選定理由 |
府内では最近記録されていないため。 |
形態 |
腹長はオスが24〜31mm、メスが23〜28mm、後翅長30〜34mm。褐色〜黒褐色の体に、黒色の斑紋があるずんぐりした感じのトンボ。和名は未熟な時の体色や斑紋が鼈甲色をしていることによる。
◎近似種との区別
ヨツボシトンボに似ているが体がひとまわり小さく、体色はヨツボシトンボよりずっと黒っぽい。また、翅に特徴的な斑紋があるので、区別は容易である。 |
分布 |
本州(宮城県以南)、四国、九州、対馬。もともと分布は局地的だが、全国的に衰亡が著しいため、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の国内希少野生動植物種に指定されている。
◎府内の分布区域
南部地域。以前は京都市深泥池に多産していたが、1971年を最後に記録がない。
◎近似種との比較
ヨツボシトンボは府内各地で記録されているが、ベッコウトンボは極めて限定された池にのみ生息する。これは、ベッコウトンボの方が環境に対する適応範囲が狭く、わずかな環境の変化で生息できなくなってしまうためではないかと考えられる。 |
生態的特性 |
4月中旬〜6月に発生する。平地や丘陵地の抽水植物の多い池沼に生息する。幼虫は、抽水植物が生えている水深の浅いところに生活する。成虫は、池沼から少し離れた樹林で未熟期を過ごすが、このような樹林は成虫のねぐらにもなる。 |
生息地の現状 |
京都市深泥池では、1960年代までは多産していたが、1971年を最後に全く姿を消してしまった。深泥池で姿を消したのは、池北西側のヨシ帯の汚染や富栄養化が原因ではないかと指摘されている。また、近年、ブラックバスなどの肉食性の外来魚が侵入したことは、本種を含む水生昆虫の生活にとって大きな問題となっている。 |
生存に対する脅威 |
現在も発生を続けている場所は、府内では確認されていないが、ブラックバスなどの外来魚による幼虫などの捕食や、生息地である池沼の水質汚染は脅威となる。 |
必要な保全対策 |
府内では近年の記録がなく、既に絶滅した可能性も高い。しかし、他府県では新産地も発見されているので、府内にも未発見の生息地が残されている可能性はある。したがって、未調査の池沼を中心に、調査を継続していく必要がある。 |
関係法令 |
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(国内希少野生動植物種) |