横行しており、影響が懸念される。 |
必要な保全対策 |
原生林環境の保全が第一ではあるが、加えて、過剰な採集に対処した保全策が急務である。 |
その他 |
日本固有種 |