選定理由 |
近隣県の分布や聞き取り調査の結果、過去には府内日本海側の各河川に生息していた可能性が高いが、現在では確認情報がきわめて少ない。生息条件が悪化しており、きわめて危険な状態である。全国的に絶滅が危惧されている。 |
形態 |
体長5〜15cmのカジカ属の魚で、体形はドンコOdontobutis obscuraに似る。本邦淡水産カジカ属は鱗がなく、前鰓蓋骨に棘を有する点で区別できる。府内に生息する淡水カジカはアユカケC. kazikaとカジカC. pollux、ウツセミカジカの3種であり、アユカケは前鰓蓋骨棘の後縁は4棘、他は1棘である。カジカとウツセミカジカは酷似し、生息場所、卵径、胸鰭条数で分類される(下表)。なお、琵琶湖産のウツセミカジカは本種の陸封型とされている。
種名 | 生息場所 | 卵径 | 胸鰭条数 |
ウツセミカジカ | 下流・中流 | 1.8〜3.1mm | 13〜17条 |
カジカ | 中流・上流 | 2.5〜3.7mm | 12〜14条 |
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分布 |
北海道の一部、本州、四国、九州の一部に生息する。京都府近隣では兵庫県竹野川、福井県
小浜湾流入河川で確認されている。
◎府内の分布区域
分布域は北部地域(日本海流入河川)。
◎近似種との比較
府内のカジカ属魚類はその多くがカジカであり、日本海側の河川におい
てダムの上流に生息するのもカジカである。
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生態的特性 |
河川の下流域から中流域に生息し、比較的流れの緩やかな砂礫底を好むとされる。動物食性で水生昆虫のほかエビ類や小魚を食べる。産卵は春から初夏にかけて行われ、オスが石の下に産卵室を作り、孵化するまで卵を保護する。孵化した仔魚はいったん海に下り、1〜2ヵ月後、河川を遡上する。 |
生息地の現状 |
本種は近縁種のカジカと混同されることが多く、生息に関する確認情報が不足している。分布域の多くの河川では、河川改修に伴う人工構築物や堰堤の影響で上下移動に制約を受けており、由良川下流域以外での確認情報はない。 |
生存に対する脅威 |
本種は本来広い分布をもつが、近年全国的に減少している。下流域の堰堤による遡上の阻害、生息水域の河床の単純化に伴う産卵場所の消失などが脅威となっている。 |
必要な保全対策 |
より自然に近い工法を用いた魚道を造るなど、遡上できる環境を整えるとともに、砂礫底を回復するための復元工事も必要である。今後、府内における生息状況を明らかにする必要があるが、本種は外形による分類が難しく、亜種や型レベルで分類されることもある。生化学的、形態学的研究による分類の精査が待たれる。 |
その他 |
日本固有種 |